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沖縄のそこらへんの木でも紹介しておけ! 10種(4位~6位)ガジュマル、モモタマナ、アカギ

4位 Ficus microcarpa ガジュマル(クワ科)

都内在住でガジュマルを育てている人は多いでしょう。
しゃれた陶器の鉢に植え、マンションの窓辺に飾る・・・。

現地のガジュマルは、鉢植えからは想像できないほどワイルドです。
木が暴れるといったらよいか。気根もたくさん出ます。

はるばる南国にきました。
屋外で大きく育ったガジュマルを見上げるとよいです。
立ち寄る先々で、大木を見ることができます。

名木に認定されているガジュマルもあります。
「おきなわの名木百選」においてガジュマルの認定数は40。
デイゴの13、アカギの11を引き離して最多です。

ガジュマル推しの人は、国の天然記念物に指定されている、
名護市の「ひんぷんガジュマル」を見に行くかもしれません。
「ひんぷんガジュマル」の樹齢は推定280~300年。
琉球王国の時代から沖縄を見ています。

属名のFicusはイチジク、種小名のmicrocarpaは小さな実という意味です。

ガジュマルの実はイチジクの形をしていますが、食べるのはちょっと。
小さくてタネばかりなのはさておいても、
沖縄にはガジュマルコバチがふつうにいるらしく、虫入りです。

虫好きにとってガジュマルコバチはむしろ楽しみかもしれません。
虫に興味がある方は、落果を割ってルーペで観察するとよいです。

ガジュマルの根本。 撮影地:海洋博公園
気根の先が地面についたときは杖にします。
近くに岩があればしがみつき、台風に飛ばされないようにします。
ガジュマルの気根  撮影地:首里金城
森の中で絡み付きを強めて生きる姿から、絞め殺しの木と呼ばれることがあります。
しかし、広い場所で育てると見事な傘状の樹形になるようです。

5位 Terminalia catappa モモタマナ(シクンシ科)

モモタマナは、見るからに丈夫そうな、革質の葉をつける高木です。
木陰を提供する目的で植栽されます。
照りつける日にモモタマナがあれば、天蓋の下でひと息つけそうです。

海洋博公園の駐車場にモモタマナの植栽があります。
駐車場の真ん中で木陰を提供する仕事に励んでいます。
気が向いたらねぎらってあげてください。

冬に少し落葉するのですが、このとき赤く色づいた葉を降らせます。
「この大きな赤い葉はなんだろう。あちこちに落ちているぞ」
視線を上げると、モモタマナが見つかります。

熱帯・亜熱帯に紅葉シーズンはありません。
葉が赤く色づくのは、
シマサルスベリと、オオバナサルスベリと、モモタマナぐらいです。

海洋博公園のラベルには「コバテイシ」と表示されていますが同種です。
複数の和名で呼ばれることはよくあります。

僕は「モモタマナ」派です。
「アスタルエーゴ!」みたいに「モモタマーナ!」と言いたい。
「モモタマナマナ、モモタマナ、さあ言ってみろ!」と言いたい。
「モモタマナー」、「オマエモナー」と路上で会話し、
 通行人が知恵袋に質問をあげるのを見たい。
「桃太郎はマナーが良かったので、犬、猿、雉は好感を持ちました。
 立腹を抑え、提案でビジネスに臨む姿勢をモモタ・マナーと呼びます」
 などとホラを吹きたい。

・・・筆が滑りました。

モモタマナの実は不思議な形をしています。
桃のタネに似ていることから、和名にモモの字が入っていますが、
「桃のタネ」では表現しきれていないと感じています。
これはもう「モモタマナ型」でよいかと。
Adobeのイラストレーターを使って曲線を再現したくなります。

黄色く熟した実をオオコウモリが食べるそうです。
樹下にボサボサになったタネが落ちていました。
これがモモタマナの実の成れの果て??

オオコウモリは愛称フルーツコウモリ。甘いもの好きで知られます。
オオコウモリは沖縄ではどの果実を好んで食べているのでしょう。
地元民と歩けたら詳しい話を聴けるかもしれません。

オオコウモリは夜行性です。
夜の観察で食事風景を見ることができたら十分、ラッキーです。
レンゲにミツバチ、椿にメジロ、モモタマナにオオコウモリ。
三番目は撮影難度が高すぎです。

朝、来園者を待つモモタマナ  撮影地:海洋博公園 駐車場  
駐車場に落ちていたモモタマナの葉(クリックで拡大)
モモタマナの紅葉  撮影地:首里城公園
太幹には割れたような縦筋が入る
名木に添えられた石碑
Ficus属の実に混じって落ちていたモモタマナの実 撮影地:海洋博公園 遊歩道
ボサボサの実。左上にもタネ。オオコウモリの食べあとか。

6位 Bischofia javanica アカギ(コミカンソウ科)

アカギは生活圏で愛される緑陰樹です。

那覇市の裁判所通りにアカギ並木があります。
樹齢の進んだアカギは、とくに大切にされており、
首里金城の大アカギは天然記念物の指定を受けています。

アカギは2002年、「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定されました。

市街地の緑はあるだけありがたいものですが、
アカギの実を鳥が食べ、原生林までタネを運んでしまう。
発芽率が高く、固有種を脅かす可能性があるとのことでした。

行政は市民に愛されている木を伐採するのでしょうか。
問題がある樹種は「世界の侵略的外来種ワースト100」で指定されている、
Leucaena leucocephala (ギンネム)だけに見えましたが・・・。

結論を述べると、沖縄行政は、アカギを伐採しませんでした。
病虫害が出たときに枝を剪定する程度です。
沖縄県の公文書にアカギの排除についての記述はありませんでした。

参考文献
沖縄県外来種対策行動計画に基づく外来植物の適正利用方針 令和2年3月
https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/820/02_gairaisyokubutu.pdf

沖縄県 街路樹植栽・維持管理ガイドライン(案) 令和5年10月
https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/023/058/01_01_gairozyugaido.pdf

小笠原諸島は世界遺産であって、固有種を維持しなくてはなりません。
小笠原のレンジャーは外来種の侵入・繁茂を許さないでしょう。

他方、琉球諸島は古くから人々が生活を営んできた場です。
ヒトと動植物が共存し、安定した状態を保っています。
問題を起こしていないアカギを根絶する必要はなさそうです。

沖縄には戦争でたくさんの人が亡くなった歴史があります。
戦火を免れ、生き続ける樹木に格段の想いがあるのではないかと。
伐採という結論にならなくて安堵しています。

アカギの同定のポイントは三出複葉です。
花実がなくても、①沖縄、②マメ科以外、③三出複葉の木、と揃えば
ほぼ確定です。(注:デイゴはマメ科です。)

複葉は、単葉と比べて、
・風雨を透かすので、葉が薄くても破けにくい
・運搬路を決め打ちすることで、水や養分の行き来を効率化できる
などの利点があります。

中央の小葉には柄があることが多いです。
次のインターチェンジまで降りられない高速道路のようです。
手が届く枝が見つかったらアカギの三出複葉を観察するチャンスです。

首里金城の大アカギの幹。下部には洞ができている。
横に伸びる大アカギの太枝。赤味を帯びる。
アカギの自然実生


7位以下は、次号掲載の予定です。



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