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3M ~優れた企業文化でイノベーションを起こし続ける化学メーカー~

概略

3M(スリーエム)はアメリカのミネソタ州に本社を置く化学・電気素材メーカーです。
3Mは世界200か国以上で製品を販売している世界有数の化学企業であり、有名な経営手法として「15%ルール」が知られています。
これは従業員が勤務時間の15%を日々の仕事にとらわれない活動に充てることを許すもので、世界の経営学者が研究対象として3Mを取り上げているほどです。
また基本のビジネスモデルはBtoBでありますが、BtoC商品でもあるポストイットなどのブランドは世界的に有名です。

ビジネスモデル

3Mは化学製品、自動車部品、文房具など多岐にわたる領域で数多くのイノベーティブな製品を生み出している企業です。
近年は成長が鈍化していますが、3Mは100年以上の間継続的にイノベーションを起こし続け、事業ポートフォリオも時代に合わせて自在に組み替えることで成長を続けてきました。
その成長の要因として3Mの企業文化が優れているということがあげられます。
この企業文化は1900年代前半に社長に就任したウィリアム・マックナイトの時代に誕生したといわれています。

顧客との共創

まず3Mは1900年代に当時当たり前だったカタログ注文方式から、実際に顧客の工場へ赴き、工員の不満や要望を聞き出し製品開発にフィードバックする方法へ変更しました。
現在では当たり前の営業方法ですが、現在でも使用されている営業モデルを100年前に始めていたことは革新的と言えるでしょう。

イノベーションの出生率分析

3Mの経営層は過去の新製品の誕生サイクルと近年のサイクルを比較したときに近年の新製品の誕生サイクルが間延びしていることに気づきました。
そこで開発ステージにある製品をいち早く市場に出すか、開発ターゲットを変えるなどの判断によりイノベーションの出生率を上げる取り組みに着手します。
新製品を絶えずある程度決まったスパンで出し続けることで成長し続けてきました。

イノベーションを起こす仕掛け

3Mには15%ルールという文化があります。
これは個人が自分の勤務時間の15%を自分自身が興味のある研究につぎ込める制度です。
この文化は明文化されておらず、具体的に15%を測る方法もないそうです。
これは明文化、数値化してしまうと量的な問題になってしまい本来の目的のイノベーションを起こすマインドづくりを阻害する可能性があるためです。

また、もう一つの文化としてブートレッギングというものがあります。
これは社内ボランティアをネットワーク化し、上司に内緒で研究開発を行うことです。そのために、自分がかかわっている研究だけでなく社内の他の研究者が取り組んでいる研究テーマや情報がすべてデータベース化されており世界中の社員が即座に共有できるようになっています。

このように優れた企業文化によって3Mは成長を続けてきました。
その結果として現在は接着剤やテープなどの商品をはじめ、ヘルスケアの商品や電子部品など様々な商品を展開するようになっています。
環境の変化に柔軟に対応することをモットーとし、優れた企業文化によってイノベーションを起こすことで3Mは多様な事業ポートフォリオを構築している大企業となっていったのです。

各種指標

ここからは3Mの売上高、営業利益、営業利益率を見ていきたいと思います。
まず売上ですが、毎年安定した額を計上していることがわかります。
成長しているわけではないですが、毎年安定した利益を上げる商売をしていることが読み取れます。

営業利益率は20%前後で非常に高いです。
これは化学品という模倣が難しいビジネスモデルを展開しているからこその数字と言えるでしょう。

今後の展望とまとめ

以上のことから3Mはイノベーションを起こす社員を育む企業文化を持ち、環境に対応した経営戦略を行っている企業と言えるでしょう。
現在は売上が毎年伸びているような成長企業ではありませんが、多くのポートフォリオを持っていることで安定した収益を上げています。
これは3Mが環境に応じた製品を作るべく社員がイノベーションを起こし続けた結果であり、それが現在の収益基盤につながっているのです。

冒頭で3Mは多くの経営学者から研究対象になっていると述べましたが、経営学の世界に「ビジョナリー・カンパニー」という本があります。
この本はビジネスの必読書と呼ばれるほどの名著です。
その本の著者はこの本の中で3Mのことをこう評価しています。

今後50年間、100年間、成功を続け、環境の変化に対応していく企業を1社だけ選べといわれれば、わたしたちは3Mを選ぶだろう

ビジョナリー・カンパニー

革新的な製品を開発し続けその広い事業領域や商品群を武器に100年間にわたって成功してきた3M。
今後100年間も環境に応じた優れた製品を生むべくイノベーションを起こし続けるに違いありません。

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