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【全文 文字起こし】 参議院農林水産委員会2020年12月1日 種苗法改正案 討論・採決

2020年12月1日、種苗法改正案が参議院農林水産委員会で可決。本記事では、反対討論2件、賛成討論1件、採決に至るまでの約11分間のやり取りの全文を書き起こす。

<表記の注意事項>
・発言内容は「えー」などの言い澱みを含めて、そのまま書き起こす。読解が困難な言い間違いが頻発した場合であっても、発言のまま書き起こす。
・発言者名は【 】で囲んで記載する
・筆者が重要と判断した箇所は太字で記載する
・用語や背景知識は*で補足説明する
・委員会室の様子、発言の補足は( )で記載する

反対討論 立憲民主党・石垣のりこ議員

【立憲民主党 石垣のりこ議員】
立憲民主党・社民会派を代表しまして、ただいま議題となりました種苗法の一部を改正する法律案について反対の立場で討論を致します。

農林水産省は本法案の提出の背景として我が国の優良品種が海外に流出し、農林水産業の発展に支障が生じているとの認識を示しています。そこで育成者の権利を強化する改正案を出すことで、その現状を是正しようとしています。
海外流出を防止し、新品種開発を促進していくためにも資金と労力をかけて品種開発をする育成者の権利を適切に保護する必要性については異論のないところです。しかしながら、種苗という農の根幹に関わる権利のあり方については開発した育成者のみならず、農業者の権利。いわば種苗の生みの親と育ての親の権利のバランスがどのようであるべきか丁寧に議論を進めていかなければならないと考えます。

ま、そのためにも、まずもって育成者の権利を拡大する根拠となる事実や統計が客観的に妥当なものである必要があります。しかしながら今国会の委員会での多くの質疑を通じて明らかになったことは、農家の自家増殖という事実と種苗の海外流出および新品種開発の開発数の減少という事実に明確な因果関係が確認できなかったということです。そうである以上、それを根拠に法改正を行い、現行法で保障されている農家の権利を制限することに何の正当性もありません

えー、また種苗というものの知的財産権は再生産が前提の工業製品などと同等に扱うことには限界があり、種苗法の逐条解説にも明記されているところです。種子・種苗は長い歴史の中で農業者によって受け継がれてきたものです。つまり、種苗がその特質上、権利が特定の誰かに属することに馴染むものではなく本来公共性を有するものであって、育成者の権利は農業者の権利との兼ね合いの上に成り立つものです。

残念ながら世界の種苗市場は合併買収を繰り返して誕生したグローバル企業による寡占化が着々と進んでいます。我が国の主要作物は射程外であると考えるのはあまりにも甘いと言わざるを得ません。圧倒的な資金力でゲノム編集など最先端の技術を使い、これまでの常識では考えられないような品種を次々と生み出す巨大なグローバル企業によって、気がつけば食の根幹である米・麦大・豆などの種苗も独占されていたと。そのようなことがあっては本当に後の祭りです。後悔しきれません。日本の農業を守るには種子を守るための予算措置を保障する法律、種子法の適正な復活、さらに主要作物だけではなく野菜などの在来種も含めた食料としての作物を保護し活用していくことが必要と考えます。これらに国が責任を持って取り組むことこそ、今求められているのではないでしょうか。

民間の知見を活用することと民間任せにする事は違います。

コストの過度な削減、競争力偏重の農業政策は日本の農業の振興どころか衰退を招くものです。

誤った認識に基づいた安倍農政。それを引き継いだ菅農政の衰退政策の延長線上にあると言わざるを得ない。

今回の種苗法の一部改正案は立法根拠の妥当性を欠くものであることを指摘して反対討論といたします。

賛成討論 国民民主党・舟山康江議員

国民民主党の舟山康江でございます。種苗法の一部を改正する法律案について賛成の立場から討論します。

種子や苗などの種苗は農林水産業の基礎的な生産資材であり多様な品種の種苗の利用によって、産地形成を促進し農業者の利益につながるものであることは論を待ちません。そして、そのためには古くからその地に伝わる在来品種や一般品種に加え、新たに開発された品種。その中で登録された登録品種。双方の保護、維持が重要です。

今回の法改正に賛成する理由は、第一に海外に登録品種は流出している事実がある中、それを防止することと、流出の如何にかかわらず育成者権の適正な保護によって多様な品種を維持確保するために必要だと考えるからです。
えー、その際、農業利用・・、利用する際・・、農業者が利用する際の、えー、原理とのバランスには留意する必要があります。

その上で第二にこれまでさまざまな懸念が出されてきましたが、
①一律にすべての種子の自家増殖が禁止になるわけではなく登録品種だけであり、それも許諾によって可能であること
②自家増殖を行っている方の多くは一般品種を利用しており影響は、えー、ほぼを無いこと。
③実際に栽培されている登録品種を面責ベースでみると、そのほとんどが公的開発品種であり、自家増殖を行うにしてもその際の許諾料が法外になると考えにくいこと
④民間開発の登録品種でこれまで何らの許諾条件なしで自家増殖が行われている事例はほとんど考えられないこと
等から一定の懸念、不安は払拭できるものと考えるからであります。

えー、一方でその大前提は公的機関がこれからも新品種開発育成を担い続けることと在来品種がしっかり保全されることであり、民間への知見の提供を促す農業競争力強化支援法8条4号や平成29年の事務次官通達は廃止するか適切な表現に改めるべきであります。加えて、公的機関による新品種の育成と在来品種の保全を支援するために財政措置等によって国が支援することが必要であり、法制化が必須であると考えます。

この2点をしっかり検討し実現することがいまだ残る多くの懸念を払拭することに繋がることから引き続き議論をすることを提起し、賛成討論といたします。

反対討論 共産党・紙智子議員

【共産党 紙智子議員】
私は日本共産党を代表して種苗法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。

反対する第一の理由は、自家採種を認めた第21条の2項と3項を廃止し、育成者と農業者の利益のバランスを崩し、国の役割を放棄するものだからです。1998年、UPOV 91年条約に沿って、種苗法を改正した時に農林水産省は「種苗の育成する側と使う農業者の側の一種の調和点だ」と答弁してしました。2009年に農林水産省生産局知財課が編集した、逐条解説種苗法では「91年UPOV条約は育成者と農業者の利益の調和を図り、育種活動の自由、自家増殖の例外を容認すると農業の実態に即したものである普遍的な制度となっている」と解説しています。また農林水産省は「海外流出を防ぐには海外において品種登録を行うことが唯一の対策だ」と言ってきました。従来の見解にも反します。

生産者の自家増殖の事実上の禁止は成長戦略、輸出戦略を進めるためです。農林水産省の知財課長は検証・評価・企画委員会 産業財産権分野会合で「自家増殖が認められている分野で民間の参入が阻害されている」と言っています。
ここに本当の狙いがあるのです。
改正案には育成者権の乱用を防止する規定はありません。育成者権のみが強化され種苗会社の力が強くなれば企業による種苗の支配が強まることになります

日本の育種力の発展は育成者と生産者と試験場の共助です。種苗の生みの親は試験場、育ての親が生産者だと言われています。自家採種の事実上の禁止は農業者を種苗の単なる利用者、消費者にするもので農業の多様性も生産者の創造性も奪うことになりかねません

反対する第2の理由は、生産者の負担を増やすものだからです。農林水産省の自家増殖に関するアンケートでは3割もの生産者が「種苗購入費を削減するため」と答えています。新たに許諾料の支払いが求められれば生産者の負担が増えるのは明らかです。種苗代は都道府県が開発した種苗より国の農研機構が10倍から20倍、民間では100倍もの高額なものもあります。「農研機構が高額な許諾料を取ることは通常ない」と言いますが、独法化以来、許諾料を上げているのです。説明責任は果たされておりません。国際社会は食料・農業植物遺伝資源条約を始め、種の権利、農民の権利を求める動きが広がっています。改正案はこの流れに逆行するものです

種苗法改正案の廃案を求めて反対討論とします。

採決

【自民党 上月良祐 委員長】
他にご意見もないようですから討論は終局したものと認めます。これより採決に入ります。種苗法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手をお願いいたします。

(自民、公明、維新、国民民主の議員が挙手)

*委員会の全21名のうち、自民は委員長を除く9名、公明3名、維新1名、国民民主1名が賛成。立憲民主4名、共産1名、無所属1名は反対。個人名は委員名簿参照。

【自民党 上月良祐 委員長】
多数と認めます。
よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。


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参考情報

採決当日、日本の種苗の海外流出被害の客観的データを農水省は持っていないことが発覚し、「農家が自家増殖するから国内優良品種が海外流出する」という法改正の根拠が破綻した質疑については以下記事を参照

更新履歴

2020/12/3 1:23 新規作成

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