坂本旬

法政大学キャリアデザイン学部教授 https://www.facebook.com/j…

最近の記事

生成AIに関するユネスコの調査:ジェンダー・ステレオタイプに関する憂慮すべき証拠を発見

ユネスコは2024年3月7日、「組織的バイアスへの挑戦:大規模言語モデルにおける女性へのバイアスに関する調査」と題する報告書を発表しました。この記事はその内容を仮訳したものです。 要旨 AIは、かつてないスピードで産業界全体に導入されつつある。AIはその恩恵と同時に、社会に深刻なリスクをもたらしており、こうしたリスクを軽減するための規範的枠組みの導入は世界的な急務となっている。AIの倫理に関するユネスコ勧告は、「AI関係者は、そのようなシステムの公平性を確保するために、A

    • ユネスコのデジタル教育理論と政策

      この記事は2024年1月20日に開催されたユネスコウィーク2024関連企画「ユネスコスクール全国大会」第5分科会「GIGA×ESD:デジタル時代のユネスコスクールを考える」の発表用に作成したものです。(ただし、同じでものではありません。) 登壇者は以下のとおりでした。(報告順) 大安喜一(ACCU) 武藤久慶(文部科学省) 坂本旬(法政大学) 米田謙三(早稲田摂陵高等学校) 酒井美佐緒(福岡市立百道浜小学校) 吉岡達也(聖ヨゼフ学園 日星高等学校) GIGA×ESDとは

      • ユネスコ:Ed-Techの悲劇?(2023)

        ユネスコは「グローバル教育モニタリングレポート:教育におけるテクノロジー」(2023)に引き続いてレポート「Ed-Techの悲劇? COVID-19期における教育テクノロジーと学校閉鎖」(2023)を公表しました。 このレポートはCOVID-19パンデミック下で進められたデジタル教育改革を批判的に検証したものです。2023年12月にOECDはPISA2022のレポートを公開しましたが、パンデミックを経て世界的に学力が低下したことを「崩壊(disruption )」と表現しま

        • 情報モラルと情報活用能力の新たなフレームワークについて〜デジタル・シティズンシップの観点から〜

          2023年12月12日、文科省による「情報活用能力に関する意見交流会」にて、デジタル・シティズンシップの観点から情報モラルおよび情報活用能力に関する見解を報告しました。その内容を紹介します。 デジタル・シティズンシップ教育をめぐる状況 デジタル・シティズンシップ教育をめぐる状況として、4つのことをお話しします。1つ目は総務省のICTリテラシー政策の動向。2つ目は世界のデジタル・シティズンシップ政策の動向。3つ目は偽情報に対する「横読み」について。そして最後にデジタル・シテ

        生成AIに関するユネスコの調査:ジェンダー・ステレオタイプに関する憂慮すべき証拠を発見

          ユネスコ:アジア太平洋地域におけるデジタル・シティズンシップ(2023)

          このノートはユネスコが2023年秋に発表した「アジア太平洋地域におけるデジタル・シティズンシップ:教職員のイノベーションと児童生徒のレジリエンスのためのコンピテンシーの構築」の日本語訳です。付録は一部のみの翻訳となっています。また、参考文献は原文をご参照ください。 教職員に力を与え、デジタル市民を育成する 児童生徒のデジタル・シティズンシップ・コンピテンシーを育成するためには、デジタル技術を備えた有能な教職員陣が不可欠である。このユネスコの報告書は、アジア太平洋地域の15

          ユネスコ:アジア太平洋地域におけるデジタル・シティズンシップ(2023)

          EI報告書「意図せざるAIと教育の結果」要旨(2023)

          教育インターナショナルが2023年10月18 日に発表した報告書「意図せざるAIと教育の結果」の要旨の翻訳です。この報告書の著者はUCLAのWayne Holmes氏です。内容の詳細は原文をご覧ください。以下、原文翻訳です。わかりやすいようにサブタイトルをつけましたが、原文にはありません。 報告書の趣旨 ここ数カ月で明らかになったように、人工知能(AI)は私たちの日常生活のさまざまな側面にますます影響を及ぼしている。これは教育(AI&ED)においても同様である。しかし、A

          EI報告書「意図せざるAIと教育の結果」要旨(2023)

          ユネスコ「教育・研究における生成AIガイダンス」(2023)

          ユネスコが2023年9月に公開した「教育・研究における生成AIガイダンス」の抜粋仮翻訳です。前書きや謝辞、表、リファレンスなどは訳出していないので、原文をご参照ください。以下、原文の翻訳です。 裏表紙 本ガイダンスは、生成人工知能(生成AI)が、教員、学習者、研究者に真に利益をもたらし、力を与えるツールとなるよう、適切な規制、政策、人材育成プログラムの立案を支援することを目的としている。本書は、生成AIが使用するAI技術を説明し、特にオープンソースライセンスのもとで一般に

          ユネスコ「教育・研究における生成AIガイダンス」(2023)

          AI倫理に関するユネスコ勧告(2021)

          はじめに 2021年9月23日にユネスコが採択した「AI倫理に関するユネスコ勧告:重要な事実」のほぼ全文仮訳を掲載します。 下の文章はユスネコのサイトに掲載されている、ユネスコ事務局長補ラモス氏によるAI倫理についての解説です。そのあと、勧告本文を掲載しています。 ----- ユネスコは、そのユニークな使命のもと、数十年にわたり、科学技術が倫理的なガードレールをしっかり守って発展するよう、国際的な取り組みを主導してきた。遺伝子研究であれ、気候変動であれ、科学研究であれ、

          AI倫理に関するユネスコ勧告(2021)

          国連「私たちの共通アジェンダ政策要綱5 グローバルデジタル協定:すべての人に開かれた、自由で安全なデジタルの未来を」(仮訳)

          この文書は2023年5月にグテーレス国連事務総長名で提案された政策要綱「私たちの共通アジェンダ」の一つです。現在、世界中でこの提案の検討が行われています。全部で11あり、それらはこちらのサイトからダウンロードすることができます。 ここに掲載するのは、そのうちの教育に関わる文書「グローバルデジタル協定」です。仮訳なので、適宜修正を加える予定です。また、読みやすいように原文よりも改行を増やしています。 序文私たちが直面している課題は、より強力な国際協力を通じてのみ対処できる。

          国連「私たちの共通アジェンダ政策要綱5 グローバルデジタル協定:すべての人に開かれた、自由で安全なデジタルの未来を」(仮訳)

          国連「私たちの共通アジェンダ政策要綱10 教育の変革」(仮訳)

          この文書は2023年5月にグテーレス国連事務総長名で提案された政策要綱「私たちの共通アジェンダ」の一つです。現在、世界中でこの提案の検討が行われています。全部で11あり、それらはこちらのサイトからダウンロードすることができます。 ここに掲載するのは、そのうちの教育に関わる文書「教育の変革」です。仮訳なので、適宜修正を加える予定です。(なお、表1は未訳出ですが、いずれ訳を追加したいと思います。)また、読みやすいように原文よりも改行を増やしています。 この報告書は、SDGsと

          国連「私たちの共通アジェンダ政策要綱10 教育の変革」(仮訳)

          IFLA学校図書館マニフェスト暫定版(2021年版)

          2021年に改訂されたIFLAの学校図書館マニフェスト暫定版の仮訳です。ご指摘を受けて修正いたします。これはユネスコの承認を受けていない暫定版です。最終版は内容が変更される可能性があります。最終版ではないことをご理解ください。 学校図書館プログラムのビジョン 学校図書館プログラムは、有資格の学校図書館専門家、コレクション、そして包括的で公平な教育における読み書き能力、思考力、グローバル・シティズンシップのための積極的な協力を通じて、学校コミュニティ全体の教育と学習を改善し

          IFLA学校図書館マニフェスト暫定版(2021年版)

          平和と人権を支える表現の自由、メディア情報リテラシー、デジタル・コンピテンシー

          この文章はユネスコによる「Freedom of expression, media and Information literacy and digital competencies to support peace and human rights: thematic paper」(2022)の仮訳です。 本書は、ユネスコのコミュニケーション・情報部門とユネスコ・国連文明の同盟(UNAOC)メディア情報リテラシー・異文化間対話大学ネットワークが作成したものであり、国際理解

          平和と人権を支える表現の自由、メディア情報リテラシー、デジタル・コンピテンシー

          データフィケーションと教育政策:海外の動向と日本の研究への示唆

          はじめに この記事は2023年7月9日に鹿児島大学で開催された日本教育政策学会で報告したものです。報告の内容は次の3つです。 (1)データフィケーションの教育政策の研究動向の把握 (2)データフィケーションの教育政策研究の枠組の検討 (3)今後の研究の方向性 本記事は論文化しました。論文はこちらです。 私の報告では、2022年に出版された「データフィケーションとともに生きる:世界各国の教育のケーススタディと政策」を中心に紹介いたします。ルーシー・パングラッツィオとジュリ

          データフィケーションと教育政策:海外の動向と日本の研究への示唆

          メディアリテラシー研究の最前線と課題

          この記事は2023年6月24日、奈良県立大学で開催された日本メディア学会春季研究大会で報告した内容です。 報告の概要 今回の発表のテーマは「現在の欧米のメディアリテラシー研究の最前線で議論されている点を整理し、日本におけるメディアリテラシー研究の課題を整理すること」です。そのために、日本におけるメディアリテラシー理論の状況を確認し、欧米におけるメディアリテラシー理論動向の一部を紹介します。そして、私の発表要旨を提出した後に発表された、全米メディアリテラシー教育学会による「

          メディアリテラシー研究の最前線と課題

          メディアリテラシー教育の中核原理(2023年版)

           全米メディアリテラシー教育学会(NAMLE)は2023年版メディアリテラシー教育の中核原理(2023 Revision of the Core Principles)を発表しました。その内容の一部を訳しました。NAMLEはメディアリテラシー教育(MLE)に関する世界的にもっとも有力な学会です。メディアリテラシー教育の中核原理初版は2007年に制定されました。その翻訳文はAMILECのサイトにあります。  初版と比べると、項目が6つから10へと増え、曖昧な部分が明確になりま

          メディアリテラシー教育の中核原理(2023年版)

          デジタル世界の子どもの権利(子ども版)

          これは、デジタル世界における子どもの権利を定めた公式文書(UNCRC一般的意見第25号(2021年))の子ども版です。子どもたち自身の言葉で、子どもの権利を説明しています。 (訳註:この文書は英語版からの翻訳。その他の各国版はこちら。ユニセフの記事はこちら。) 知っていましたか? 国連子どもの権利条約は、史上最多の196カ国が批准しています。 今から30年以上前(1989年)、国連は「子どもの権利に関する条約」を制定し、各国が18歳未満の子どもや若者に与えるべき自由と保護

          デジタル世界の子どもの権利(子ども版)