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路上で見知らぬ人の写真を撮ること

富士フイルムフォトサロン名古屋での個展は、パリの路上と地下鉄での「ストリートフォトグラフィー」を展示しました。
在廊中、「見知らぬ人を撮っていてトラブルがなかったか」「肖像権の問題についてどう考えているのか」という質問を何度もいただきました。
後者の質問については、富士フイルムフォトサロン名古屋がストリートフォトグラフィーの展示を認めてくださったところに、ひとつの答があると思っています(ただしそれが唯一の正解とは思っていません)。

この時のパリ1週間の滞在中に、路上や地下鉄で1,000枚ほど見知らぬ人々を撮らせていただきました。隠し撮りスタイルではないので、撮影させていただいた人は撮られたことが分かります(気付かない方もいますが)。その中で2度文句を言われました。
それぞれじっくり話をしました。

1件目:路上で電話していた方から
「俺はビザがないから公開されたくない」納得できるプライバシーの問題です。その場で写真を削除しました。

2件目:カフェの群衆写真についてそこに友人(?)といた方から
「何故撮ったのか」から始まる長い議論で意図を丁寧に説明しましたが、問題点を突き詰めると「この時間に誰といたか公開されるのは嫌だ」というニュアンスでした。これもプライバシーの問題と理解し、その場で写真を削除しました。

これまでの経験として、話をして理解していただける場合もあります。しかし納得していただけない場合は、写真を撮りたい気持ちの根っことして撮らせていただいた方がその写真を見て喜んでくださることを願っていますので、削除したり公開しないようにしています。

こういうトラブルで、ストリートフォトグラフィーを2度と撮らなくなってしまう人もいるでしょう。しかし僕は、2/1000のトラブルは998/1000は許されているとポジティブに受け取とり、それに感謝し折れないようにしてます(藤田一咲さんもトークショーで同じようなことを仰っておられました)。

路上で写真を撮っているとこのようなトラブルがありますが、日本以外で「肖像権」の問題として何か言われたことはこれまで一度もありません。写真を撮られることに対する意識が、日本は他の国とかなり違うなと感じます。

撮らせてくださった方が喜んでくださるストリートフォトグラフィーを撮りたいと願っている僕のスタンスを理解していただければ嬉しいです。


「ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。」

肖像権についての最高裁平成17年判決

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