ゲイリー

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最近の記事

愛情は「目に見えないごちそう」 愛情はさわれる(11)

わが家の近所に大型犬が住んでいるマンションがあります。盲導犬のシールと私が朝の散歩の帰りに通りかかると、その犬は上の方のベランダからよく吠えてきます。 シールはちょっとこわがりの性格なので、わが家に来たての頃は、その太い吠え声をこわがってそこを通りたがらずに停まってしまうこともありました(笑)。でもそこを通らないと家に帰れないので私はシールに 「上の方から吠えているだけだから、こっちには来ないから大丈夫だよ」 となだめすかして歩かせていました。 毎日、シールはその吠え声を

    • 動物に愛情を伝えるスプーンケア 愛情はさわれる(10)

      以前の記事「愛しのスプーンケア」にも書きましたが、スプーンケアとは、私がふだんの鍼灸の治療で使っている皮膚に刺さない鍼(てい鍼といいます)を使った鍼治療の考え方を応用して、家にあるスプーンを使ってできるようにアレンジした簡単で安全なケア方法です。 今の盲導犬シールがわが家に来てから、私は 「てい鍼の代わりに金属のスプーンを使っても同じような効果があるのでは?」 と考えて、シールにスプーンの柄の部分を当ててみたところ、てい鍼と同じように気持ちよさそうにすることがわかりました。

      • 迷い猫100匹を探し出したペット探偵犬 動物の本棚(14)

        『モリー 100匹の猫を見つけた保護犬』 コリン・ブッチャー著 杉田七重訳 東京創元社 この本は、英国海軍と警察官のキャリアを持つ動物好きの著者が設立した「UKペット探偵社」で活躍する史上初のペット探偵犬モリーの誕生と迷子猫捜索のエピソードを描いたノンフィクションです。 元英国海軍で警察官だったコリンは、警察を退職して私立探偵の会社を始めました。 探偵社では人間の身辺調査のほか、いなくなったペットの捜索も行なっていました。 ある時、コリンは家からいなくなった愛猫を探してほ

        •  盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(19) 「シールほえないプロジェクト」開始!

          今の私の盲導犬シールは、きまじめで仕事はきっちりこなす優秀な犬です。 ただしちょっとこわがりな性格なので来客のピンポン音などに反応してほえてしまうことがあります。 家に来たばかりのころは、シールがインタホンのピンポン音に反応してほえたら「ノー!」と注意していました。 一頭目の盲導犬スースーも最初のころはピンポン音にほえていましたが、何度も注意するうちにやがて全くほえなくなったからです。 でもシールの場合は少し様子が違っていました。 ほえた時に「ノー!」と注意すると、 「な

        愛情は「目に見えないごちそう」 愛情はさわれる(11)

        • 動物に愛情を伝えるスプーンケア 愛情はさわれる(10)

        • 迷い猫100匹を探し出したペット探偵犬 動物の本棚(14)

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           盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(18) 遊ぼうよ! 

          盲導犬というと「まじめにお仕事をする犬」というイメージが強いですよね。 これは、たいていの人が仕事中の盲導犬の姿しか見たことがないからです。 家にいる時の盲導犬は、ハーネスをしていないので「お仕事中」ではないふつうの犬です。 これまで私のパートナーだったスースーとシジミも、現在一緒に暮しているシールも、みんな仕事をしていない「素顔」の状態では遊び好きで人懐っこいかわいい犬たちです。 三頭の犬たちはみんな遊ぶのが好きですが、それぞれの性格はかなり違っていて、好きな遊びも「遊ぼ

           盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(18) 遊ぼうよ! 

          目を使う文化と使わない文化 見えない世界のワンダーランド(8)

          私は中途の視覚障碍者です。 30代から徐々に視力を失う難病を発症し、現在はほぼ全盲です。 当たり前に目が見えていた状態から徐々に視力を失っていった時にはかなり絶望的な気持ちになりました。日常生活のほとんどを見ることに頼っていたわたしは、将来的に「失明する」ということがすごくこわかったからです。 その時のわたしにとって、目が見えなくなる、ということは「目をつぶって歩く」とか「いつも真っ暗闇の中にいる」みたいな状態だとイメージしていました。 その状態は当時の私にとっては、 「

          目を使う文化と使わない文化 見えない世界のワンダーランド(8)

          AIと一緒に絵を見る 見えない世界のワンダーランド(7)

          先日、ちょっとおもしろい美術鑑賞のワークショップに参加しました。 これは複数の見える人と見えない人、見えにくい人が美術作品の前でその作品について語り合いながら美術鑑賞の体験を共有する「ソーシャル・ビュー」と呼ばれる美術鑑賞のスタイルで行なわれたものです。 これまでにも私はこの「ソーシャル・ビュー」のスタイルの美術鑑賞のワークショップに何回か参加したことはありましたが、今回はそこに新たにAIが初参加する、というユニークな試みでした。 今回使われたAIのアプリは「ビー・マイ・

          AIと一緒に絵を見る 見えない世界のワンダーランド(7)

          盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(17) チェアだよ♪

          現在の私の盲導犬シールは「チェア」が得意です。 チェアというのは、盲導犬に椅子の場所を教えてもらうための指示語です。 「チェア」というと、盲導犬は近くにある椅子を探して、その座面にあごをのせて「ここにあるよ」と知らせてくれます。 カフェやレストランに行った時、テーブルまで案内されても、見えない私には椅子がどこにあるのか、どちらを向いているかがわかりません。 テーブルのそばまで行ったら手探りでテーブルの位置や椅子の背もたれを触って確かめないと座ることができません。 そんな

          盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(17) チェアだよ♪

          図書のプロが選んだ犬の本、約300冊 動物の本棚(13)

          『図書館司書 32人が選んだ犬の本棚~犬に寄り添い、犬を掘り起こす291冊~』 高野 一枝編  郵研社 この本は、図書のプロである図書館司書たちが選んださまざまなジャンルの犬の本が紹介されている一冊です。 図書のプロたちが選んだだけに、エッセイや小説だけでなく、犬についてのノンフィクション、研究所、歴史、実用的な本などさまざまな本が紹介されています。 私は動物に関する本、特に犬にまつわる本が大好きでこれまで沢山読んできました。 でも、ここで紹介された本のリストを読んで、例え

          図書のプロが選んだ犬の本、約300冊 動物の本棚(13)

          言葉で人とコミュニケーションする犬 動物の本棚(12)

          『世界ではじめて人と話した犬ステラ』クリスティーナ・ハンガー著 岩崎晋也訳、早川書房 この本は、ボタンを押すと単語の音声を発するデバイスを使って人に自分の意志を伝えるようになった犬ステラの実話に基づいた本です。 自閉症児などを相手にボタンを押すと録音した声の音声が流れるコミュニケーション・デバイスを使って言語療法を行なう言語聴覚師のクリスティーナ。子犬を飼い始めた彼女は、デバイスを使ったコミュニケーションが犬にもできないかと考えました。 そこで彼女は飼い始めたばかりの子犬ス

          言葉で人とコミュニケーションする犬 動物の本棚(12)

          盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(16) ほえなくていいんだよ

           盲導犬は基本的に「ほえない」ように訓練されています。 なのでたいていの盲導犬はめったにほえることはありません。 とはいえ、盲導犬は「どんなことがあっても絶対にほえない」ように訓練されているわけではありません。訓練中に、ほえても注意されるだけで何も良いことはない、ということを学んでほえることをしなくなっただけです。 今の私のパートナー(盲導犬)であるシールは、ほえるクセがまだ少し残っています。 そのことはシールが私のパートナーに決まる前に訓練士さんから「今度のパートナー候

          盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(16) ほえなくていいんだよ

          盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(15) 盲導犬の仕事に敬意?

          先日の天気の良い日曜日、私とシールとおかあさんの三人で近くの公園に行きました。 最近の朝の散歩での寒さが嘘のように温かくて、厚着をしているとちょっと暑いくらいでした。 私たちは大きな池のほとりを散歩したり、木の株の椅子にすわってくつろいだりして穏やかな時間をすごしました。 シールも遊歩道を歩いているといろんなワンちゃんとすれ違います。今回は小さいワンちゃんによく出会いましたが、みんな大きなシールをこわがることなく親し気に寄って来るかわいい子たちばかりで、シールもうれしそう

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          ATMを使う介助犬 動物の本棚(10)

          『エンダル』アレン&サンドラ=パートン著、片山奈緒美訳 マガジンランド この本は、湾岸戦争のさなか、イギリス軍での勤務中の自動車事故で肢体と脳に障害を負ったアレンと、彼の介助犬となったラブラドール・レトリバーのエンダルの実話を描いたノンフィクションです。 イギリス軍の海兵隊だったアレンは湾岸戦争で従軍中、オマーンで自動車事故に巻き込まれて脳に障害を負ってしまいます。 脳の障害で歩くことが困難で車いすを使うことになり、手も自由に動かすことができなくなりました。 さらに脳に負

          ATMを使う介助犬 動物の本棚(10)

          他人の視線が消えた世界 見えない世界のワンダーランド(6)

          見えなくなった後の世界で、これはいいな、と私が思うことの一つは、 「世界から他人の視線が消えたこと」です。 視覚を失うと「人から見られている」ことを認識できなくなります。 認識できないものは、自分の見ている世界から消えてしまいます。その人の見ている世界はその人が受け取る感覚情報でできているからです。 そうして私の世界からは「他人の視線」が消えました。 私は見えなくなってしばらくしてから、「なんとなく、前より気が楽だな」 と感じることがよくありました。 でも、なぜそう思える

          他人の視線が消えた世界 見えない世界のワンダーランド(6)

          シールとのリラックス・タイム 盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(14)

          先日、朝の散歩の後半、いつもは曲がる右折ポイントで、シールがまた「今日は曲がらずにまっすぐ行きたい」というサインを送ってきました。 シールの希望通りにまっすぐ歩いていくと、やがて向うから、シールと仲良しの黒ラブのSちゃんを連れたおとなりのパパが現れました。シールはしっぽを振って大喜び。私はシールのハーネスをはずして仕事モードをオフにしてSちゃんとふれ合えるようにしました。 さきほどの右折ポイントでそのまま右折すると、おそらくシールとSちゃんはすれ違いで出会うことはなかったはず

          シールとのリラックス・タイム 盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(14)

          犬と猫と暮らせる老人ホームでの奇跡 動物の本棚(11)

          『看取り犬文福の奇跡』若山三千彦著 東邦出版  この本は横須賀に実在する、犬や猫と高齢者が一緒に暮らせる老人ホームでの実話をもとにした12のエピソードが描かれたノンフィクションです。 横須賀に実在する特別養護老人ホーム「さくらの里山科」。 4階建ての建物の2階フロアは、それぞれ犬と住める10の個室からなるユニットが2つと、猫と住める10の個室のユニットが2つずつあり、ユニットのなかでは犬や猫は自由に暮らしていて、入居者の部屋にもベッドにも好き勝手に出入りしています。ホーム

          犬と猫と暮らせる老人ホームでの奇跡 動物の本棚(11)