「3年に亘ったコロナ対策の総括を(5)」

 もう既に忘れられた事実が数多く眠っている。それを再確認することも総括をするうえで重要な要素になる。
 
 当時、専門家会議の中で、コロナの検査数を絞ることが平然と語られていた。それは陽性になると入院させないといけない。そうなるとベッド数が足りなくなるから、という理由で。その委員は最後まで専門家会議にいたので、当時のコロナ対策のコンセンサスだったのだ。
 流行末期には家庭でできるコロナ抗原検査キットの話が出てきたが、そのネット販売が先送りになった。
 それは、店頭で薬剤師から直接、利用方法などの説明を受けなければ購入できない規制がある。薬局に薬剤師がいない時購入者が理解した旨を署名することになっているという規制があったからだ。
 さらに医師会側にはコロナ以外の検査・治療薬に解禁が波及しかねないとの警戒感があるとされる。
 2021年、英オックスフォード大の研究者らが運営するアワー・ワールド・イン・データによると、9月の1日あたりの検査数(7日移動平均)は人口1000人あたりオーストリアは40件前後、英国は15件前後、シンガポールは10件前後で推移する。日本は0.8件ほどにとどまる。
シンガポールは各家庭に検査キットを無料配布するなど検査に力を入れていた。
 いかに日本のコロナ対策が世界と異質な状況だったかを物語る事実である。
 
 当時は、医師会などへの優遇措置はコロナ対策でも続いていた。厚労省は重症患者向けの病床を新たに確保した病院に対し、一床当たり1950万円の補助をしたが、実際に受け入れたかどうか明確でない。他の病気の患者がコロナ病床を埋めていたり、医療スタッフが確保できないと受け入れに消極的な病院があったとされる。このあたりの検証も明確になされなければならないと思う。
 これなどは個別に洗い出すことも可能なのだから、実際に補助金が適正に使われていなければ、返還させなければならない事案だと思う。
 会計検査院が部分的に調査をしているが、国として、総括作業を厳格にする中で点検をしなければならない。この期間中の医療法人の収入は過大に伸びていたのだ。
 
 以上、5回にわたって、3年続いた日本のコロナ対策の気になるところを上げてみた。国による総括作業を望む。しかし、この国は大きな事件が起こっても総括作業はしない。そして、仮に報告書の形になってもそれで終わり。それを活かす施策を進めることはない。だから、私の訴えはむなしい行為なのだが、日本人の中に、総括作業が必要だと発言している人がいたことを示しているだけだ。

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