迷い猫100匹を探し出したペット探偵犬 動物の本棚(14)

『モリー 100匹の猫を見つけた保護犬』
コリン・ブッチャー著 杉田七重訳 東京創元社
この本は、英国海軍と警察官のキャリアを持つ動物好きの著者が設立した「UKペット探偵社」で活躍する史上初のペット探偵犬モリーの誕生と迷子猫捜索のエピソードを描いたノンフィクションです。

元英国海軍で警察官だったコリンは、警察を退職して私立探偵の会社を始めました。

探偵社では人間の身辺調査のほか、いなくなったペットの捜索も行なっていました。
ある時、コリンは家からいなくなった愛猫を探してほしいという依頼を受けました。
懸命に周辺の聞き込みを行ない、やっとある邸宅にある倉庫に入り込んでいた猫を見つけましたが、それまでに数日間閉じ込められて衰弱していた猫はその数日後に死んでしまいます。
猫の発見に時間がかかってしまい猫を救えなかったコリンは、
「もう二度とこんな思いはしたくない」
と、長年温めてきた計画を実行に移すことにしました。
それは、
「いなくなった猫を匂いをたどって探し出すペット探偵犬を作る」
という計画でした。
これは彼が子どもの時に飼い犬が地下に閉じ込められた猫を見つけ出したという経験から思いついたアイデアでした。

彼はこの計画を実現するべく、猫についての膨大な本を読み、知人の協力を得て猫に小さな発信器をつけて猫の行動を細かく分析し、専門家にもこの計画についてアドバイスを求めました。
コリンはこの計画を実現できると確信していましたが、かつて誰もやったことのないこの計画に、多くの犬の専門家の反応は「猫を探し出す探偵犬を作るなんて無理」というにべもないものでした。

やがてコリンは親しくなった犬のトレーナーから「あなたの計画にうってつけの機関がある」と教えられました。それは主に医療における探知犬(患者の体臭から病気の存在を知らせる犬)を訓練する専門機関でした。
その専門機関に携わる研究者や犬のトレーナーの協力を得られることになったコリンは、やがて探偵犬としての抜群の能力を備えたコッカースパニエルの保護犬モリーと出会います。
そしてついに史上初のペット探偵犬としての訓練が始まりました。

時間をかけてさまざまな訓練を行ない、お互いの絆を深めていったコリンとモリーは、ペット探偵のコンビとして仕事を開始し、1年間で依頼されたおもに迷子の猫を8割の成功率で探し出すという素晴らしい成果を挙げたのでした。

数々の迷い猫を、モリーのペット探偵犬としての抜群の能力と警察官だった経験を生かしたコリンの推理力で解決してゆく展開はミステリーを読んでいるみたいにおもしろかったです。

そして、コリンに出会うまで10カ月で3回も飼い主が変わって心に深い傷を負い、人間からの変わらぬ愛情を強く求めていた保護犬のモリーが、訓練とコリンの愛情によって人間への信頼を取り戻し、二人が強い絆で結ばれてゆく過程が感動的です。
コリンの
「われわれのパートナーシップがうまくゆくかどうかは、モリーが私を信頼し、この人は自分を裏切らないと思えるかどうかにかかっている」
という言葉が心に沁みました。

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