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JFPアンケート調査報告vol.01:AFF 映画製作&上映分野

一般社団法人Japanese Film Project(以下JFP)では、3/25〜4/30まで、文化庁ARTS for the future!の映画上映および製作領域におけるアンケート調査を実施。計99件(映画製作52件、映画上映47件)の回答が集まった。

回答に協力くださった皆様に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

※調査結果は下記よりダウンロードが可能

▼はじめに・実施意図

これまでの映画界は日本の文化支援制度に対し批判はするが、「自らの業界がどういった実態であるか? どういった文化支援制度が求められているのか?」をデータで、十分に可視化してはこなかった。

そういった調査を担う団体がこれまで存在しなかったことも背景にある。今回は、令和2年度に実施された文化庁ARTS for the future!の映画領域(製作&上映)における実態調査となるが、調査結果は今後の映画支援制度改善にも有効な資料となることを願っている。

▼2023年以降も文化支援制度の継続を求める声

「AFFをはじめとする文化支援制度を2023年以降も継続してほしいか?」という質問に対し、95.9%が「はい」と答え、「いいえ」は0%という結果となった(「その他」が4.1%)。


▼アンケートを受けて:総括

【製作領域】

AFFでは『完成から(初号試写)から1年以内に公開』という要項があり、AFF2 では『完成(初号試写)から1年以内に国内の「映画館・ミニシアター等で、概ね7日間以上かつ14回以上」、有料一般公開を行うもの』という要件が加わった。これにより、一部の映画のみが助成対象となってしまう懸念がある。

通常、海外展開を目指す作品は、海外映画祭へのエントリーとその結果を受け、劇場公開日が組まれる場合が多く、2~3年を要する。そういった点を考慮し、「映画完成日から3 年以内に劇場公開」などと、期間を延長すべきではないだろうか。そうしなければ、結果として、「国内市場のみをターゲットにした一部の作品」や、「劇場公開日を比較的調整できる、製作・配給・興行を系列会社が担う大手配給作品」に助成対象が集中してしまいかねない。

映画への公的な助成制度の仕組みが、多様な邦画の海外展開を妨げている要因であるならば、韓国や欧米諸国の映画支援制度を参考に、邦画が海外市場でも展開されやすいような助成制度を有識者と共に構築していく必要がある。そういった制度改正は行政に限らず、 業界団体の提言や働き
かけも必要となってくる。

近年、海外映画祭で主に評価されている日本映画は作家性のあるインディペンデント映画であり、それらを後押しすることが日本映画の国際競争力を高めることにもつながるのではないだろうか。

【上映領域】

AFF2 では「概ね50人以上の動員」「経費の半分以上の収入を上げなければいけない」などの要件が追加された。この要件を満たすには、人気作品の特集上映を東京などの人口密集地域で実施する程度でしか実現は難しいと指摘があった。今回の改定で「集客性が高い訳ではないが、文化的意義のある作品」と「地方のミニシアターや自主上映団体」が支援から外れてしまった懸念がある。つまり、「大手会社が手がける人気作品」と「都市部の一部の映画館」のみが助成対象となってしまう恐れがある。

加えて、ミニシアターや自主上映団体は、コロナ禍の煽りを受け経済的に困窮しており、持続性を考えると経営が厳しい団体が多い。諸外国の例を参考にするなどして、劇場法(劇場、音楽堂等の活性化に関する法律について)のような、映画を上映する場(ミニシアター)に対する継続的な支援が求められている。

国際的競争力の高い作家性を持った監督たちも、キャリアの初期は全国のミニシアターに育てられた監督が多い。昨今でいえば、濱口竜介監督が最たる例だろう。

映画上映に対する支援制度の問題は、全国のミニシアターへの支援制度構築が必要となってくる。コロナ禍で経済的打撃を受けたミニシアターの閉館が相次ぎ、日本映画界が焼け野原になってしまう前に、映画館への公的支援を映画界と行政で真剣に考え、実施していくべきではないだろうか。


▼文化庁へ提出

2022年5月23日に、文化庁参事官へ調査資料を提出し、今後の公的な支援制度の参考として頂くよう意見交換を行った。今後は、関係する国会議員にも調査結果を提出する予定で、引き続き映画の公的支援制度の整備を訴えていく。

文化庁参事官へ調査資料を提出

※調査資料のダウンロードは下記より

【JFP年間サポーターのお願い】
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