インプットまとめ[2024年4月]
4月はなんだかあっという間だったような、長かったような、不思議な感覚がする。毎年そう思っている気がする。
この春は身の回りには変化を迎えたひとが多くて、わたし自身はというと何一つ変わらず、相変わらず引きこもる日々だった。
だからだろうか、新しいことを吸収しなくてはという気持ちが強くなり、インプットはかなり捗った一ヶ月だった。そろそろアウトプットをするべき頃合いかもしれない。
※この記事はネタバレが含まれます。
映画
「クレイジー・クルーズ」
「カルテット」を見て以来、坂本裕二が好きなので、観てみた。しかも主演が吉沢亮と宮崎あおいという、めちゃくちゃわたし向けキャスティング。ありがとうございます。
吉沢亮の顔が綺麗すぎて時々話に集中できなくなることを除けば、とても質のいいエンタメで見ていて楽しかった。何も考えずに楽しめる。ただし、予告編で見どころがすべて分かってしまうので、予告は先に見ない方が良かったかも。
一緒に観ていた夫は「宮崎あおいが可愛すぎる」と5分に一回くらい言っていた。気持ちはわかる。
「シン・エヴァンゲリオン 劇場版」
正直に言って、この作品をおもしろいと思えるほど、わたしはエヴァンゲリオンシリーズを理解できていないみたい。先にアニメ版を見ればよかった。
たったひとりの愛するひとにもう一度会うためだけに、全世界を破滅に追い込む、というテーマは好きなはずなのに、いまいち納得できない。きっと、説明されなくても明らかなことだけが説明されて、説明してほしかったことは説明がないからだろう。何に対しても答えを求めてしまうのが悪いのか。でも伏線はやっぱり回収してこその伏線だと思う。
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」
先月に引き続きレオ様! そしてトム・ハンクス。
レオ様の演技がめちゃくちゃ良かった。顔だけじゃなくて、表情の動きや、声のトーン、話し方がとても魅力的。レオ様が実際のフランクに似ていたのかどうかは分からないけれど、魅力的なひとじゃないとここまでの詐欺はできないと思う。
何もかも捨てて、全てのひとを騙して、空虚な生活を送っていたフランクが、素朴で心根のまっすぐな女の子に惚れてしまうというのは、なんだか分かる気がする。
実話を基にしているとは冒頭で言われていたが、本名で、本人監修というのには驚いた。
音楽がジョン・ウィリアムズでとても良かった。世の中の有名な映画はすべてスティーブン・スピルバーグとジョン・ウィリアムズによって作られているのか?
観終わってから改めてポスターを見ると、ちょっと笑える。顔が全然写ってないじゃないか。
「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」
先月観た「ホット・ファズ」の三部作のうちのもうひとつ。
前作ではちょい役だったマーティン・フリーマンがけっこうメインで出ていて、すごく良かった。やはり彼の演技が好きだ。アクションに強いのもかっこいいし、表情がなにより良い。
主演のサイモン・ペッグが、「ホット・ファズ」の主演と同じひとか一瞬分からないくらいに老け込んでいてびっくりしたが、ラストシーンではかなり若返って見えたので、メイクや服装でだいぶ印象って変わるもんだとびっくりした。
このラストを、「世界を救った」と表現できるのかどうかは疑問の余地があるが、たとえ世界が荒廃してしまっても、諦めずにそのなかで新たな生活を築いていくのが人間だというのには同意。
三部作の最後のひとつはゾンビものらしいので、観るのが楽しみ。
「グリーンマイル」
さらにトム・ハンクス。なぜ彼が人気俳優なのか分かってきた。
原作がスティーブン・キングだそうで、読んでみたくなった。スティーブン・キングの作品は、とても残忍な人間や陰惨な事件が出てくるわりに、根本的には人間の他人への愛情を信じているところがあるのが良い。看守たちが死刑囚に対して、愛情をもって接していることが、救いでもあり辛い面もある。きっとこういう状態で長く務めることができる職場ではないだろう。
看守は全員白人男性で、登場する死刑囚たちが、ネイティブアメリカン、外国人、黒人だったのが、差別と偏見によって刑が決定されていることを如実に表している。きっと取り調べも裁判もまともには行われていないのだろう。そういう差別があったことを(そしてきっと今も少なからず残っているのであろうことを)、きちんと描いてこそ、差別への確固たる抵抗になるのだと思う。なかったことにしてしまうのは簡単だけれど、絶対に間違っている。
「舟を編む」
原作を読んだのはずいぶん前なので、あまり細かいことは覚えていないが、原作の静かな雰囲気を壊さない、いい映画だった。音楽も良かった。
下宿に山のように本が置いてあるのを見て、一階とはいえ床が抜けないかとても心配になった。この撮影のために、いったいどれだけの本が集められたのだろう。それでもやっぱり、本に囲まれて生活するのっていいなあと思わずにはいられなかった。地震も怖いけれど……。
宮崎あおいがとにかく可愛い。ドラマ版は馬締さんが野田洋次郎らしくて、そっちも見てみたい。
ずいぶん長いこと紙辞書を使っていないけれど、久しぶりに触りたくなった。ところで大学で言語学を専攻するのは、そんな噂になるくらい変なんだろうか……。
ドラマ
「夫のちんぽが入らない」第一話
親元を離れて大学に進学した途端、どこの馬の骨とも分からない男と半同棲みたいな状態になるなんて、わたしが親だったら絶対に認められないと思う。思うに、雛鳥が初めて見たひとを親だと思い込むみたいに、初めて出会った知らない男性に対する緊張を、恋と勘違いしてしまったのではないか。しかしあらすじを見る限りふたりは結婚するみたいで、全然理解できない。
「愛の不時着」第一話・第二話
けっこう今更だけれど見始めた。韓国語を勉強中なので、ちょっとずつ聞き取れる単語が増えていくのが実感できて楽しい。
韓国や北朝鮮は、日本にとってはお隣の国なのに知らないことが多すぎて、似ているところと全然違うところがあって、だからこそ分かり合うのが難しいのだろうなと思う。
食事のシーンが多いのは韓国ドラマの特徴な気がする。
ここで⁉ というところで終わったので、続きが気になる。
本
村上春樹『騎士団長殺し』(1~4)新潮社
「今年こそ読む積読本2024」の1作品目。
読んでいて強く感じたのは、これまでの村上作品の集大成的作品だということ。そういう意味では、「君たちはどう生きるか」と似ている。文庫で分冊4巻と、けっこうな分量があるけれど、先の展開が気になってするすると読めた。ひとりの作家が何十年も書き続けることは容易なことではないし、ここまで成熟した作品が読めるのは幸運なことだと思う。わたしはこの作品を読めて嬉しい。
騎士団長のイメージが、どうしてもウンパルンパと被ってコミカルな感じを受けてしまうのにはちょっと困った。
村上春樹『スプートニクの恋人』講談社
読書会で村上春樹について話すために読み返した。もう何度も読み返している作品だけれど、意外にも最後に読んでから5年くらい経っていたので、新鮮な気持ちで読めた。
『記事団長殺し』を読んだ直後だったので、比べてみるとずいぶんと若々しい文章だという印象を受けた。そして昔読んだときに比べて、自分の中の解像度が上がっている部分が多々あって嬉しかった。
村上春樹『海辺のカフカ』(上・下)
これも読書会のための再読。この2作を再読したのはたまたま手元にあったからだが、『海辺のカフカ』はわたしにとってはそれほど好きな作品ではなかったので、読み返してみたらとても面白く読めて意外だった。前に読んだときの自分には受け取れなかったものが受け取れるようになっていたみたい。やはり同じ作品を何度も読むのは大事だ。
良かった点は、脇役たちがとても生きいきとしていたこと。ホシノくんが特に好き。
チャン・ウンジン、須見春奈訳『僕のルーマニア語の授業』クオン
読書会で韓国文学について話すために予習として読んだ。
とても好きな作品だった。邦訳されている作品はあまりないみたいだが、もっとこの作者の作品を読んでみたいと思わされた。
静かな中に、寂しさと温かさが同居している。ひとは基本的に分かり合えないものだけれど、分かり合う努力を惜しみたくないということが描かれているのだと思う。
コン・ソノク、カン・バンファ訳『私の生のアリバイ』クオン
こちらも読書会の予習。
読めて良かった。「わたしはあなたを愛していない」ということが、むしろ誠実なことのように思える。
先に挙げた『僕のルーマニア語の授業』と同じく、クオンの「韓国文学ショートショートきむふなセレクション」のうちの一冊なのだが、他にもこのシリーズの本を読みたいと思った。はやく裏側の韓国語原文でも読めるようになりたい。
くどうれいん『桃を煮るひと』ミシマ社
やっぱりくどうれいんは推せる。
とても元気がないときに読んだのだけれど、それでもするすると読めてしまった。くどうれいんさんの本は、わたしにとって元気が出ないときにも読めるおにぎりのような本になっているなと思った。短い文章の中にも、日常のきらめきと、あたたかさがあるのがよい。
新刊も欲しいよう。
キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』早川書房
「今年こそ読む積読本2024」の2作品目。そしてこれも読書会の予習も兼ねて読んだ。
読めて良かったし、もっと早く読めばよかった。わたしの今年のベスト10に入るのは間違いないと思う。
キム・チョヨプの作品も、人間の分かり合えなさを扱っていて、とても好きなテーマだった。分かり合えないことを知りつつも、それでも分かりたいと思う気持ちこそが愛なのだと思う。どれも好きな作品だったが、「感情の物性」が特によかった。
SFのなかでも、人間の感情や関係性を描くという意味では、ケン・リュウと近いものを感じた。ケン・リュウが好きなひとにはキム・チョヨプを読んで欲しいし、逆もまたしかり。
最近新しい邦訳本が2冊出たので、そちらも読みたい。
『鬱の本』点滅社
Twitterで話題になっていて買ってみた本。
どのエッセイも見開き1ページなので、適当に開いたところから読めるという意味では、本当に鬱で何もやる気が起きないときに向いている。
勇気づけられたのが、執筆者の中には何人も実際に鬱を患っているひとがいて、しかもその方たちが、鬱を患ったまま生き続けているということだった。「かつて鬱だった」ひとの話を見たり聞いたりしても、(鬱と躁鬱は違うけれど)「でもそのひとは治ったんでしょう」と拗ねてしまう自分がいるので、鬱と共に生きているひとがこれだけいるということだけでも、十分支えになると思う。
茅田砂胡『天使たちの課外活動9 極光城の魔法使い』中央公論新社
大好きな茅田先生なのに、買って半分読んだまま忘れていた。
ぐるぐる回る劇場というのが出てきて、IHIステージアラウンドに似ているなと思ったら、本当にステアラをモデルにしたらしい。茅田先生が観劇好きということを知らなかったので、意外な気もした。
ヴァンツァーと恋愛感情の話、正直もっと掘り下げてほしい。というかこのシリーズのメインキャラクターたちは(怪獣夫婦はさておき)誰一人として恋愛感情を理解していなさそう。
茅田砂胡『天使たちの課外活動10 レティシアの奇跡』中央公論新社
紫乃が送ってくれたもの。やっぱり紙のほうが読みやすい(9巻は電子で買った)というのを実感した。一瞬で読めちゃったもの。
「シェラが殺した族長に似ている」というくだりで、そういえばそれをなんでレティシアは知っているんだっけ?となったので、デルフィニア戦記と暁の天使たちを久しぶりに読み返したくなった。
すごく最近出た気がしたけれど、もう1年くらい経つし、もしかしたらそろそろ新刊が出るかもしれないと思うと楽しみ。今度こそシェラにもっと出番をください!!
チョン・セラン、斎藤真理子訳『フィフティ・ピープル』亜紀書房
紫乃に借りている本。これも読書会の予習として読もうと思っていたけれど間に合わなかった。
病院が主な舞台なこともあって、時々読むのがしんどくなるような辛い話があったけれど、全体としては面白かった。どんなひとでも他人と関わりあって、支えあって生きていくのだというメッセージが強く込められているところが好き。ユン・チャンミンの話が一番好き。イ・ソラの話もぐっときた。
『違国日記』で千世ちゃんの本として出てきたけれど、千世ちゃんがこの本を人に貸すというのがすごくしっくりくる。
川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』集英社インターナショナル
これも紫乃に借りている本。
前に川内さんの『パリの国連で夢を食う』を読んでいたこともあって、すんなり読めたし、面白かった。ノンフィクションはあまり読んだことがなかったので、ちょっと身構えていたが、これはエッセイみたいな感じでするすると読めた。
わたしは趣味で昔からよく美術館に行くのだけれど、これまでの自分の鑑賞の仕方って、ちょっともったいなかったかもしれないと思った。今度からは、全作品を均等に見るのではなく、特に惹かれたものだけでもいいから、もっとじっくり見てみようと思った。
また、単純にアートのことだけでなく、障がい者とどう関わるか、という簡単には答えの出ない問題についても考えるきっかけになった。周りのひとにも勧めたくなる良い本だった。
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