【文字起こし】小川淳也議員 vs NHK幹部2019年3月14日 衆議院総務委員会

2019年3月1日衆議院本会議にて根本厚生労働大臣の不信任決議案が提出され、野党の小川淳也議員は約1時間49分に及ぶ趣旨弁明を行った。しかし、当日夜のNHKニュースウォッチ9では小川議員自身の主張を一切報じず、さらには悪意のある切り取り編集で小川議員があたかも時間稼ぎに終始したかのような印象を視聴者に与える内容を放送した。

そして、約2週間後の2019年3月14日。衆議院 総務委員会にて小川議員自ら参考人であるNHK幹部にこの問題を質問した。
本記事では、この質疑を文字起こしする。

✳︎NHKニュースウォッチ9の放送内容の詳細は、上西充子氏の検証記事をご覧いただきたい。本質疑の中でも「有識者による見識と覚悟を持った記事」として取り上げられている。

質疑

小川淳也議員:
立憲民主党・無所属フォーラムの小川淳也です。
まず、今般の予算でありますが、赤字予算であると。
それから基金を取り崩して補うと。
さらにそうまでして受信料を引き下げると。
あの一連、私ども理解をするところ、ございまして、ま、党なり会派の決定に従って私も賛成するつもりでおります。

その上で、今日ちょっと編集方針についてお尋ねをしたいと思っております。
ただ、その特に政治報道に関する方針なんですが、その前に先ほどのやりとりの中でもありましたが、例えばドラマとか、あるいはバラエティ番組、それから特に教養番組やドキュメンタリー。これに関しては私自身、そのNHKの番組のクオリティーと言いますか、これ圧巻だと思います。自分自身、すごく勉強になると思って、わざわざ録画して、視聴している番組も複数ありますし、あの、この点に関しては率直に敬意を表したいと思っております。

それで問題は政治報道についてであります。このー、NHKの政治報道に対する信頼感なり、期待感、これはもうあえてちょっと申し上げます。だいたい世の中半分の方は政権支持層です。世の中のもう半分の方は政権不支持層です。で、両方とも受信料を払ってます。・・という前提に立った上でお尋ねをしますので、その前提でお答えを頂きたいわけです。

これで、私自身ちょっと、自分自身の発言に関わることなので非常に申し上げにくいんですが、ちょっと看過できませんので、お尋ねします。先般3月1日の衆議院の本会議における根本厚生労働大臣の信任に関する議案についての報道です。

ある学識有識者の方がこの大臣不信任決議案の趣旨弁明を「悪意ある切り取り編集で辱めたNHK」という形で投稿記事を投稿しておられます。これは、あのインターネット上で色んな意見があって良いわけですが、学識経験者が投稿したということですので、それなりの見識と覚悟を持っての記事だと私も受け止めています。

それからインターネット上に、これは一般の方だと思うんですが、

野党側が追及に用いたネット上の統計不正に関する皮肉の書き込み。野党側が追及に用いたのはそれである。冒頭わずか2分。全部で1時間49分、109分の演説時間を頂いたわけですが、冒頭わずか2分あまりの導入部分があたかも演説の本題であったかのような印象を与えるナレーションが付されていた。「途中何度も水を飲む姿」と時間稼ぎをしていた印象を与えるナレーションを加え、これ報道とは政権与党に都合の良いことを言い、都合の悪いことを隠し、野党を蔑んで、与党側の印象を良くすることなのか。恥を知ってください。

・・というような一連の批判がございます。

これについてNHKがどう受け止めているか。まず、その点から会長のご見識をお聞きしたいと思います。
参考人 NHK上田良一 会長:
お答えいたします。えー、NHKと致しましては放送法に則り、公平公正、不偏不党、自主自立を貫き、視聴者の判断の拠り所になる情報を多角的に伝えていくことが役割だと考えておりまして、これをしっかりと守って放送を行っていくことだと認識致しております。えー、国民の知る権利に応え、特定の利害に左右されることなく意見が対立している問題は多角的に取り扱うなど、基本的な姿勢を堅持することが重要と考えておりまして、ま、これからもこの認識を常に持ち、業務執行にあたって参りたいと考えております。

何をどのように伝えるかに関してましては、ま、まさに編集権に関わることでありまして、ま、コメントを差し控えさせて頂きたいと思いますが、分掌された権限のもとで現場が自主的に判断していると認識いたしております。
政治的公平性につきましても、こうした自律的な取り組みの中できちんと、うー、確保していきたいと考えております。
小川淳也議員:
まさに今、会長が仰ったお題目がきちんと実践されてますか、チェック機能は働いてますか、という主旨でお尋ねをしております。

あのー、一部異論もあるようですが、これ、最近、NHKを退職された記者の方が出版された「官邸vsNHK」という書籍です。で、特に森友問題に焦点が当たってます。で、初動段階において、相当取材を尽くしたにも関わらず、上層部の意向で十分それが報道できなかったという一連の経緯が綴られています。
もちろん異論も反論もあるでしょう。
ちょっと関連してお尋ねしたんですが、この森友問題に対するNHKの報道が不十分だという世の中からの苦情があったようですね。これがどうも、数字を、この本に沿って数字を申し上げると、150件だったそうです。

今般ちょっとお尋ねします。この3月1日の本会議の取り上げ方、ま、夜9時台のニュースの話なんですが。・・を巡って、電話やお手紙、メール、そしてSNS。色々と苦情なり苦言があったと思いますが、それはどのくらいあったんですか?
参考人 NHK木田幸紀 専務理事:
お答えいたします。えー、3月1日から昨日までの、電話、メール等の、おー、ご意見は170件という風に聞いています。
小川淳也議員:
これ今、会長お聞きの通りでして、この森友問題に関する苦情が150件なんですね、この記者の方によると。で、このー、一週間、10日の間に170件の苦情が寄せられているということはそれなりに重く受け止めて頂かなければいけないと私は思っています。

それでー、もう1点。あのー、答えられないのかもしれませんが、この3月1日の9時代のニュース、当該部分の視聴率どのくらいですか?
参考人 NHK木田幸紀 専務理事:
視聴率については、私の方からはお答えできないです。
小川淳也議員:
なんだか、そういうルールがあるようなんですけども、まあ、おそらく私の責任において推測で申し上げると、おそらく、まあ5%〜10%の間なんではないかと想像しています。そうすると、日本国民の500万人から1000万人の視聴者。まあ多くは、そのほとんどは受信料を払っている視聴者にこのNHKの切り取り方が伝わった可能性があります。
一方、実際の、ま、登壇した野党側の主張を直接ご覧になった方は、私もこれちょっと分析難しいんですが、動画の視聴者などから推測しますと、どんなに多く見積もっても数千人から数万人まで。
そうすると、真意を受け取ったのは日本国内に数千人から数万人
このNHKの切り取りを受け取った方が500万人から1000万人
どれぐらい影響が大きいか、ということは会長を始め、幹部、編集の現場もその影響力の大きさについてはよく自覚を頂いていると思います。

じゃあ、ちょっと事実に即して聞きます。
今まさに会長が仰った、これ放送法は、報道は事実を曲げない。それから意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにする。これ放送法の要請です。
同時に、NHKが自主的に放送法に従ってだと思いますが、ガイドラインを作ってますね。ガイドラインからも少し読み上げたいと思いますが、まさに会長が先ほどご答弁されたように、

視聴者の判断の拠り所になる情報を多角的に伝える。
これ自らお決めになったことです。
それから報道は事実に即した表現に徹する。
これも自らお決めになっていることです。

で、その角度からお聞きします。
当時、野党側、私自身の発言であると同時に野党5会派を代表しての発言でした。
その骨子はなんだったと受け止めたのか?
その事実に即してお答えを求めたいと思います。
参考人 NHK木田幸紀 専務理事:
お答え致します。えー、根本厚生労働大臣の不信任、不信任決議案の提出理由は、統計不正問題は国の根幹を揺るがす大問題であり、えー、決して看過することはできない。えー、根本厚生労働大臣は部下からの報告の事の重大性を全く認識できず、えー、不正の重大さに真剣に向き合おうとせず、真相究明を妨げようとした責任はあまりにも重いなどというものであったという風に認識しております。
小川淳也議員:
あのー、正確に捉えて頂いていると思います。
これ賛否両論あっていいんです。賛否両論あっていいんですが、少なくとも野党側の主張はそうだった。
で、先ほどから申し上げている放送法なり、自らの基準に従えば、多角的にその意見を取り上げる責任がある。で、その実際の報道はのっけから取り上げてますので、ご覧になってない方も、あの、ご存知ない方もたくさんいらっしゃると思いますが、結論から言うと、私が導入部分で用いたインターネットユーザーの川柳と、あたかも時間を引き延ばすかのように水を飲んだ部分しか取り上げられていないんです。基本的に。

で、それで、今まさに正確に野党側を代表しての主張をとらまえているじゃないですか。
で、確認すると、民放各局はここをまさに拾ってるんですよ。
なぜ、この野党側の主張の骨子を報道の骨子として取り入れなかったのか
その理由をお聞きします。
参考人 NHK木田幸紀 専務理事:
お答えいたします。えー、NHK では、この日、あの、正午のニュースでは、えー、野党6党派の、えー、国会対策委員長らが会談して、えー、統計問題の審議が不十分で新年度予算案の採決が認められないという認識で一致し、え、不信任案、不信任決議案を共同で提出したという事実を、え、報道しました。
この際、えー、立憲民主党の辻元国会対策委員長の「嘘はあるけど隠蔽はないというような、えー、追加報告書の結論の中身を良しとするという大臣、これはリーダーシップがない、止めてもらう、うー、もらわないと仕方がないですね」というぶら下がりも放送しました。
さらに、ニュース7、夕方夜9時、夜7時のニュースですが、え、ここでは正午ニュースの要素に加え、衆議院本会議で立憲民主党の小川淳也議員が行った趣旨弁明のうち、えー、「一連の真相究明、甚だ不十分、不適切だったと言わざるを得ず、不信任案提出の根本的な理由であります」という部分を放送しました。
えー、ニュースウォッチ9では、政府の新年度予算案の衆議院通過をめぐる与野党の攻防をお伝えする中で、えー、不信任決議案についても放送しました。
え、野党側が提出した不信任決議案については、え、統計問題の審議が不十分で、新年度予算案の採決を認められないとして、えー、根本厚生労働大臣の不信任決議案を提出したというコメントと共に、えー、立憲民主党の小川議員が衆議院本会議を行った趣旨弁明も放送いたしました。えー、趣旨弁明では小川議員が統計不正問題を批判し、え、問題の本質を見抜いている国民の力作だなどと指摘して衆議院本会議の演説で引用した、え、川柳も放送で使用いたしました。統計不正問題の真相究明を求める野党側の姿勢を、おー、放送したものであります。
小川淳也議員:
それは趣旨弁明の趣旨ですかと聞いてるんですよ、ということなんです。
それから12時と7時でやったから9時はやらなくていいと、いうことにもならないんですよ。会長そうでしょ。そういうことなんですよ。それでー、これだけの視聴者からのいろんな意見が出たことを軽んじるべきじゃないと思いますよ。この編集に関して言うと。会長、どうですか。

この9時台のこの編集についてもう一点ちょっと聞きます。私が当日水を複数回飲ませていただいたことは事実なんです。それは、あのー、率直に申し上げて、いろいろと個人的な体調もありました。相当寝不足やあるいは疲労も溜まっていたことも事実です。で、あの時一番恐れたのは脱水と酸欠なんです。そういうことも含めて、えー、それから急いでもちろん原稿全部いききりたかったんですが、そういう状況なのでいけなかった。それで議長からの注意も真摯に受け止めています。が、限界を超えて早くは読めなかったという正直にそういう状況があったんですよ。そのうえで「何度も水を飲む姿に議長が注意した」というのもこれ事実と異なるでしょう。何度も水を飲む姿に議長が注意されたとは私は思いませんよ。もう少し早く読めないかとか時間を短縮できないかという議長の思いがおありになったことは想像しています。が、水を飲んだこと、これ時間にして何秒かでしょ。水を飲んだのは。これ、あたかも水を飲んだことに対して議長が注意したかのようなナレーションの付され方、報道のされ方は、まさに事実と異なると思いますが、いかがですか。
参考人 NHK木田幸紀 専務理事:
お答えいたします。えー、趣旨弁明の演説については十分に吟味し、えー、ま、報道については自主的な編集判断に基づいて放送を行わせていただきました。
小川淳也議員:
いや、質問に答えてください。「水を飲んだことを議長が注意した」というのは事実誤認じゃないですかと聞いています。
参考人 NHK木田幸紀 専務理事:
あの、先ほども申しました通り、趣旨弁明の演説については十分に、えー、内容を吟味いたしまして、編集につきましては自主的な編集判断で行わせていただきました。
小川淳也議員:
じゃあ水を、議長が、水を飲んだことに注意したと受け止めているという理解でいいですね。
参考人 NHK木田幸紀 専務理事:
あの、繰り返しになりますけれども、趣旨弁明の演説につきましては、あの、十分に吟味いたしまして、報道は自主的な編集判断で行わせていただきました。
委員長:
えー、木田 日本放送協会専務理事、もう一度質問に答えてください。
参考人 NHK木田幸紀 専務理事:
あの、趣旨弁明の演説につきましては十分に内容を吟味させていただきまして、えー、報道につきましては自主的な編集判断に基づいて行いました。
委員長:
速記、速記止めます。 



✳︎約20秒中断


委員長:
速記を起こしてください。
参考人 NHK木田幸紀 専務理事:
え、えー、お答えいたします。えー、えー、野党提出の根本厚生労働大臣の不信任決議案につきましては、え、先ほども、あ、あのー、お答えしましたように、正午、ニュース7、それにニュースウオッチ9でそれぞれお伝えしております。その上で、えー、立憲民主党の小川衆議院議員が趣旨弁明で、えー、インターネットに投稿された川柳を読み上げ、えー、統計不正問題に対する国民の不信感が根強いと訴えるとともに、えー、水分補給の際に衆院議長から少し早めて結論を導いてくださいと促されながらも、まあ2時間近くにわたって追及を続けたという形でお伝えいたしました。
小川淳也議員:
とにかく「水分補給の際に」と今上手におっしゃいましたが、ナレーション違いますからね。「何度も水を飲む姿に」ですから。そういう言い方を変えられること自体、ちょっと適切だったかどうか内部でも議論があるということでしょ、これは。
とにかくねー、賛否両論あっていいんですよ。だけど、野党側の主張の骨子は伝えるべきでしょ。それから議長が何に注意をしたのか正確に事実に即して伝えるべきだ。500万人、1000万人の視聴者を惑わした可能性ありますよ、この点。大いに反省を求めたい。

その上で、これどういう過程で原稿が作られてるんですか。現場で作られた原稿と最終的に承認された原稿とはどのような相違があるのか。ちょっと資料提出求めます。もしここで答弁できるようならしてください。
参考人 NHK木田幸紀 専務理事:
あのー、おー、多様なご意見があることは承知しておりまして、えー、まあ結果としてこのようなご指摘をいただいたことを真摯に受け止め、えー、引き続き、えー、正確、公平公正、不偏不党、自主自立を堅持して報道に当たってまいりたいとまず思います。
なお、えー、原稿等々のご質問につきましては、えー、編集権に属することですので、え、お答えを差し控えたいと思います。
小川淳也議員:
まず、あの冒頭おっしゃったコメントは私も重く受け止めたいと思います。これ私自身も大変そのー、わきまえながら質問しなきゃいけないことだということはよく分かってるつもりなんです。しかし、これだけの声がある以上、私も看過できないという心積もりで質問しています。
NHKさんはですね、やっぱりこれ予算を毎年政府与党に握られています。それから先ほども議論になりかかっていましたが、会長人事も事実上握られている。予算と人事を握られているという意味では与党内、霞が関と同じなんですよね。
なので申し上げていることがある意味酷かもしれないということも理解しているつもりです。従ってこれは例えばBBCなんかはあれでしょ。10年に1回ですよね、政府の審査はね。というちょっと距離を置く制度的なことも考えなきゃいけないかも知れない。それから繰り返しになるんですが、視聴、受信料についても結構やっぱり色々と、まぁあくまでインターネット上ですよ、議論が出始めてるんですよね。

「昨日初めてNHKに抗議の電話をした。あまりにも酷くて悔しかったので。果たしてどの程度、つ、伝わるものがあるのか不明ですが。最近あまりに偏った報道ばかりで受信料を払うことに疑問がある、と伝えました」
「いいですねどんどんやりましょう。受信料を払っている者の権利です」
「ひどいな。悪意しか感じない編集」
「受信料を返してほしい」
「皆さん、ぜひ NHK受信料不払い運動を展開しましょう」

というような声も一部とはいえ起きかねない背景はあると思いますよ。
そのことを踏まえて、で、これちょっと、この書籍とも関連するんですが、一度衆議院の総務委員会に小池報道局長、ちょっと参考人として招致したいので、委員長、お取り計らいをお願いしたいと思います。
委員長:
理事会で協議します。
小川淳也議員:
いろいろと、ま、会長、重ねてになりますが、受信料を払っている視聴者の半分は政権支持層、そしてもう半分はこの政権に対して、不満や不安、疑問を持っている不支持層です、約半分。そのことをも改めてご認識いただいた上で、大変出過ぎたことを申し上げた部分はよく自覚した上で、質疑を終えたいと思いますが、今後の特に政治報道、気骨のある、気概のある報道をぜひ求めて質問終わりたいと思います。ありがとうございました。


✳︎全24分間の質疑の映像はarticle9氏のYoutubeで視聴可能
https://youtu.be/muE4n40yR80

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更新履歴

2019/3/14 23:44 前半(開始から12分頃まで)を公開
2019/3/15 21:55  後半(12分から24分まで)を公開
✳︎後半は先行して全文を公開したハーバー・ビジネス・オンライン記事を一部引用

2021年4月をもって、noteの更新を取りやめました。 現在はtheLetterで情報発信しているので、よろしければ登録をお願いします。 https://juninukai.theletter.jp/