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デジタルデザイン業界の5大変化を考察する

こんにちは、グッドパッチ・ReDesignerの佐宗です。
明けましておめでとうございます。(遅
今年もよろしくお願いします。

昨日は初めてClubhouseで「いいデザイナーとは何か」というテーマでワイワイ話していました。(聞いてくれた方ありがとうございました!)そもそも組織フェーズによって求められるデザイナーは異なる、とか、ポートフォリオからデザイナーが大事にしている価値観ってわかるよね、みたいな話をしたのですが、その「いいデザイナー」の定義も時代によって変わってくると思います。

今回の記事はその「いいデザイナー」を定義する上で、そもそもデザインを取り巻く環境がどのようなトレンドで変遷をしているのかというテーマで、デジタルデザイン業界5つの変化を書いていきたいと思います。

デジタルデザイン業界の5大変化

ReDesignerでは毎年、ReDesigner DesignDataBookというデジタルデザイン業界を定点観測するレポートを出していますが、今回は個人的に着目している5大変化について書きたいと思います。

1. ものづくりの形が変化
2. 外部パートナーとの共創
3. 行政におけるデザインの高まり
4. BXデザインの高まり
5. 誰でもデザイナーを目指せる時代に

1. ものづくりの形が変化

まず一番に書きたいと思ったのがこれです。ものづくりの形が変化。
何が言いたいかというと、全ての産業においてソフトウェアデザインのアプローチがより有効になったということです。

奇しくも、コロナウイルスの影響(まさにVUCA!)により全ての企業が顧客とのタッチポイントをデジタルにシフトしていくことが生存のために必要になり、あらゆるものがデジタル上でどんな体験価値を得られるのかにシフトしていきました。

顧客に選ばれ、使い続けてもらうためには、顧客の本質的なニーズに耳を傾け、価値を設計し、顧客からのフィードバックやデータを取得し高速でプロダクト/サービスを改善していくことが非常に大事です。

そのためにはデジタル領域への投資を惜しまずやっていかないといけないし、世の中で言われているDXも推進しないといけない。

その中で必要になってくるのが、

・ユーザーを中心とした仮説検証の反復
・体験価値の構造化/最大化
・顧客に愛されるブランドづくり

などです。これができるのは誰か。そう、デザイナーです。

つい先日、三井住友銀行さんがデザイナー専用のサイトを公開して話題を呼びました。

トヨタコネクテッドさんもデザイン組織に力を入れ、Youtubeでデザイナーインタビューを発信していたりもします。

自分の前職、NTT Communicationsも昨年、社内にデザインスタジオ「KOEL」を立ち上げ、積極的に社内外からデザインプロフェッショナルを集めています。

数年前、メガバンクや自動車最大手、通信インフラの企業にデジタルデザイナーが正社員として入社し、価値設計や体験設計をリードしている社会を想像できていたでしょうか?

今やどの産業でもソフトウェアファーストなものづくり・組織づくりが中心になり、ものづくりの形やプロセスが、曖昧混沌な環境の中で道標をつくっていくデザイナーの役割とマッチしてきたのです。

今後より必要とされるデザイナーは、業界を超えて、初めてソフトウェアデザイナーを採用する企業に飛び込み、デザインカルチャーを作っていけるような人材になるでしょう。

2. 外部パートナーとの共創

ここは1の延長なのでさらっといきます。
先日、日経新聞から出たこの記事を皆さん読みましたか?

自分はこれを読んだ時に、「歴史が動いた」とさえ感じました。
あらゆるビジネスパーソンが目を通す紙面に、デザイナーが事業戦略を描き各社がデザイン人材採用に力を入れており、デザインを重視する企業こそ企業価値が向上していることが出たのです。
内容もさることながら、こういった記事が日経新聞の大きな紙面を飾ったことが重要なのです。

この記事の中にも少し書かれていたり、経産省が昨年末に出しているDXレポートの3.2章にも書かれていますが、全てのリソースを自社で調達することは難しく、積極的に外部の力を借りていくことが重要です。

もちろん外注・内製にはそれぞれメリデメが存在します。一部にはなりますが、とある講演で使用したデザインを外注/内製するメリットを参考程度に置いておきます。

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そんな弊社グッドパッチもクライアントと対等なパートナーである、という思想を持っていますが、デザインパートナーへの「発注」ではなく、デザインパートナーとの「共創」というマインドセットが大事なのです。

さらに多くの企業がデザインの力を必要としていく時代に、デザイナーに求められるのはその共創環境を作り出していくべく、デザインを言語化する力、そしてプロジェクトマネジメント能力、クライアントが専門とする分野へと越境していく力ではないでしょうか。

3. 行政におけるデザインの高まり

3つ目に取り上げるのは行政×デザインのニーズの高まりです。
先日、Twitterで内閣官房プロジェクトマネージャー(デジタルサービス)の求人が話題に上がりました。

この歓迎要件に「デザインリサーチの設計と実務経験」、「ユーザービリティ、アクセシビリティ、人間中心設計等の関連分野の専門知識」、「UXデザインに対する理解と実務経験」が記載されており行政におけるデザインニーズの高まりが伺えます。

また、ご存知の方も多いと思いますが、デジタル庁の平井大臣が創設にあたって、UI/UXの重要性を訴えたり、昨年末のNECのシンポジウムでも以下のように語っています。

「これまで我々が構築してきた各省のさまざまなシステムのなかにも、人間中心とは言い切れないものがあります。たとえばUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)についても、多くの方々にとっては非常にハードルが高いものだったことを反省しなければいけません。設計の段階から人々が満足できるような要素を取り込んでいくことが、デジタル庁においては非常に重要になっていきます。」

官邸が2020年12月25日に公開した「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」においても、以下のような記述があります。

「デジタル庁内での権限と責任を明確にするために CTO(最高技術責任者)や CDO (最高データ責任者)等を置き、官民問わず適材適所の人材を配置する。 また、デジタル庁において、UI や UX(ユーザーが製品やサービスを通じて得られ る経験や体験)などの観点から、利用者視点での行政サービスを推進できる体制を構築する。」

このように中央省庁だけを取っても、UI/UXデザイン・インタラクションデザインへのニーズが劇的に高まっています。

今までデザイナーが活躍するフィールドは無意識のうちに民間企業だと考えられていましたが、今年からは民間から変えるか、行政から変えるか、というようなキャリアの選択肢が増えることが予想されるでしょう。
(本当は各国のデジタルデザインやデジタルガバナンスについても触れたいですが、長くなるので今日は割愛します)

4. BXデザインの高まり

4つ目はBrand Experience Designの高まりです。
このトレンドは昨年末に公開したReDesigner DesignDataBookでも顕著にトレンドとして現れていました。

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上の通り、デザイナーに求める役割、及びデザイナーが事業のどの段階から参画しているかを調査した結果です。いずれもブランディングに対しての期待値が昨年よりも上がっています。

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一方のデザイナー向けに聞いた「今後伸ばしていきたいスキル」についても、UI/UXに続きアートディレクションとブランディングがランクインしてます。このようにブランディングのニーズは明らかに出てきています。

ブランディングとBXデザインはレイヤーが異なるので安易な比較ができませんが、BXデザインの実践に関しては是非弊社のWorksを読んでもらえると理解が深まると思います。

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まとめると、デザインという資産をP/Lという短期的なリターンで測るのではなく、B/Sという長期的な経営目線で資産として捉えることがBXデザインの本質です。(と、うちの社長が社内のtimesで言ってました

5. 誰でもデザイナーを目指せる時代に

最後です。ここ数年、デザイナーの新卒採用市場に変化が現れています。
僕たちはReDesigner for Studentというデザイナー志望学生向けのプラットフォームも提供していますが、その登録者割合が美大生よりも総合大学生の方が多いトレンドになっています。

また、採用する側の企業も、今までは美大生をコアターゲットにしていたが、今年からは総合大学生へのアプローチを強化する、と言及するところが圧倒的に増えたのです。実際、例に漏れず弊社グッドパッチも東大や京大、慶應義塾大学出身者などがデザイナー職として今年の4月に入社してきます。

今までは新卒でデザイナー職として就職する=美大卒or総合大学のデザイン専攻卒or専門学校卒だったところが、学歴関係なく、誰でもデザイナーを目指せる時代になったのです。

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一方、そんなデザイナー志望の新卒学生を受け入れる企業の数はあまり多くなく、業界の歪さを実感する日々です。私たちReDesignerはより多くの学生がバッターボックスに立てるべく、新卒デザイナーを受け入れる企業を増やしていくことで、デザインの可能性を切り拓いていきたいと思っています。

より多くの学生に機会を提供していきたいので、デザイナーインターンを受け入れてもいいよという企業や、今年から新卒デザイナー採用をはじめてみようかなという企業の方はぜひご連絡ください。

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以上、デジタルデザイン業界における5つの変化でした。
昨日のClubhouseの延長戦で、今後のデジタルデザイン業界の変化を捉え、「いいデザイナーとは何か」を考えるきっかけになっていると嬉しいです。もしキャリアの壁打ちしたい人がいたらReDesignerに登録いただくか、Twitterで気軽に絡んでください。Clubhouse一緒に配信してくれる方も募集してます!

おわりに

実は今回この記事を書こうと思ったのはClubhouseきっかけだけではなく、社内のとある出来事でした。
自分が事業統括するReDesignerチームでは年末にかけて、noteではなく社内のesa(ナレッジポータル)にて ”ReDesigner Advent Calendar” と称して11本の記事を社内向けに執筆していました。

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自分は「事業立ち上げに必要な視点とは?」というテーマで、グッドパッチのアセットをどのように生かし事業を立ち上げるのか、またその時のスタンスやリモートワーク時に実施しているチーム力強化施策などの組織面から、ReDesignerの事業戦略面を1万字にまとめました。(長いw)

これらの社内向け記事がかなり多くの人に読んでもらえて、「社内だけだともったいない!noteに書こう!」となりまして。じゃあReDesignerチーム全員noteでバトンを回していこうと思い立って今日に至ります。これから定期的に公開していくのでお楽しみに!

おまけ:2つ告知!

つい先日、デザイナーとやりとりしていく中で、こんなことを言う機会がありました。

「これは転職エージェントという視点と言うよりもReDesignerという視点ですね。転職がゴールではないので!」

その時は特に何も思わなかったんですが、ふと振り返ると、ReDesignerが目指しているのは「転職エージェント」なのではなく、「デザインの価値がより広く世の中に広まっている状態」なんだな、と改めて思ってます。

実際自分は今まで転職エージェントとして働いた意識はないし、きっとこれからもそうです。ReDesignerはグッドパッチが運営している自社事業であり、デザインの力を証明するために存在しています。他はあくまで手段です。

その文脈での告知になりますが、今年はReDesignerとして正社員のマッチングだけでなく、業務委託・副業のマッチングも開始します。詳細はまた書きますが、デザイナーの業務委託を探しているデザインマネージャー/採用担当の方や、業務委託・副業を探そうとしているデザイナーの方は是非ご連絡ください。

2つ目!完全に先出しになりますが、2月22日(月)夜に【Notion×ReDesigner】でのイベント開催が決定しました。当日は本国を巻き込んだ何かがあるかも・・?絶賛準備中ですが、すでにワクワクが止まりません。まだ公開してないのでとりあえずConnpassのグループをフォローしておいてもらえると嬉しいです。

ではでは、ReDesignerは今年もデザイナーが最大限パフォーマンスを発揮できる社会づくりを通して、デザインの力を証明していきます。

チームメンバーによる次回以降の記事もお楽しみに!




最後まで読んでいただきありがとうございます!