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【1.水曜映画れびゅ~】"The Big Short"~心にグサッと刺さったあるセリフ~

The Big Shortマネーショート 華麗なる大逆転は、2015年に公開されたアメリカの映画。

『バイス』(2018)を手掛けたことでも知られるアダム・マッケイが監督・脚本を務め、2016年のアカデミー賞で脚色賞を受賞した作品でもあります。

作品情報

2008年の数年前からサブプライムローンの欠陥に気づき、リーマンショックを予見したとされる実在したトレーダーたちを描く物語。作中には3つのトレーダー集団が登場し、それぞれの視点でアメリカの住宅ローンバブルとその崩壊が描かれる。

現在、Amazonプライム等で配信されています。


※今回の記事は映画の紹介というより映画感想がメインですので、観たことのない方は、ここからの記事を読まれる前にご覧になられることをオススメします。


心にグサッと刺さったあるセリフ 

本作において、私の心に非常に刺さったセリフがあります。

それは、ブラット・ピット演じるベン・リカードのこのセリフ。

"If we’re right, people lose homes, people lose jobs, people lose retirement savings, people lose pensions."
「俺たちが正しいのであれば、国民は家や仕事や老後資金を失う。年金も
だ」

"It reduces people to numbers. Here’s a number. Every 1% unemployment goes up, 40,000 people die. Did you know that ?"
「これから人間が数値化される。失業率が1%上昇、4万人死亡という風に。それをわかっているのか?」

『マネーショート 華麗なる大逆転』
1:21:00あたりより

このセリフの背景を簡単に説明します。

まず、このセリフを放ったベンは元凄腕のトレーダー。

作中のはじめではほぼ引退状態として登場しますが、サブプライムローンの欠陥に気付いた若手トレーダーのチャーリージェイミーにある話を持ち掛けられます。

その話とは、その欠陥を利用して異様なまでに盛り上がる住宅バブル・・・・・がはじける前に儲けをごっそりといただこうというもの。

ベンはうまい話だと納得してチャーリーとジェイミーを手伝い始めます。

そして、トントン拍子に事が運んでいきます。

すると、大金持ちになれることを確信したチャーリーとジェイミーはベンの目の前で陽気にはしゃぎだします。

しかしその様子を見たベンは急に不機嫌となり、二人に対して上のセリフを言い放ちました。

襲い来る脅威に対する無力感

「俺たちが正しいのであれば、国民は家や仕事や老後資金を失う。年金もだ」

ベンは苦しい葛藤の中にいました。

彼は金融崩壊が迫まっていることを確信していましたが、現状で彼ができることは目の前の青年に金を稼がせてやるだけ…。

そんな自身の無力感へのもどかしさを、このセリフから感じます。

その感覚というのは、今年のコロナ禍を過ごした私自身と重なり合う部分があります。

もちろん私はベンのような輝かしい経歴もないですし、彼ほど先を見通せていないと思います。

ただこの度のコロナが流行り始めてから今に至るまでの節々で見えてくる日本ないし世界の社会的混乱や不安に対し、自分自身が「何もできない」「何もしようがない」という無力感に対して常にもどかしさを抱いてきました。

それで勝手ながら、ベンと通じるものを感じてしまいました。

人間が数値化される

そしてその次に続くこのセリフ。

「これから人間が数値化される。失業率が1%上昇、4万人死亡という風に。それをわかっているのか?」

この「人間が数値化」という言葉が、私の心にグサッ刺さりました。

特にコロナ禍ではベンが例として挙げている失業率死亡者に加え、感染者数重症者数といった数値化された人間が常に目につくようになりました。

それらは私たちの目にはただの数字としてしか映りません。

しかし実際にはその数字一つ一つに一人一人の人間がいます。

そんな理屈は言われなくても理解はしているでしょう…

もしくは、言われたくない・理解したくないことではないでしょうか?

・・・

そんな数字が感染者・重症者・死亡者数という名前を冠して、今年一年毎日のように報道されてきました。

正直いえば、時に一喜一憂することはあっても、お亡くなりになられた方に一人ひとりに思いをせるほど私は立派ではありませんでした。

でも、ふとした時にこのセリフのことを思い出します…


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次回の記事では、大ヒット作"The Dark Knight"ダークナイト(2008)について語っています。