「日本の教育・研究体系は崩壊しているのか?」


 現在の日本の教育の場で「七五三」と言われている数字がある。それは、高校生の7割、中学生の5割、小学生の3割が授業についていけないという事実だ。
 実際に、教育困難校と言われる高校では、掛け算の九九や漢字の書き取り、日本地理など小学校の学習から学びなおすことをしている。
 さらに大学では以下のようになっている。
 事実上全入状態の大学では総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜(推薦入試)、受験科目縮減などの軽量化が進み、大学では高校レベルの学力がない学生が増え、補習授業が常態化した。ベネッセコーポ―レーションの調査(16年)では大学生の35%が補修を経験している。
 ざっとこんな有様で、学問の場である大学では、国際的な地位が悲しいくらいに落ちている。

 日経新聞の4月2日の記事の抜粋だ。
 日本の研究力はこの20年間で世界4位から13位に転落した。
日本の研究では、引用数がトップ10%の論文数がこの20年間で伸びることがなかった。研究者人口や予算規模が日本より少ないドイツは4位、韓国は10位と大きく順位を上げている。この違いはどこから来るのか分析してみると日本は中堅以下の大学の研究活動が鈍っているのだ。20年前に国は国立大学を法人化させ、大学に配る運営交付金を1割以上減らしたのだ。その結果、地方の大学では研究環境が悪化して研究を進めなくなったという。逆にドイツは05年以降に基礎研究を手厚く支援した。公的研究機関が人件費などに充てる基盤的な経費は21年に5年比で2倍になった。22年の科学技術予算が00年比でドイツが3倍、韓国は約8倍だ。日本は1.3倍にとどまっている。ドイツと韓国は科学技術研究を国力の源泉と見なして重点投資した。
 日本では、運営交付金の減少の影響で無期雇用のポストが減って若手の割合は低下した。人事がよどむ講座制も存在するので、若手の柔軟な発想が封じられているのが今の日本の研究環境なのだろう。
 
「日本科学者会議は声明を発表」
政 府は研究機関である大学に対して税金を投下することを少なくして大学のシステムに介入しばかりしている。
大規模国立大学に運営方針を決める合議体を設置する国立大学法人改正案に、国立大学協会から見直しを求める声が強まっている。
 法案は、理事が7人以上で収入や収容定員が特に大きい法人を「特定国立大学法人」に指定し、新たな合議体「運営方針会議」の設置を義務付けるものだ。その会議は学外有識者を含む3人以上の委員と学長で構成し、中期計画や予算・決算などを決めるという。委員は文科相の承認を得て学長が任命することになる。すなわち、国の方針に大学が従い、大学の自治は完全になくなってしまう。国の意向に沿った研究や教育を強いられることが多くなることだろう。
 大学教授ら約3000人で構成する日本科学者会議は廃案を求める声明を出した。
 2004年から大学は法人化され、それ以降、大学に関わる国の予算は減り続けてきた。その結果、日本の大学の世界での位置の低さは眼を覆うばかりだ。

 これほど、世界の流れと逆行することばかりしている政府がある限り、日本のガラパゴス化は防ぐことはできない。今や「課題先進国」から、文字通りの「開発途上国」に一直線に向かっている。


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