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ミライの小石06. VRアバターはあなたの心の治療着

プロテウス効果という言葉をご存じでしょうか?オンラインゲームなどの仮想空間上のアバター(自分の分身となるキャラクター)の見た目がユーザーの行動特性に影響を与えることを指します。プロテウスとはギリシャ神話に出てくる変幻自在に姿を変えられる力と予言力を持った海の神の名前です。このプロテウス効果について、ちょうど先月の2022年のバーチャルリアリティ学会で、アバター使用によって吃音症状を軽減したという興味深い発表があったのでご紹介したいと思います。

以下にその概要を引用します。

本研究ではVR空間でアバターを用いることによって吃音症状軽減効果が得られるかについて,吃音傾向のあるユーザーが,対面で話す場合とVRChat上でアバターを用いて話す場合について比較実験を行なった.その結果,吃音の症状が軽減される効果を確認した.

(引用1)

吃音とは自分の意志に反して話す際に言葉を繰り返したり、詰まらせたりする現象です。重度の場合、吃音症という障害の一種とされますが、治療法はまだ確立されていないそうです。この研究はアバター使用による心理的影響を心の治療に使えないか?という未来の兆しなのではないかと思います。

VRといえば、ゲーム、ライブや旅行など、娯楽としてのイメージがまだまだ強い印象がありますが、一方でVRではアバターを自分の体として着用して話したり行動したりしますので、没入感が高く、心理的な影響も見逃せません。私自身VR空間アバターを使った対話をしたことがあるのですが、人型アバターの時の対話と、犬のアバターの時の対話では、自分が動物であるという認識に引っ張られ、無理に何かを話さなくていいと妙に安心したことを覚えています。

例えば、アバターを歯の矯正器具のように理想の自分に近づけるための心理的な治療着ととらえて、自分に自信を付けたいとき、何かに苦手意識があるとき、理想の行動をしていそうな外見のアバターを何着か段階ごとに着ることで、心の形を理想的な状態に持っていくなんてこともあるかもしれないですね。

出典
(引用1)大野 凪、宮下 敬宏、篠澤 一彦、萩田 紀博、安藤 英由樹、「 VR空間でのアバター使用がもたらす吃音者への影響」、第27回バーチャルリアリティ学会大会論文集(2022年9月) https://conference.vrsj.org/ac2022/program/doc/1C3-2.pdf
2022年12月23日閲覧

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