かたちと色のデザインは(ほとんど)無意味だという話。

 僕がデザイナーとして仕事していると、お客様や営業さんから言われることの中で「ここもっと目立たせたいから大きくしてよ」とか「ここ目立たせたいから赤くしてよ」っていう注文があります。

 こんなんUXデザイナーからしたら失笑物のロジックなんですが、どうも世間の人たちはマジで赤いものは目立つと信じてるんですね。確かに、人間の錐体視細胞の中ではL錐体(赤色を認識する組織)が一番多いので、ある条件下ではそれも真実です。

 が、基本的に人間は自分い興味のないものは見えません。「見ない」ではなく「見えない」なんですよ。

 人間は思ったより周りを見ていない、ということを教えてくれる動画があります。有名なハーバード大学の実験です。下の動画をじっと見て、何回ボールがパスがされたか数えてください。

 見ました?見てない人はぜひ見てから読んでください。この動画の衝撃を知っている人生と知らない人生ではかなり生き方が変わってくると思います。見てから読み進めてくださいね。

 ここからはもう動画を見た、選ばれし人たちの領域です。

 有名な実験なので、知ってた人もいたと思います。私も初見はびっくりしました。これで分かったと思うんですけど、本当に人間って自分に興味のないことはとことん認知できないんですよ。

 逆に、そこそこ複雑なパス回しでしたけど、「これくらいならまあ、数えられるかな」とも思ったと思います。そうなんですよ。人間って興味があればそれなりに認知能力上がるもんです。

 いやだって、ゴリラよ? おおよそ世界に存在するもっともインパクトのある概念ですら認知できないんだから、赤くしたりデカくしたりした程度じゃ人の興味は引けない。当たり前です。

 じゃあどうするか、っつー話なんですが、簡単です。一回ネタバレして、パスを数えるのをやめたら簡単にゴリラが見えましたよね? つまり僕らがやらなきゃいけないのはコレで、ユーザーの心理状況を整理して、しっかり動線引いて誘導することなんですよ。

 そのために、色や美しさがあるわけです。複雑な画面よりだったらシンプルな画面のほうが余計なこと考えないですし、目的にデザインを直結させるんじゃなくて、目的のための「戦略」があって、それに誘導するためにデザインをするんですよ。(この戦略を考えることこそ、UX設計と呼ばれるやつですね)

 デザイナーって肩書持ってる人でもこの辺しっかり理解してない人が多くて、トンチキなデザイン作るときって人間の性質を忘れてるときなんですよね。勿論私だって集中して作ってるといつの間にか自分本位なもの作って、後から「バカじゃないの?」って反省したりします。

 そんなわけで、人間の行動心理とか認知心理を体系的に勉強してない状態でデザインするのは危険だというお話でした。オチはない。

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