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ヘミングウェイの移動祝祭日と潜在意識

【ヘミングウェイは潜在意識を活用してノーベル文学賞を取った】

あゝ、もうダメだ。と思ったとき私は何をするかというと、ヘミングウェイを読む。カンフル剤といったところ。

彼の作品にはコミカルさというものが(ほぼ)ないのだけれど、なんというか、屈せず臆せず素で生きているのが文章に表れていて、読みながら元気になれるというより、読んでいるうちに「また頑張りますか!」と私を通常モードにいつの間にか戻してくれる不思議さがあるんです。

彼の遺作「移動祝祭日」。カンフル剤として私には抜群の効果。きっと、彼の意識がそうさせてくれるのだと思われます。

だって、本の中に「明日は一生懸命に働かなくては。仕事はほとんどいかなる病も直してくれる、と私は当時信じていたし、いまも信じている。」って書いてあるんですもの。(どうして治してくれるではなく直してくれると訳したのだろう、といつも思う)

ところで、ヘミングウェイが「老人と海」でノーベル文学賞を取ったのは誰しもが知っていることですが、潜在意識を活用して小説を書いていたのを知る人は少ないことでしょう。

彼は移動祝祭日の中でこう言っているんです。
「いったん書くのをやめたら翌日また書きはじめるときまでその作品のことは考えないほうがいい、ということに思い至ったのも、その部屋で修業を重ねているときだった。そうすることで、目下の仕事のことは自分の潜在意識に受け継いでもらい、私はその間、他の人たちの話に耳を傾けたり、森羅万象の観察に努めたりすることができるだろう。そして目下の仕事のことを考える余地がないように読書をして、しばし仕事から手を引くのだ。いい仕事をして、それも、不断の努力に加えて幸運をも必要とするような仕事をやりとげて、階段を降りていく気分は格別だった。」

書くのをやめたら次の日の書きはじめまで自分の潜在意識に仕事をさせ、その間は書く素に必要な事柄の収集的なことをおこなうことによって、幸運を必要とする仕事もやり遂げることができる、という意味でしょう。

潜在意識を活用してノーベル文学賞を取った人の作品を読むことで、自分の潜在意識を活性化していくことも、潜在意識を良質化する方法、ってことですね。

私が持っている移動祝祭日の文庫本。寝ながら読んだり、クッキー食べながら読んだり、お昼寝しながら枕の下に入っちゃったりで、ぐっちゃぐちゃになっているんです。破けているところもあるの。買えば誰しもが手にできる本。でも、何度も私の心を立て直してくれた親友なんです。

山下純子

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