ポジティブ思考のデメリット

「どんな辛いことがあっても心の中で“よかった”と3回つぶやきなさい」

ワイのパッパ

今でこそHSPという言葉はよく聞くようになったが、2010年代前後にはまだそんな便利な言葉はなかった。心が疲れやすいのは個人の責任、ポジティブであれと教わることが多かった。

上記引用は父からの教えだ。
私がHSPだったのかどうかわからないが、ネガティブシンカーの私は外部の刺激から自分を守るため愚直にアドバイスに従うことにした。

テストの点数が悪くても、よかった。
友達とけんかしても、よかった。
からかわれても、よかった。

この習慣が身に着くとストレスは圧倒的に減った。
ネガティブなことが起こっても反射的にポジティブに変換できるので、ストレスを感じる暇がない。これはすごいことになったと思った。
同時にデメリットもあった。ポジティブなことが起こっても幸せを感じられなくなっていた。感情が波のようなものだとして、高くなることも下がることもない、嬉しいも悲しいも感じにくい心になってしまった。

高校生の時、ずっと親友でいようなと誓った友達が白血病で死んだ。
ちょうど今くらいの冬の時期だった。
そいつを仮にK君と呼ぼう。K君のお母さんに呼ばれて家まで行った。1月だというのに暖房をつけず、冷え切ったリビング。そこにK君はいた。白装束を着て、お腹にはドライアイスが積み上げられていた。K君のお母さんは「仲良くしてくれてありがとう」と言って泣いていた。
この景色を見て“よかった”とはさすがに思わなかったが、親友の死を前にして涙の一滴すらこぼせない自分に心底腹が立った。

ストレスを感じない人生は、憧れるほどいいものではない。

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