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【オンライン講義】あなたの情報は偏っている?

SNSは、世界の人々とリアルタイムに繋がって情報交流できる優れた科学技術です。しかし、その利用には一定の注意が必要になります。具体的には、SNSを通じて得られる情報には、一定の偏りが存在する可能性が高いことが課題になります。

ひとは知らないものは探さず見たいものだけを見る性質を持っています。確証バイアスとよばれる、このひとに備わった性質が、情報化社会によって、問題になってきています。第2回となる今回は、SNSと情報について考えてみたいと思います。

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第2回 SNSと情報

情報化社会の現代、巷には膨大な情報が溢れており、私たちは知りたいことをすぐに知ることができるようになったように思えます。しかし、その考えには思わぬ危険が潜んでいるかもしれません。CNNが2017年に報じた研究では、6年間に渡って、3億7600万人のユーザーの投稿を解析して、ユーザーがどのような情報を好むのかを評価しました。その結果、ユーザーは特定の論調に関連したコンテンツを選んで共有し、それ以外を無視する傾向があることが明らかになりました。この傾向は、行動科学の分野で、確証バイアスとよばれています。確証バイアスは、自分の主張の正否を問う場合に、自分の主張を裏付ける証拠ばかりを探し、主張を否定する証拠に注目しない傾向を指します。この傾向は、前回説明した、知らないものは探さないという傾向です。

今回の講義では、この確証バイアスについて、さまざまな角度から考えてみます。確証バイアスの問題はどこにあるのか、あなたは確証バイアスの影響を受けないのか、研究者のような専門家は影響を受けないのか、奇跡と確証バイアスの関係など、確証バイアスについて考えてみましょう。また、誤った情報が拡散する問題についても考えます。なぜ誤った情報が広まるのが危険なのかを星占いを基に考えてみましょう。

今回の講義で重要な点は、全体と個別を区別する習慣です。小テストの平均点が80点だったとしても、あなたの得点が80点とは限らないように、全体と個別には差があります。この違いを理解しておくことで、物事の見え方が変わってきます。

SNSは大変便利な科学技術で、生活の様々な面で活用が可能ですが、一定の注意が必要です。それは、懐疑主義を貫き、曖昧さを許容し、証拠を求め、問題意識を持つこと、そして、なにより学び続けることが重要になります。あなたや、あなたにとって大事な人たちが、安全で健康に暮らしていけるよう、この5つについて常に注意を持ってもらえると良いと思います。

参考

1 科学は不確かだ リチャード・P. ファインマン (著), Richard P. Feynman (原著), 大貫 昌子 (翻訳) 岩波現代文庫
2 科学の方法 中谷宇吉郎 岩波書店
3 メディア・バイアス 松永 和紀 光文社
4 ファクトフルネス ハンス・ロスリング (著), オーラ・ロスリング (著), アンナ・ロスリング・ロンランド (著), 上杉 周作 (翻訳), 関 美和 (翻訳) 日経BP
5 フェイスブックなどSNS、視野狭め偽情報拡散の一因にも 研究論文
2017.01.23
6 反ワクチンデマは29アカウントから拡散 約6300万の投稿から東大教授が分析〈AERA〉2021.09.06 
7 How Facebook, fake news and friends are warping your memory Corrected: 08 March 2017
8 ルルドの聖母 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%89%E3%81%AE%E8%81%96%E6%AF%8D#cite_note-5

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