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スポーツと認知症

今日のポイント

  1. 一部のスポーツは認知症のリスクを上昇させてしまう

  2. 認知症リスクが上がる原因は慢性外傷性脳症と言われている

  3. 慢性外傷性脳症は頭部への衝撃が繰り返されることによって生じる

参考文献
[J Alzheimers Dis. 2017;60(4):1209-1221.]
[Front Neurol. 2019 Jul 3;10:713.]
[Metabolism. 2019 Nov;100S:153943.]

本文

一般的にスポーツは認知症や心血管病に対して良い影響があります。しかし、一部のスポーツが認知症のリスクを上昇させることが分かってきました。

"パンチドランカー"という言葉はご存知でしょうか。これはボクサーが頭部に強い衝撃を繰り返しうけることで生じる後遺症です。20世紀初頭にボクサーに認知症やパーキンソン症状が多くみられ、"punch drunk syndrome" と言われるようになったことがそもそものはじまりです。その後、ボクサーだけでなく繰り返し頭部へ衝撃を受けることのあるアスリートや戦闘環境下に晒されたことのある退役軍人にも同様の症状がみられることがあることから"慢性外傷性脳症"と言われるようになりました。現在では、一部のスポーツが認知症のリスクを上昇させる原因はこの慢性外傷性脳症であると考えられています。

慢性外傷性脳症では、脳細胞に病的タンパク質が蓄積していることが分かっており、アルツハイマー型認知症と一部共通している特徴があります。そして、この慢性外傷性脳症は軽度の衝撃であっても反復して頭部に衝撃が加わると発症しうるとされています。

慢性外傷性脳症が起きやすいスポーツとしてボクシングの他に、アメリカンフットボールとサッカーが挙げられています。サッカーは意外な気もしますが、一説にはヘディングを習慣的に行うことが慢性外傷性脳症の原因ではないかと言われています。スウェーデンのトップリーグに所属していたサッカー選手6007人を対象にした研究では、サッカー選手は将来アルツハイマー型認知症と診断されるリスクが高い (一般人と比べて 1.6倍) と報告されています。この研究ではあまりヘディングを行わないポジション=ゴールキーパーの認知症リスクは一般人と同等であったとも報告されています。

際立って強いものではなくとも、何度も衝撃にさらされることで将来的に慢性外傷性脳症が生じてくる可能性があります。スポーツは一般的には健康に良いのですが、頭部への衝撃には注意する必要がありますね。

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