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植物は地上部と同じくらい根が張る

何年か前に、
「植物は地上と同じくらい根が張っているんだよ。」
と私の農業の師匠が教えてくれた。

大抵の植物は地上部の目に見えている大きさの分だけ根っこが張っているらしい、想像すると面白い。
大木は地下でも悠々と根を張っている。
どんなに小さな雑草でも体の大きさだけ根を伸ばし水を吸っている。
美しいな、と思った。

高校2年生の時に「幸せを運ぶ樹」でお馴染み、ガジュマルくんが教室にやってきた。
担任は皆に幸せが訪れてほしいから買ったんだとニコニコしていた。
持ち上がりクラスだったため3年になって受験シーズンになってもガジュマルはクラスを見守り、やってきた時は手のひらサイズだった樹は卒業の頃には2まわりくらい大きくなって、当時生物係だった私の手に託された。
「責任を持って育てます。」
クラスメイトに誓い、ガジュマルと共に過ごして今年で10年目になる。

小さかった樹は、私の腰くらいの大きさになった。
植木鉢を何度も新調し、一回りずつ大きくなっていった。
そして一昨日、久しぶりにもう一回り大きい鉢に植え替えようとしたところ、自分一人では持ち上げられなくなっていたことに気がついた。
幹を持って二人がかりで傷つけないように持ち上げると、植木鉢の形に根がびっしり張っていた。
「地上部と同じだけ根が張るんだよ」という師匠の言葉を思い出した。
狭苦しかったかなあ、と思いながら大きい鉢に引っ越しをした。

ガジュマルは私が高校を卒業して、初めて一人暮らしをした時も、就職で淡路島に住み始めた時も新幹線で隣の座席に座らせて連れてきた。三宮を植木鉢を抱えて歩いたときは少し恥ずかしかった。

9年も一緒に暮らしていると不思議なもので、ガジュマルが水が欲しい時がなんとなくわかるようになった。
そしてガジュマルも私が元気がない時がわかるらしい。
ひどく落ち込んでいる時期はお水をあげていてもガジュマルは葉を落とした。
綺麗なお家に引っ越した時はぐんぐん育った。

のびのび生きてほしい。ガジュマルがいるからか寂しいと思ったことはほとんどないし、多分数え切れないほどの幸せを運んでくれているんだと思う。
いつか、もし永住したいと思える土地が見つかったらその家の庭にガジュマルを植えるのが夢だ。
暖かいところに育つ樹なので、南の方に住まなきゃいけない。
好きなだけ根を張れるような場所にいつか行けるといいな〜。


植え替え前

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