『わたしを上手にダマして』♯2

「今日は一度もトイレに行ってない」

 認知症には、色々なタイプがある。前提として病気自体に種類があるのだがその説明は省くとしよう。
 総じて言えるのが記憶への障害。そして、その症状は自覚しにくいということ。だから、第三者からするとチンプンカンプンな内容も本人にとっては事実なのである。
 また、何でもかんでも記憶保持できないかというとそうでもない。本人にとってインパクトのあるものは覚えてたりする。

ケース1

 87歳女性。14時、トイレに声をかける。「あー、良かったわ。今日は一度もトイレへ誘われてないのよ。向かいの人はいっぱいトイレに連れてってもらってるでしょ。」と話すが朝起きて一回、朝食後、お昼後に一回ずつトイレには行っている。彼女は、年々足に力が入らず手伝ってもらってやっと立ち上がることが出来る。トイレに座ると「おしっこが出ない」と不安を話す。排尿はお昼後にも出ていて、オムツ内にも出ていたりする。
 一つ気にし始めると延々とそれを気にしてしまうこともある。だからこんな時は伝えることはただ一つ。おしっこが一度でないなんて対した事じゃないと。(本当に排尿がしばらくでてないとなるとまずいのだが...)場合によってはオムツにもうでてるみたいだから大丈夫とも言う。ともかく、トイレさっきも行ったよとか事実は通じない。トイレに行っていないというのは思い込みでも忘れたわけでもなく、本人にとって事実なのだ。

次回はその逆のケースだ。つまりトイレには行ったから大丈夫と断られたときのこと。

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