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障がいを理由に、幸せが制限されることのない場所

 2024年5月7日、神奈川県鎌倉市大船の一角で、障がい者グループホームをオープンした。その名も「L-BASE(エルベース)」。Living(住まい)のBASE(基地)という意味を込めてつけた名前だ。「共同生活援助」という福祉制度を活用した事業で、いわゆる「援助付きの住まい」という位置付けで、「障がいのある方の地域での自立生活を支援する場」である。

 障がいのあるお子さんを持つ保護者の方の多くが、「親なき後」に対する不安を抱えている。かつて、障がい者の入所施設はそういった親の不安を払拭するために設立されたのだが、やがてそこで行われる支援の質の劣悪さが問題視され、現在は大型施設への入所支援ではなく、地域での小ユニットでの自立生活が推奨されるようになった。また、この間に、津久井やまゆり事件も起こり、ますますその流れに拍車がかかった。このような施設入所支援の行き詰まりは、当事者や親の不安を解消したのか?答えはNOである。むしろ、従来施設入所支援を受けてきた、いわゆる「重度」障がいのある方は、地域で生活する場を得ることが難しいケースが多く、より一層「親なき後」の心配は増長しているのが現状ではないだろうか。

 「L-BASE(エルベース)」は、それらを全て解決するものではないかもしれない。しかし、私たちは「親なき後、自分たちの意思を継いで、我が子を託したい。そんな保護者の期待に応える場所でありたい」と思う。障がい者支援のゴールは、就職することでも、一人暮らしをすることでもなく、「障がいを理由に、その人なりの幸せを制限されることがない社会を実現すること」と、私は考えている。

 私にはかつて脳出血を起こした過去があり、その際母親から「ごめんね、お母さんがこんな身体に産んじゃったから。ごめんね」と涙ながらに言われたことがある。「そんなことない」「そんなこと言わないで」と、心の底からそう思った。当事者は決して、保護者のせいとは考えていないし、保護者にも悲しい顔をしてほしくないし、保護者自身にも幸せでいてほしいと思っているに違いない。私は過去の経験から、そんな確信を得ている。

 だからこそ、保護者に対して「親なき後、自分たちの意思を継いでほしい、我が子を託したい」そんな保護者の期待に応える場所でありたいし、当事者に対して「障がいを理由に、その人なりの幸せが制限されることのない場所」をつくりたいと考えている。

 高校生の頃、脳出血を起こして手術までした私に対して、なぜか家族は大学進学の機会をくれたし、上京も許してくれた。治療のため3学期1回も学校に行っていないのに、所属するバスケ部の顧問は体育の成績を5でつけてくれた。今もなんだかんだありながらも、こうして自分も支援の仕事に従事することができる環境まで得ることができた。

 脳出血を発症してからもう20年以上が経った。
 感謝、感謝、感謝。

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