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読書記録#02「煩悩」(山下紘加)

【作品紹介】(河出書房新社HPより)

 友達でも恋人でもないけれど、私たちはほとんど一つだった。それなのに、どうして――? 過剰に重ねる描写が圧倒的熱量をもって人間の愚かさをあぶり出す、破壊的青春小説。


【感想】

 この本を手に取ったきっかけは、YouTubeチャンネル「ほんタメ」で第6回ほんタメ文学賞(2023年下半期)あかりん部門の大賞に選ばれたことから。
 普段はあまり青春小説を読まないが手を伸ばしてみた。

 畳み掛ける描写の波が生々しく、息苦しくなる。
 思春期の記憶のみならずニオイや温度感までリアルに蘇ってきた。
 そういう読書体験は初めてかもしれない。

 思春期の女の子同士の微妙な距離感、独占欲、執着、支配、嫉妬、依存…醜い感情が思い出されて、自分の中に封印していた黒歴史をまざまざと見せつけられたようで、思わず目を背けたくなる。

 今振り返ると、自分の居場所を守りたい、孤立したくない、という目的のためだけに必死になっていたことがわかる。

 椅子取りゲームさながら、限られた椅子に確実かつ優位に座るためにはどう振る舞うべきかを画策していたかのよう。
 周りを見渡せば、他にも楽しいレクリエーションが展開されていたであろうに、目の前のゲームしか目に入らず純粋に必死にもがいていた。

 あの時守りたかった椅子とはなんだったのだろう。

 時を経て、人が生きるということは飾り気なく自然体の自分を曝け出すしかないことを悟った。
 そして、その姿を寛容に受け止めてくれる友人のみが今周りに残ってくれている。
 真の友は、必死に繋ぎ止める必要などなく、自然淘汰されることで見出せる。

 だから大丈夫。鎧で自分を守ろうと力まず、肩の力を抜いて安心して。自分の心に素直に好きなことを見つけて熱中しているうちに、同じ趣味嗜好を持つ仲間が見つけられるよ。人間関係に悩んでいる子供たちにそう伝えたい。

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