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週間ショートショートnote

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週間ショートショートnoteさんの企画に投稿した作品まとめたーよ。
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貴方の斉藤一はどこから? 私はるろ剣!

貴方の斉藤一はどこから? 私はるろ剣!

斉藤一をご存知ですか。
幕末の動乱期、京都の治安維持を目的に結成された浪士隊、新選組。その三番隊隊長を努めていた男です。
沖田総司や永倉新八と並び新選組でも最強と名高い剣豪で、歴史小説はもとより多くの漫画やゲームでも取り上げられています。
時にダークで危険な餓狼、時に憂いを帯びたクールビューティー、時に胡散臭く本性を見せない二重スパイ……。
明治維新以降も生き延びた斉藤ですが、名を変え、過去を語る

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【放課後ランプ】ランプの精はじめました #毎週ショートショートnote

【放課後ランプ】ランプの精はじめました #毎週ショートショートnote

「最近変なバイト始めたんよ」

放課後の帰り道。制服のスカートをはためかせレミは言う。

「怪しいバイトじゃないよね?」
「うーん、妖しくはあるかも。バイトってランプの精なん」

ーーランプの精。

「遊園地のキャスト?」
「いやホンモノやで〜」

笑いながら告げられる言葉は歌うように軽やかで、でも冗談と呼ぶにはまっすぐだった。

「言うてバイトやし、ホンショクのヒト程すごいお願い叶えるんは無理。

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オバケレインコート

オバケレインコート

従兄弟のSくんから聞いた話。
Sくんの通う小学校には「オバケレインコート」という怪談がある。
それは天気予報が外れて雨が降った日の放課後、理科室の隣にある松の木の枝に引っ掛かっているらしい。

「基本的には白色か透明で、その時は自由に使って良いんだ。なんでか必要な人にぴったりのサイズなんだって。ーーでも色が付いてる時は止めておいた方が良い」

そっと打ち明けるSくんは真剣だった。いわく、色の付いた

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三日月ファストパス

三日月ファストパス

十六夜岬のクラゲの娘、三日月野原の桂男に恋をした。
「あんな色男に惚れるなんて、難儀なお嬢さんだコト」
これを不憫に思った満月町のうさぎどん、ご自慢の霊薬を分けて下さった。瑠璃の小瓶にしゃらしゃらと、さながら綺羅々光る金平糖。
「三日月が綺麗な風のない晩、波の狭間にこれを撒きなさい。そうすれば、恋しいお方に会えますよ」
「ありがとう、うさぎさん」

次の三日月までの幾日は、幾星霜と過ぎていく。なに

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【行列の出来るリモコン】タピオカを魚卵と言い張る人種に察する能力なぞ期待するべからず

【行列の出来るリモコン】タピオカを魚卵と言い張る人種に察する能力なぞ期待するべからず

人混みは好かない。特に団体行動しなきゃいけない時の乱雑さは一等不快だ。
だというのに、部活帰りの君はとびきりの笑顔で指を指す。

「なんかめっちゃ流行ってるんだって」

少し意外な事に、それは家電店の行列だった。
先輩や後輩がころころと笑って答える。

「あー、リモコンね」

リモコン? 魚卵汁の亜種?

「いやだから魚卵じゃないっつーの」

そういう名前の菓子か何かと思ったら、どうやら本当にリモ

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【毎週ショートショートnote】人はそれをフラグと呼ぶ【会員制の粉雪】

【毎週ショートショートnote】人はそれをフラグと呼ぶ【会員制の粉雪】

ここはとある地方都市にある、小さな会員制スキー場『パウダースノー粉雪』。

「パウダースノーって粉雪の事だよね?」
「自分の持ちアパートに『アパートメントグリーンリバー』なんて付けるオーナーやぞ。今更やん」

ちなみにオーナーは緑川さんと言う。好々爺といった雰囲気のジェントルマン。
ネーミングセンスは安直でも堅実な資産家で、わざわざ会員制にしているのも税金対策の道楽経営だから、なんて噂まである。

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台にアニバーサリー

台にアニバーサリー

我輩は台である。名前は製菓用作業台1号である。
この手の冒頭で「いや名前あるんかーい」という流れはどうかと思うが、他と区別を付ける為の記号でしかないので名前という認識もおかしいか。菓子だけに。

「じいさんやかましい」

隣の3号から野次が飛ぶ。おい、誰がじじいだ、我輩ピッカピカだろうが。

「そりゃ生徒ちゃん達が一生懸命お掃除してくれとるからでしょ〜」
「冬休み前だから念入りに磨いてくれたもんね

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青春の後始末

青春の後始末

※漫画ワンピースのネタバレを含みます。

卒業以来所在不明だった親友が家に居付いた。着の身着のまま、学生が使うようなショルダーバッグ一つでふらりとやって来て、もう三日が経つ。

「ごめん、これ返すの忘れてて」
「p、PSP……だと……?」

借りパクされかけていた事より、絶妙に古い我らの青春に衝撃を受けたものだ。

「そういえばルフィが食べた悪魔の実ってゴムゴムじゃなかったらしいねー」

こたつで

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強すぎる数え歌

ーーつまり最強の数え歌を決めるのか。
私の呟きに声を挙げる者が続く。要するに、暇を持て余した我が姉妹達なのだが。

「十人のインディアンとかどうよ。絶対強い」
「あれって全滅エンドじゃないの?」
「多分それ、マザーグースと混ざってる」
「確か古今和歌集にも数え歌ってなかったっけ」
「歴史の重みで殴ってきたか」
「じゃあ可愛いは正義って事で、いっこにっこだっこ」
「強い」
「うーたん先輩は強い」

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延命しますか?

ーー医者としては勧めませんが、延命しますか

これは今から二十年以上前、私の母が実際に問われた選択だと言う。

ーーご主人の場合、今後回復する可能性は皆無と断言して良いでしょう。きっと本人からすれば苦しみを長引かせるだけだと思います。ただ……

当時9歳だった私が直接聞いた話ではない。大人になってから、母から聞かされた話である。
だから父の担当医だったその人が、どんな表情をしてそれを告げたのかも分

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