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ミライの小石11. 世界有数の「火葬国家」日本で、土葬は広まるか?

日本国内で死を迎えた遺体は、少数の例外を除き、ほぼ火葬されています。実際に、日本の火葬率は、世界で最も高く、約99.9%だそうです(※1)。昔は土葬される遺体のほうが多かったのですが、都市では用地が不足し、地方部でも伝統的な葬送の担い手の減少とともに、火葬率は徐々に増していきました。土葬が可能な用地もほぼ限定されており、10カ所程度しか存在していません。「遺体は火葬されるのが当たり前」とお思いの読者も少なくないのではないでしょうか。

しかし、世界を見渡すと、土葬が主流の国も存在しています。イスラムが主に信仰されている国家では、最後の審判を待つにあたり肉体を残す必要があるという考えから遺体は燃やされず、土葬がなされています。 日本においても外国人労働者が増えつつある今、土葬を希望する人々が存在します。大分県をはじめ土葬が可能な墓地を設立する運動が繰り広げられていますが、住民の反対もあり、必ずしも順調に進んでいるとは言えない現状が存在します。

そのような中、2022年に京都府南山城村の寺院が、土葬墓の区画を開設しました(※2)。在日コリアンが1970年代に設立した同寺院のウェブサイトには下記の記載が見られます。

土葬墓地エリアの同一区画には、同一宗教の方のみを埋葬いたします。 例えばイスラム教区画にはイスラム教信者のみを、仏教区には仏教信者のみを、キリスト教区にはキリスト教信者のみを埋葬する、というようにそれぞれのエリアに他宗教の方は埋葬しません。 昨今、日本国内に多国籍・多宗教の方々の移住が増えて来たことにより、墓地運営について見直す機会を持ち、土葬墓地エリアを設けることになりました。 南山城村を含む周辺地域では15年程前まで 100 %土葬の文化圏でした。この度の土葬墓地エリアの開設に関しても地元住民の方々が快く受け入れて下さったことにより実現いたしました。

土葬|京都|高麗寺国際霊園|南山城村 https://www.dosoukyoto.com

南山城村は伝統的に土葬が行われている地域で、行政や住民からの理解が得やすかった事情がうかがえます。南山城村の事例は、古くからの文化が土地に伝わっていたことが異なる文化を受け入れる土壌を生んだと解釈することもできます。

わが国が多様な文化的背景を持つ人々を受け入れる上では、その老いや死のあり方にまで思いをはせる必要があるでしょう。そのうえで、わたしは自文化で同時代に一般的とされている概念を問い直し、むしろ伝統と異文化の融和を探る余地を見出す必要があると考えています。

参考
※1 99.99%…世界一の火葬大国・日本で「土葬」がこれから増えなければいけない納得の理由 土葬墓地は東日本に7カ所、西日本に3カ所だけ、九州にはひとつもない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) https://president.jp/articles/-/63552?page=1 2023年4月17日閲覧

※2 京都・南山城の寺が土葬墓を始めた理由とは 既に予約複数、ニーズどこに?|社会|地域のニュース|京都新聞 (kyoto-np.co.jp) https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/894389 2023年4月17日閲覧

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