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ドキュメンタリー映画「The Ones Left Behind」と日本のひとり親政策:そして、養育費の新指針。

先週、私の母校であるハーバード・ケネディスクールの現役生の企画で、「The Ones Left Behind: The plight of single moms in Japan」という日本のシングルマザーをテーマとした映画に関するパネル・ディスカッションにオンライン登壇しました。

映画は日本に15年程住むオーストラリア人のRionne McAvoyさんのドキュメンタリー。力強いシングルマザー達の生き様と、置かれている状況の課題を描いた作品です。

ケネディ・スクールの大学院生達が映画を視聴して、その後にMcAvoy監督、南三陸の女性支援NPOウィメンズアイの五十嵐光さんと当方でパネル・ディスカッション。参加者からも沢山ご質問を頂き活発な議論となりました。

今回の映画のテーマ、「ひとり親」ではなく「シングルマザー」。
なぜ、母親に焦点を当てたのか?父親については?
日本の状況に初めて触れる参加者からはそんな質問もありました。

Rionneさんも説明していましたが、日本ではひとり親家庭の相対的貧困率は50%を超え、とりわけ女性のひとり親の貧困率が高くなっています。世界と比較しても高い8割という就業率にも関わらず、即ち、しっかり働いているのに厳しい状態に置かれている家庭が多く、父子家庭496万円に対して母子家庭の平均年収は236万円*となっています。

映画でも描かれていることを含めて、議論からは近因・遠因として以下のようなことが浮かび上がります。

  • 父親の関与の課題:養育費不払い問題、共同親権・監護問題

  • 労働市場の歪み:労働時間の柔軟性と非正規雇用の問題、男女の賃金格差

  • 保育の問題:保育園の柔軟性/ベビーシッター等の活用の課題

  • 文化の課題:母親が子育てを背負わなければならないという考え・生活保護に対するスティグマ・ひとり親への偏見・自己責任論等・支援の声の上げにくさ等

  • サポート体制:行政の申請手続きの煩雑さ、窓口職員の対応、昔のような近隣コミュニティ等のサポートの無さ

私自身、日本の政策の経緯や観点を紹介しつつ、自分自身の経験としても、以下の話をさせていただきました。

  • 家族のサポートが得られない海外に小さな子どもと二人で留学した時、(経済的には余裕があったし、仕事ではなく自ら臨んだ学業という環境ではあったものの)何か予想外のことが起きた時にバッファーが無い、時間の自由がない、非常に苦しい状況を自分自身体験した。

  • コロナ禍の保育園休園時に取った緊急アンケートの結果からも、子どもを預ける環境次第でひとり親の就労が脅かされる、特に非正規雇用等はリスクの高い状況に置かれ経済的打撃を受けやすいことを痛感した。

世界第三位の経済大国を誇っているにも関わらず、明日の食事に悩む子ども達がいる、大学進学率が低い等の状況に置かれいることは、多くの海外の方に衝撃を持って受け止められますし、日本人として、忸怩たる思いです。

そして、ちょうど昨日、上記の課題の解決の一つとなる政府の方針が小倉大臣の記者会見で伝えられました。

今まで、3割以下と先進国と比較してかなり低い比率でしか受け取れていなかった子どもの養育費について、2031年までに、養育費を受け取る母子世帯の割合を40%とする目標を発表したものです。養育費の取り決めをしている母子世帯の目標は70%とのこと。

正直、40%はまだまだ低いかもしれません。養育費は法執行の問題でもあり、スェーデン等のように政府が立て替えして回収することも考えられます。子どもの数が少なくなっている中で、負の連鎖を断ち切るためにもとても重要な政策で、一歩を踏み出したことに期待を寄せています。

私としては、デジタル政策に近年関わってきたこともあり、絶対に取り組みたいのは、申請主義(忙しい当事者が制度を探して、窓口で書類を書いて申し込む)のではなく、きちんとデータを元に、困っている方に行政からアプローチし、負担の少ないデジタルで手続きし支援する体制の構築です。

そして、遠因の中の根本原因の一つに、この課題が置き去りにされてきたのは女性議員が少なく優先順位が上がりにくかったこともあるのではないかと思います。未婚のひとり親の寡婦控除の税制改定では女性議員が連帯して解決に尽力していたことが思い起こされます。もちろん、今回の小倉大臣の英断や長年取り組んでこられた塩崎恭久元厚労大臣含めて、共感し、動いてくださる男性の議員の方の力も何より必要な分野だと思います。

まだまだ課題は山積していますが、一歩前に。

The Ones Left Behindの映画は、横浜国際映画祭で5月5日16:50から上映されるようです。ご興味ある方は是非見てみてください。

現地時間の夕方で日本時間だと朝早かったオンライン登壇でした!

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