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本屋さんと「陣地戦」


Twitterでの発言に多くの方々からリアクションを頂きましたので、忘備録として、まとめてました!まだまだ練りたりませんが、いったん公開!

さて、コストパフォーマンスをテーマとするお正月の『ニッポンのジレンマ』の収録で、以下のような発言をしました。

「ヘイト&歴史修正主義本がコスパがいいからって、街の本屋で売ってていいんですか」(大意)。

(あ、ここでの街の本屋さんの定義はア○ゾンとかではない、大型書店を含めたリアル書店という意味です。)

4時間半におよんだジレンマの収録を2時間の番組にまとめるなかで、上記の発言は削られてしまったのですが(あ、でも編集の仕方すごいっす!まじで!出演者として内容面で言いたいことありますが、ぼくにはあんなカタチでまとめることはできない(そりゃそうだ))、

昨日、まさかまさかの、ある大型書店の新宿本店のTwitterアカウントで、思いっきりヘイト&歴史修正主義本のサイン本をお取り置きします、という嬉々としたツイートが流れてきました。。

まさか典型例をお正月から見るなんて思ってもみませんでした😢悲しい…😭

以前、同じ本が店頭に並んだ時、ある人文思想担当の書店員さんは気骨ある批判ツイートをされました。そのような方がいる書店に未来と希望を感じます📚

ところで、Twitter上では、全国展開する大型書店のボイコットを宣言される方々が現れたりしています。たしかに、その本はそもそも記述に間違いが散見されたり、Wikipediaのコピー&ペーストがバレてしまったり、書き手が人種主義的かつ排外主義的な発言を繰り返したりと(それにもかかわらず総理や大阪市長が「読書宣言」をするなど)なにかと「厄介」な本だといえます。

正直、僕もその大型書店から足が遠のくと思います。

ただ、(僕を含めて)みんなで「ヘイト本や日本スゴイ系歴史修正本を置いた店で絶対本書いません」ってのをガチで全国展開をしてしまうと、その大型書店をはじめ、街のリアル書店が、ほんまに「ヘイト本や日本スゴイ系歴史修正主義本を『政治的パフォーマンス』として買い漁る人のための場所」になってしまう可能性があります。

なぜなら、リアル書店は「厄介」な本をひたすら買い漁る人々向けの商品をならべねば、潰れてしまうようになるからです。

そもそも、本が売れにくい世の中だから「とりあえずヘイト本&日本スゴイ系歴史修正本なら買っちゃうよ」派の購買運動が目立ってしまい、それをムシできない本屋さんの対応(追従…?)っぷりが残念ながら目立ってしまっている部分があるわけです。。

ヘイト本や日本スゴイ系歴史修正主義本を買い漁る人々は「読むために」ではなく、「買う」ことで、売り場を占領し、それらの本が描き出す、排外主義的な社会を「作り出す」運動をーー大変コストに見合うパフォーマンスをーーしている部分があると思われます。

そのような状況だと、実は、本屋さんで素敵な本だけを買い続けるのも、立派な対抗戦略になるのではないでしょうか。「僕たちは『厄介』な本ではなく、素敵な本のみを買い続けています」と、本屋さんに伝えていくことになるからです。

いかがでしょうか。。

特定の書店のボイコット宣言って、一時的にスカッとするのですが(だからこそ共感も呼びやすいのですが)、スカッとしている間に書店が潰れたら元も子もないといいますか。。

それならば、むしろ、積極的に素敵な本ばかりを買い続けるという地道な陣地戦をみんなですることで、「ヘイト本の面積が相対的に小さい売り場」を生み出し、それを買い支えていくのが、実はベターな対抗戦略なのかもしれません。


とはいえ、本って、まぁそれなりに高いのもありますよね。でも、あえて「コストをかけて買う」ことをみんなで続けることで、街の本屋を将来に渡って守るという「パフォーマンス」を達成することもできるかと思うんです。

つまり、将来的に「コストパフォーマンスが良い」のでは。。

こちらは楽しく読みながら、排外主義的でない社会を少しずつ作り出していければ、良さげやなぁと思います。

ほんまは、いまの出版状況の分析が必要なのですが、それは「餅は餅屋」。どなたか、プロの教えを乞いたいと思います。

とりあえず、手ごろな価格の本からでも。

たまに、本屋の素敵なトコや素敵な本を探しにいきましょ。いい「出会い」があるかもしれません。余裕があれば、誰かに贈ってもいいかも。

その積み重ねが、リアル書店に買いに来て、たまたまヘイト本や日本スゴイ系歴史修正主義本に触れてしまい、うなだれてしまう人々を減らすことができるかもしれません。

もちろん、そもそも、そういった本を置くのやめなよって声をガッツリ挙げながら。

本屋は、「商品を買いに行く場所」だけでなくて、居場所にも、出会いの場にもなると思います。

僕も微力ながら、リアル書店の売り場を買い支えていきたいと思います。前より、イベントにも出かけよう。

もちろん、素敵な売り場にならべてもらえる、「ええやん」と思ってもらえる本を編んだり、書いたり、していきたいと思います。

まだまだ考えるべきことはありますが、今回はこのへんで。

じゅりあん

【追記】

元書店員さんからコメントをいただきました…!同僚のことを考えながら「並べるのはホンマに辛かった」こと、具体的なご提案、「罪滅ぼし」という表現、そして「多様性」と「責務」の行方。今後の「陣地戦」への示唆が多数含まれているように思い、転載をお願いいたしました。

ほんまに考えさせられます。。

皆さまぜひご一読を!

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元書店員です。ヘイト本って言葉はまだ無かったけど、あの手の本は昔からあって、中国籍の同僚も何人かいたんで、並べるのはホンマに辛かったです。(棚作りする権限は私には無かったので仕方なく積んでましたが……)元ではありますが、現場民から言えるのは、お買い上げはもちろん一番嬉しいんですけど、例えばお客様や著者さんの立場から現場の書店員にご提案頂くのも、全然ありなんじゃないかな~って事です。

もちろん、激務ではありますんで全ての書店員さんがその提案を受け止められるとは保証しかねますが、大体の書店員さんは根っからのレイシストでああいった本を積んでる訳ではなくて、問題について認識してない場合も多いので、一言、「この本を積み上げる事で、あなたのお店を訪れることすら出来なくなる「被害者」もいるんですよ」って言うことで、あの本だけを何列も積み上げていた書店が、態度を変える可能性もゼロではないと思います。

あとは、レイシズム的な考えに対抗する書籍のリストを現場の書店員さんに配るって言う手もあるかと、仕入れやすい本と仕入れが難しい本の選別(悲しい事に所謂「良書」には町の書店には扱いにくいものも結構あるんで……)などは、現役の書店員さんが協力してくれるかも……

ただ、ひとつ御考慮いただきたいのは、書店、とりわけ大型の書店には、ある種表現の多様性を担保する役割もあって、お客様が肯定的にしても否定的にしてもレイシズム的な表現に触れる事を求めるなら、それに応えるのも責務のひとつではあるんですよね……。

ジュンク堂書店の福島聡さんの著書などを読むと、オーム事件の時にオーム真理教が出版した本を敢えて置いているんですよね。まあ、レイシズム的な表現にはある程度の歯止めが必要だとは思いますが……あと、サイン本を作って大々的に売り出すのは、明らかに「共犯」ですが。

長くなっちゃったなあ……すみません、Twitter向きな思考をしてないもので。何かお手伝い出来そうなことがあったら、声をかけていただけると幸いです。それが、とても辛い思いをしていたであろう件の同僚や外国籍のお客様への罪滅ぼしになれば……

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2018年に、2冊の本に関わらせていただいたとき、話題の本屋さん(ただし大阪の)で、書店員さんに写真撮ってもろた時、本棚がどう映るか、すごい考えてから撮ってくださりました。その熱量とか、想いとか、矜持とか、きっと色んな制約とか権限とか、いろんなものがあるなかで、撮ってくださったことがすごく印象的でした。

もし、あの時の書店員さんの方が、今しんどい想いされてたら、悲しすぎる…と思って、このnoteの元になる一連のツイートを書き出しました。

陣地戦、と「戦い」の比喩で書いてきましたが、敵/味方を明確にしてしまう比喩なので、もっとちがう言い回しでも良かったのかなぁと今さら思います。うまいこと、やっていきたいものです。

じゅりあん

https://www.hafutalk.com/talk/




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