知って欲しい事件ファイル①

郊外のショッピングモール。週末には多くの家族で賑わい、駐車場に車を停めるのも一苦労…なんて経験した人は多くいるのではないか。
そんなショッピングモールで何を目的とするでもなく、フラフラと店を冷やかしながら歩いていると突然、「キャーッ!泥棒~っ!」という声が聞こえてきた。
慌てて声の方を振り向くと、ATMの前で中年の男性と幼い子供を抱えた若いママが揉み合いになっている。
声の主は若いママの方だ。
声を聞き数人の店員と客がすぐさま駆け付け、中年の男を取り押さえ始めた。
「違う!俺は何もしていない!泥棒はそっちだ!」
やがて、たまたま別の万引き事件で近くにいた警官も駆け付けて、男を制圧し後ろ手に手錠をかけてうつ伏せの状態にして取り押さえた。
男はずっと無実を訴えている。
しかし、警察官は署で話を聞くと言って一切取り合わなかった。
被害者の女性からも話を聞こうと、女性を探すも、一向に姿が見つからない。
騒ぎのどさくさに紛れて、いなくなってしまったようだ。
それから約20分が経過した。
気づけば男は黙っていた。
というか、気を失ってしまっていた。
こちらの問いかけにも応じる事が出来ない状態になってしまっていた。
取り押さえていた警官とは別の警官が男の異常に気付き、救急要請したが、なんとその男は翌日になって、搬送先の病院で帰らぬ人となってしまった。
そこで警察は容疑者死亡のまま書類送検をしたのだか…。

全くの予想外の事実が後に明らかになってくるのであった。

亡くなったのは、68歳の男性で、全くの無実であったのである。

その日、男性は孫にハムスターの餌を買ってきて欲しいと頼まれてこのショッピングモールにやってきた。
そして妻にお小遣いを渡してしまい、手持ちのお金がなくなったので、ATMでお金を下ろそうとしていた。
そんな矢先に突然、わざとらしくぶつかってきたのがその幼子を抱いた若い女であった。
ぶつかると男性の持ち物を無理やり引っ張ってきた。
当然のように男性が抵抗するや否や、女は大声をあげ「泥棒~!」と叫んだ。
後の顛末は前述した通りである。

これは、なんともやりきれない実在の事件である。遺された男性の家族の、やり場のない怒りは計り知れないであろう。夫の死を知った妻はその場で崩れ号泣したという。

状況から見て、即座に男性の無実を判断するのは困難であったのかもしれない。
事実、結果として誤認逮捕となってしまったわけだが、なぜ死に至らしめるほどの制圧が必要であったのか。
初めてこの事件を知る人もそう思って当然であろう。
男性の死因は、急に拘束された事による肉体的、精神的ストレスによる高血圧心不全と、不整脈であった。
遺族の無念は、その後法廷で警察と争われることになる。
結果として、男性の死因が警察官による過剰な制圧にあると認められ、約3,640万円の損害賠償を命じられた。
なお、警察は未だに公に遺族に謝罪をしていない。
そして何よりも、事の発端となった女は今もまだ行方がわからず捕まっていない。
ちなみに事件としてもとっくに時効を迎えてしまっている。

世の中は時として、どこまでも不条理である。
この不条理を解消することも出来ないまま、社会は流れていく。
だからせめて、少しでも多くの人にこういった胸糞な事件を知ってもらいたい。
今後こういった投稿もしていこうと思う。

今回の事件は、四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件でした。

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