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【動画解説付き】探究活動や研究活動は、どのように進めるか

探究活動や研究活動は難しいと感じるのは、その取り組み方がわかりにくいことに原因があるのかもしれません。そこで、探究活動や研究活動の取り組み方について、かんたんに解説したいと思います。

探究活動や研究活動は、何を目的に行われるのか?

探究活動や研究活動の目的を、もっとも端的に述べるとすれば、測って比べて新しい「なにか」を見つけることです。
探究活動や研究活動を初めて行う人は、この部分を明確にしておくだけで、活動の方針を立てやすく、また、まとめで困ることも少なくなります。そこで、この測って比べて、新しい「なにか」を見つけることについて、かんたんに解説したいと思います。

測って比べる

基準となるものと、あなたの測りたいものを、測って比べることで、初めてその対象を客観的に評価することができるようになります。
私たちは、心のなかに、それぞれものさしを持っています。このものさしで物事を測って、なにかをするべきかどうかを決めています。しかし、そのものさしの目盛りの大きさは人によって異なっているのです。あなたにとって重要なことが、他の人にとって重要であるかどうかはわかりません。
たとえば、雨が降っているなかで登校するとしましょう。傘をさして歩いていくか、レインコートを着て自転車でいくかは、その人の家と学校との距離によって異なるでしょう。これと同じです。
普段の生活は、心の目盛りの大きさが問題になることは少ないですが、探究活動や研究活動では、発表者にとって大事だと考えることと、聴衆が大事だと考えることが同じにならなければならないのです。
そこで、誰もが使える基準が必要になります。その基準と測って比べて、探究活動や研究活動の成果の持つ意味を、初めて他の人と共有できるようになります。この基準を意識して使うことが、探究活動や研究活動では、もっとも重要になります。その基準のひとつを、私たちは原理公式とよんでいます。

新しい「なにか」を見つける

探究活動や研究活動では、いままで知られていなかった、新しい「なにか」を見つけることが目的になります。
そう聞くと難しい事のように感じるかもしれませんが、よく観察すればあなたの日常にも測られていない「なにか」は、たくさんあります。わかりやすい例で言えば、生物の発見です。生物は地域性が高いので、あなたの地域にいる生物のなかにも、まだ見つかっていない生物がいるでしょう。新種の発見は、わかりやすい、新しい「なにか」を見つける活動です。
あなたが、現象を対象にして、新しい「なにか」を見つけようとする場合には、考え方を変える必要があります。多くの現象は、研究者によってすでに詳しく調べられており、新しい「なにか」を見つけることは簡単ではありません。そこで、考え方を変えて、新しい「測って比べる方法」を提案することで、新しい「なにか」を見つけやすくなります。具体的には、誰もが使いやすい測定方法を提案するのは、取り組みやすいテーマです。
たとえば、私のこれまでの研究例で言うと、水の硬度分析を、アントシアニン水溶液による呈色反応で行う方法などが、これに当たります。水の硬度、つまり、水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの総量を測るのは、かなり難しい実験です。そこで、ブルーベリーにも含まれるアントシアニンを使って、水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの総量を、簡単に測って比べることができれば、新しい「測って比べる方法」の提案として価値があります。

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図 水の硬度をアントシアニンで比色分析した結果 (左)硬度が高い、(右)硬度が低い

この場合は、既知の測って比べる方法と、測って比べて、いままで知られていなかった、新しい「測って比べる方法」を見つけたことになります。どうでしょうか。こうした方法であれば、取り組みやすいのではないかと思います。そして、上記のように、何かを観察する活動では、結果が偶然なのかどうかを、測って比べる必要が出てきます。

偶然なのか、そうではないのか

測って比べるときには、それが偶然なのか、そうではないのかを検討する必要があります。あなたが観察した現象が、いつでも、誰でも、何度でも再現できるかどうかは、必ず確認しなければなりません。そのため、現象を対象とした探究活動や研究活動では、同じ条件で複数回、現象を観察して、同じ結果が得られることを確認する必要があります。

得られた結果を分析する

得られた結果について、測って比べて、結果の確かさを検討する必要があります。
観察を何回を行い、どの程度のバラつきで結果が得られたのかは、探究活動や研究活動ではもっとも重要です。得られた結果が、どのくらいバラついているのかを測って比べることで、その観察がどのくらい確かかが決まるからです。たとえば、学力のバラつきは、学力の中央がもっとも多く、その前後が徐々に少なくなってゆく、正規分布とよばれるバラつきにほぼ従うことがわかっています。そこで、バラつきを数値化したものを、偏差値とよびます。偏差値で志望校を決定できるように、分析では、得られた結果について測って比べて、あなたの提案したい「なにか」が確かであると決定できるよう検討する必要があるのです。分析は、探究活動や研究活動において、もっとも重要な過程です。

まとめ

あなたの提案したい「なにか」について、測って比べて、その提案の確かさを検討する。これが、探究活動や研究活動の一連の流れです。
以上が、探究活動や研究活動で行うことです。探究活動や研究活動において、もっとも大事なことは、あなた自身が、日常で感じる不思議について、いままでの知見を基にして、測って比べて、新しい「なにか」を提案することです。

この内容について詳しく解説した動画を紹介します。生徒さんや先生方の活動の一助になれば幸いです。

より詳しくは、以下の書籍で解説しています。


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