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心房細動の診断について

今日のポイント

  1. 心房細動の診断は心電図で行う

  2. 発作性心房細動の診断にはホルター心電図、携帯心電計、植え込み型心電図モニターなどが有効

  3. スマートウォッチや AIでの心房細動診断も開発が進みつつある

参考文献
[N Engl J Med. 2019 Nov 14;381(20):1909-1917.]
[Lancet. 2019 Sep 7;394(10201):861-867.]

本文

今日は心房細動の診断についてお話しします。心房細動がどのような病気か、ということに関しては下記記事をご参照ください。

いきなり結論ですが、2023年6月現在では、心房細動の診断は心電図によって行われます。脈の触診や心音の聴診で脈拍が不整であることはわかりますが、それだけでは他の不整脈 (期外収縮など)と区別するのは困難です。心電図であれば心房細動に特徴的な所見がありますので、診断することができるわけです。心房細動は放置すれば重篤な脳梗塞を発症するリスクを抱え続けることになりますが、治療も単純ではありませんので、診断を正確に行う必要があります。

私自身が通常の外来診療や健診時に心房細動を疑う脈の不整を初めて見つけた場合は、患者さんに可能な限り早く心電図検査を受けていただくようにしています。結果として心房細動でないこともあり、その場合は「違って申し訳ありませんでした」と説明時にお話しすることになってしまうのですが、心房細動の可能性があるのであれば、心電図検査を受けていただく価値は十分にあると考えています。実際に無症状の心房細動を見つけたことは何度もありますので、疑ったら即検査、これが大事だと思っています。

心房細動の中には発作性のものもあり、そのままの名前ですが発作性心房細動と言われています。発作性であっても脳梗塞のリスクは高いので注意が必要です。発作性の場合、心電図を記録中にたまたま心房細動が出現しておらず診断できない、ということがあります。そのため、発作性心房細動を疑った患者さんにはホルター心電図 (通常24時間程度記録し続ける) や携帯心電計 (動悸を自覚した時に自分で心電図を記録できる)、あるいは植え込み型心電図モニター (皮下に簡単な手術で植え込んで、数ヶ月〜数年心電図を記録し続ける)といった検査をお勧めすることになります。ホルター心電図は体に装置を装着して生活する負担があるので何日間も計測することは難しい、携帯心電計は無症状の場合は適切な使用タイミングがわからない、植え込み型心電図モニターは上記2検査に比べると侵襲的ですが数ヶ月〜数年と長期の計測が可能、といった特徴がありますので、患者さんの状態や希望に応じて使い分けることになります。

最近では、とても小さくて装着の負担が少ないホルター心電図のや apple watch などのスマートウォッチで心房細動を検出するアプリの開発、さらには発作時でない心電図を AI で解析し心房細動を診断する試みが進んでいます。参考文献の論文では、スマートウォッチのアプリで心房細動が疑われた場合に本当に心房細動である確率は 8割程度、発作時でない心電図の AI 解析でも 8割程度の診断精度がある、とそれぞれ報告されています。まだ課題は残っていますが、スマートウォッチや AIで心房細動が診断できるようになる日もそう遠くないのかもしれませんね。

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