星の王子様 読書記録 第17節 蛇との出会い
2005年に星の王子様の著作権は切れました。ここは私のフランス語学習の場であるとともに、文学を研究する場です。
才気をひけらかしたいとき、少し嘘をつくことがある。僕は点灯夫のことについてあなたに話をした時、あまり正直ではなかった。僕は、知らない人たちに対して、私たちの惑星について誤った理解を与えてしまう恐れがある。人間は、地球上では、そんなに場所を占めているわけではない。地球に住み着く20億の住民が直立して、討論をする時のように、ちょっと間隔を詰めると、20マイル平方の公共スペースにたやすく収まる。太平洋の、もっと小さい小島の上で、人間を積み重ねることができる。
🌈単語
✅aisément
♢副詞
①たやすく、容易に
②裕福に、安楽に
✅esprit
♢男性名詞
①精神、心、思惟
②知性、知力、才能
③性格、気質、気風
④人間
⑤才気、機知、エスプリ
♢熟語
faire de l'esprit
才気をひけらかす
✅entasser
♢他動詞
①・・・を積み重ねる、山積みにする
②<~qn/qc+場所>・・・を・・・に詰め込む
③[金]をため込む
④[行為など]を繰り返す、重ねる
✅fausse
♢形容詞 fauxの女性形
①間違った、誤った
②偽物の、偽造の;模造の
③真実を偽った、虚偽の;詐称による
④見せかけの;うわべだけの
⑤根拠のない;あらぬ
⑥不実な、腹黒い、人を欺く
⑦不自然な、無理のある
✅honnêtes
♢形容詞 honnêteの複数形
①正直な、誠実な;潔癖な
②正当な、立派な、まじめな;良心的な;真正な
✅humanité
①(l'humanité)人類、人間
②人間味、人情、思いやり
③人間性
✅mentir
♢自動詞
①うそをつく
②[物事が]真実にたがう、偽る
✅meeting
♢男性名詞
①(政党、労働組合などが催す大規模な)討論集会、政治集会
②(スポーツの)大会、競技会
✅moindre
♢形容詞
1⃣petitの優等比較級
①より小さい、少ない、劣った、低い
2⃣(定冠詞、所有形容詞とともにpetitの最上級を作る)
✅risque
♢男性名詞
①(予想される)危険、危険性;脅威、おそれ
②危険と引き換えの利益;一か八かの勝負
♢risquerの第1人称単数形 他動詞
①・・・を危険にさらす
②・・・の危険を冒す
♢熟語
risquer de + inf
・・・のおそれがある、しかねない
✅peupler
♢他動詞
①<~qc(de qn/qc)>[場所]に(・・・を)住まわせる、移住させる、増やす;植林する
②[集団が]・・・に住み着く、占める
✅îlot
♢男性名詞
①小島
②(孤立した)小さな群れ;1区画;少人数グループ
🌈訳
大人たちは、もちろん、君たちを信じない。彼らは、たくさんの場所を持っていると考えている。バオバブのように、自分達を重要なものと思い描いている。あなたは、計算をするように彼らに勧める。彼らは数字を愛する。それが彼らを悦ばせる。でもそんな退屈な仕事に君たちの時間を使わないでください。無駄なことです。僕を信頼してください。
🌈単語
✅confiance
♢女性名詞
①信頼感、信用
②自信;確信、安心感
③(世情などへの)大衆の信頼、安心感
♢熟語
avoir ~ en qn/qc
~を信頼している
✅pensum
♢男性名詞
①退屈な仕事
王子様は、地球に初めて降り立ち、誰もいないことに大変驚いた。
砂の中で、月の色をした輪が、動いたとき、惑星を間違えたのかと思ってすでに心配していた。
<こんばんわ。>王子様は、念のために挨拶をした。
<こんばんわ。>蛇は答えた。
<僕はどの惑星に降り立ったんだろう?>王子様は尋ねた
<地球だよ。アフリカさ。>蛇は答えた
<ああ!だから地球には誰もいないの?>
🌈単語
✅anneau
♢男性名詞
①輪、環、リング;リング状のもの
②指環
✅lune
♢女性名詞
①月;月光
✅remua
♢remuerの単純過去形 他動詞
①・・・を移動させる
②[体の一部を]動かす
③・・・をかき混ぜる、かき回す
♢自動詞
①動く、身動きする;揺れる、ぐらつく
②行動に移る、動き出す
🌈訳
ここは砂漠さ。砂漠には誰もいないよ。地球は大きいんだ。
蛇は言った。
王子様は石の上に腰を掛けて、空に眼をやった。
もし、誰もがいつか自分達の星に戻ることができるように、星々が輝いているのかどうか、考えることがある。僕の星を見てよ。
それは、僕たちのちょうど真上にあるんだ。でも、なんて遠いんだろう。
ーー美しいね。蛇は言った。ここに何をきたんだい?
ーー僕は一本の花とうまくいかなくなってね。
ーーああ!蛇は言った。
🌈単語
✅éclairées
♢éclairées éclairerの過去分詞 女性形 複数形
①照明された、採光のよい
②教養のある、見識のある;良識のある、穏健な
③[表情が]晴れやかな
✅sienne
♢代名詞 sienの女性形
そして彼らは口をつぐんだ。
人はどこにいるの? やっと王子様は繰り返した。砂漠では、人はちょっとだけ孤独だね。
人は、自分ちでも孤独さ。 蛇は言った。
王子様は長い間蛇をじっと見詰めた。
君は変な動物だね。指みたいに細くて。長い時間の後、彼は蛇に言った。
でも、僕は王様の指よりもっと強いんだ。蛇は言った。
🌈単語
✅doigt
♢男性名詞
①指
②人差し指
③手袋の指
④指の厚さ、指幅のあつさ;ごくわずかの距離
✅turent taireの第3人称複数形単純過去
♢代動名詞
①黙る、口をつぐむ;沈黙を守る
②聞こえなくなる、静まる
✅mince
♢形容詞
①薄い
②細い
③(名詞の後で)すらりとした、ほっそりした
✅puissant
♢形容詞
①権力[勢力]のある;軍事力に優れた
②強い、力強い;[モーター、機械などが]強力な、馬力のある
③<効果、影響力が>きょうりょくな;説得力のある
🌈訳
王子様はにっこりと笑った。
<君はそんなに強くないね。人の手足ほどもない。
君は旅をすることもできないね。
ーー僕は船よりも遠くに君を運ぶことができるよ。蛇は答えた。彼は、王子様の踝の周りに、金のブレスレットのように巻き付いた。
<
🌈単語
✅cheville
♢女性名詞
①踝
②釘、ボルト、ピン、楔、栓
✅enroula
♢他動詞
①<~qc(sur, autour de + qc)>・・・を(・・・に)巻く、巻き付ける
②<~qn/qc (dans, de + qc)>・・・を(・・・で)くるむ、包む
✅sourire
♢自動詞
①ほほえみを浮かべる、にっこり笑う
✅patte
♢女性名詞
①(動物の)脚、肢
②俗語(人間の)脚、足
③俗語(人間の)手
⑦[昆虫]脚、肢
✅touche
♢女性名詞
①(機械、器具の)ボタン、スイッチ
②(絵画の)タッチ、筆触
<君はかわいそうになってくるよ。とっても弱くて、花崗岩の地球の上にいる。僕はいつか、君を助ける事が出来る。もし君が、自分の惑星を懐かしんでいるのなら。ぼく、出来るんだ。
ーーああ。僕はとっても良く理解したよ。王子様は言った。でも、どうして君はなぞかけで話をするの?
ーー僕が謎の全てを解くよ
そして彼らは口をつぐんだ。
🌈文学 解読
前半はサンテグジュペリのいつも通りの話。数字に喜ぶ大人たちの相手をするな、といったことである。さて、ノートではスキ数とかフォロワー数とかを気にする人が多い。でも、そんなの気にしなくていい、ということに気が付く人、頭がいいと、私個人は思います。思いますが!気になるものはきになりますねw
でも、ずっと上りっぱなしで行く人なんていません。人生と同じでなんにでも浮き沈みはありますね。
後半は、王子様が地球へ降り立ち、蛇と出会う。
この蛇とのやり取りは一体何を意味するのだろうか?
この蛇は、猛毒を持つ蛇である。その気になったらあなたのことを殺せる、と暗に伝えてきます。
そして、最後は何やらかっこいい一言。
「僕が全ての謎を解くよ。」というのです。
この意味するところは、人生というのは謎ばかりだということです。逆に言えば、死ねば、謎は一切なくなると言うことを意味しているのです。したがって、蛇は人を殺すことで、その人が抱えている謎一切を解くことができる、と言っているのです。
「生」自体、「虚」なのです。私たちは、虚構の生き物なのですね。人間は「虚」を追いかける生き物です。だから、「生」に執着することがあるわけです。
刑事ドラマが面白いと感じる理由は、人が死ぬからではありません。どうしてその殺人が起こったのか?という「謎」に人の興味がひきつけられるからです。謎は、すなわち「虚」です。「虚」は「実」を覆い隠しています。
私たちは、「虚」を通して物事を見てしまう生き物でもあります。つまり、帽子の中身が見えない大人なんですね。極端なのは、すぐに、ハイこれ事故!と決める警察官だったりします。
「実」を見るためには、「虚」を一つ一つ消していかなくてはいけません。つまり、謎を解いていかなくてはいけません。
どうして、蛇はいちいちなぞかけをしてくるのか。
私たちは、話をするとき言いたくないことは遠回しに言うことがある。
日本人の中には、その意図にすぐに気づける人と、その言葉をそのまま受け取ってしまう人がいる。
この蛇は、相手を傷つけないようにしているわけだ。お前を殺すことできるよ。殺してやろうか?とかダイレクトに言わない。「船よりも遠くへお前を運ぶことができる」、とか、「王様の指より強い」、とか、「王子様が星へ帰りたければ、手伝ってやれるよ。」とか、ダイレクトな言葉を避けて、遠回しな表現ばかりを使ってくる。
この遠回し表現も、言ってしまえば謎であり、「虚」の一つなのである。こういってくれた方が、胸に突き刺さる具合が柔らかくて済む。人が「虚」を求める理由は、自分達がその中にいることで、居心地がいいからである。
今まで出会った大人たちが、「虚」に囚われていたのも、その居心地の良さゆえであった。
虚をはぎ取り、真実を明らかにすることは、人の気分を害するのだ。ひょっとすると、今までこの物語に登場した大人の誰かの特徴と自分自身が当てはまっていて、ぎょっとした人もいるかもしれない。
文学は人生の抽象であるから、いろいろな人に当てはまる共通項を抜き出してくる。だから、この本で語られていることが、あなたたちにあてはまっていても、それは何ら不思議なことはない。しかし、直接それを言うことは、人にとってどぎつい内容も多い。
そういう意味でいえば、「虚」を取り払って「実」を解説しようとする試みを行っている私の記事は、多くの人にとって、どぎつい内容かもしれない。私は「蛇」の役割をしているのかもしれない。この蛇のように優しくはなく、エデンの園にいて、イヴを誘惑した「蛇」のように、知恵の実を食べよと諭してくるのだ。
楽園にいたいものは、余計な知恵を付けぬ方がよい、ということでもあるだろう。人間としてこの世界に産まれるのは辛いことだ。
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