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グランドフィナーレにふさわしいジブリ作品「君たちはどう生きるか」公開に寄せて

2023年7月14日より劇場公開がスタートしたスタジオジブリ最新作

「君たちはどう生きるか」

事前情報が1枚のポスタービジュアルのみで宣伝がないため唐突に公開された感があった。公開されてから聞こえてくる声は賛否両論で「感動した」「もう一度観たい」等の肯定派の意見と「何を言っているのか分からなくて退屈」「話の内容が難解過ぎる」という否定派がいる。投稿主は大変満足して映画鑑賞が出来たので楽しい思い出として感想を綴りたい。

世界観を説明するために多少のネタバレがあるかもしれません。
感想はあくまで個人の見解です。

この映画を観る前に参考にした本はやはりコチラ ↓
「漫画 君たちはどう生きるか」

宮﨑駿監督がこの小説に着想を得て映画制作をされた事は同書のタイトルから分かる。1937年、吉野源三郎氏による著作として発行された小説であり2017年には羽賀翔一氏により漫画化されて再ブレイク。本書は「児童文学の形をとった教養教育の古典」(ウィキペディアより抜粋)と評される作品で倫理的なメッセージが土台にある。

眞人(まひと)とコペル君は共通点が多い利発な少年

主人公コペル君と叔父さん

ジブリ作品の主人公の牧眞人(まき まひと)と吉野作品の主人公コペル君は境遇が似ている。裕福な家庭に生まれ、不自由ない生活を送っている利発な少年。それぞれ片親が居ない。思春期の入り口付近に差し掛かった頃に親を亡くしているため少年らしさの中に「自分がしっかりしなくては」という自律の精神が垣間見える。亡くした親がコペル君は父であるのに対して眞人は母親であるのが異なる点だ。加えて真人は父親が既に継母を迎えており亡き母への思慕が宙に浮いてしまう寂しさを併せ持つ。眞人にはコペル君のように優しく寄り添ってくれる叔父さんもいない。コペル君にとって元編集者である叔父さんの存在が何より大きい。博識で心の機微が分かる叔父さんは世の中の仕組みを偉人コペルニクスの業績やナポレオン法典などの具体例と共に教えてくれる。決して押し付けがましくなく、思春期に向かう少年を子供扱いすることなく「自分軸」で生きていくことから「他人軸」を知り社会との繋がりを意識する気づきを与えてくれる。眞人は「叔父さん」の代わりに謎の青い鷺を初めとするジブリ提供の不思議な生物たち、牧家で働くお手伝いさんと「異世界での体験」を経て自分を取り巻く人々の思いを知る。この異世界での体験がとてもジブリらしく夢の中を泳いでいるような幻想的な空間だった。

自分を俯瞰で見るコペル君

宮崎駿監督の心象風景!?
ジブリオールスターズを探せの旅

眞人が不思議な生物と共に「異世界」への旅に出る。
その旅は「となりのトトロ」のようにトンネルを抜けると異世界が存在しており「ハウルの動く城」で観たような瀟洒な西洋風の建築が設えられて「借り暮らしのアリエッティ」さながらの可愛らしいお籠り感がある。

ココはナウシカへのオマージュかな?
ラピュタはやっぱり外せない名作だものね
なんか、この登場人物「もののけ姫」に出てきたエボシ様みたい

長年ジブリ作品から沢山のワクワクをもらった身としてはこの発見が楽しい。きっと劇場に足を運ぶ人はジブリの過去作品を観ている人たちだろうからジブリオールスターズが散りばめられている今作品は過去作ダイジェスト版として鑑賞できる。色々な作品を大きな鍋に入れてぐ〜るぐる!ってかき回したみたいに登場するシーンの数々。

そこに秩序はいらない

心象風景ってこんな感じじゃない?

夢の中って急に脈絡なく場面が変わる

主人公の眞人と共に一緒に旅を楽しもう

それくらい映像美が素晴しく、「これぞジブリ」の画力だった
戦禍の炎から始まる冒頭、火の表現に圧倒されて気合い十分の画で引き込まれた。人物の所作一つ一つの細かさ、背景の美しさに目が離せない。

声優陣が超豪華、主題歌は米津玄師が担当

何分にも事前情報がないので、豪華俳優陣がどのキャラクターを演じているかが全容が分からず終いだった。そのため映画に集中出来たとも言える。木村拓哉、木村佳乃、菅田将暉は「多分この役だな」と映画鑑賞中に気づいたものの

あいみょん
柴咲コウ
大竹しのぶ
竹下景子
風吹ジュン
小林薫
滝沢カレン

後から知っても役の検討がつかない。エンドロールには俳優陣の名前が出るばかりで役名が載っていなかった。この布陣で大河ドラマ作れそうな程に豪華な顔(声)ぶれ。
そして主題歌は米津玄師が歌う

「地球儀」

宮﨑監督からオファーを受けて4年の歳月を経ての解禁。
宮﨑作品を愛する気持ちが詰まった歌詞。

手が触れ合う喜びも
手放した悲しみも
飽き足らず描いていく
地球儀を回すように

地球儀 米津玄師

曲の結びの歌詞が作品に向き合う宮﨑監督のことを示しているようでジンとくる。地球儀のように作品に終わりがこない、こないで欲しい。
「飽き足らず描いて」欲しい。
宮﨑監督には引退だなんて言って欲しくない。

それぐらいパッションが詰まった作品。

宮﨑駿監督、今回も素敵な作品をありがとうございます。


感謝を込めて

余談:鈴木敏夫プロデューサーの戦略で「宣伝しないのが宣伝」となっている今作品。宮﨑監督が「宣伝しないで大丈夫かな…」と弱気になっているエピソードが好きです。

Junko Summer

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