見出し画像

NPO経営者こそがファンドレイザーの価値を最大化できる ~ ファンドレイザー人月の神話

昨今、ファンドレイジングという仕事が日本でも広がり始めています。大変喜ばしいことである一方で、実はファンドレイザー一人ではその価値を発揮しにくい現実もあります。

今回は、NPO経営者のマインドや行動によって、ファンドレイザーの発揮する力がいかに変化するのかを、米国の調査結果をもとに見ていこうと思います。

1.米国の事例からみたファンドレイザーの活かし方

米国で2003年に公表された『Nonprofit Financial Reporting』(Urban Institute/INDIANA UNIVERSITY,2003)が、当時衝撃をもって受け止めらたそうです。

・寄付金が50,000ドル以上の非営利組織の37%が、資金調達(ファンドレイジング)費用が0ドルである
・非営利組織の13%は、(ファンドレイジングを含む)管理費および一般管理費が0ドルである

この結果を受け、多くの非営利組織ではいかに資金調達等の費用を下げ、その一方で高い寄付金を集めるかに焦点をあてるようになりました。
例えば、ある非営利組織では、多くの寄付金を集めながらも、低い給与と低予算のなかで奮闘しているファンドレイザーがいました。経営者は、その活躍で得られた総コスト比13%という結果を誇らしげに捉えていました。数年後、ファンドレイザーがより待遇の良い組織にスカウトされ離れるや、組織の収支は急速に悪化してしまいました。
当時はこのように多くの組織が費用を抑えることを重視した結果、スタッフの高い離職率や不安定な組織運営に悩まされ、さらに費用を抑えるという悪循環に陥っていました。

その後、多くの調査研究を経て、ファンドレイジングの費用とその成果に相関関係とレバレッジ効果があることがわかってきました。高い成果を出すには、それに見合った費用が必要であり、またファンドレイザーのスキルによってその費用対効果は大きく変わってくる、というものです。

2.ファンドレイザーが真価を発揮できる方法

最近の調査研究『Fundraising Staffing Survey Results』(Pierce Family Foundation,2018)では、ファンドレイザー1人が50万ドル/年の寄付金を調達した際に、その人件費等の総コストは約5~10万ドル/年であり、5~10倍のレバレッジ効果がある、と報告しています。さらに、100万ドル/年を調達するにはファンドレイザーの人数をもう一人増やす必要があり、人数と調達金額に相関関係が見られる、とも述べています。

では、単純に人数を増やせばこうした成果が期待できるのかというと、実はそうでもないようです。それには条件があります。

条件1.
ファンドレイザーとしての就任最初の1~2年程度は、スタッフや支援者との関係を構築したり、組織や活動の特徴を把握したり、戦略を策定するなどのキャパビルが必須

この期間は、植物が地面にしっかりと根を張るような準備期間といえます。


条件2.
ファンドレイジングに必要な基盤と予算と権限(基盤としては利用可能な状態の支援者情報など、予算は外注費とその決定権限)が整っていることが前提

有能なファンドレイザーでも、十分な予算や基盤がなければ、活動の範囲も規模も限られてしまいます。


条件3.
人数と調達金額の相関関係及びレバレッジは、組織状況やファンドレイザー個々の専門性によって度合が変化する

これは考えれば当たり前で、組織とファンドレイザーとの関係性や、ファンドレイザーのスキルによって、成果は変わります。

経営者としては、ファンドレイザーがその力を発揮できるまでの数年間は関係構築や一緒に思考錯誤しながら伴走し、"準備"を目的に据える覚悟が求められそうです。また、必要な基盤への投資がファンドレイジングの成果に繋がることを理解して、投資判断ができるスキルを身につけること。そして、自分自身ないしは組織が、ファンドレイザーの成果を左右してしまうことを意識し、最大化できる行動をとることが大切になりそうです。

3.ファンドレイザーのレバレッジ力

私は、このファンドレイザーのレバレッジ力という概念もいいなと思いました。
例えば、これまで年間500万円集まっていた寄付が、ファンドレイザーに500万円支払うことで寄付金が1,000万円まで集まるようになったとします。組織の収益は変わりませんが、寄付金の内訳を支援者1人が1万円と仮定すると、自組織を応援する人が500人から1,000人に増えたことになります。つまり、活動に共感し社会問題を一緒に考える人が増えれば、その解決の日がまた一歩近づいたとも捉えることができます。
現実はこんなに単純ではないかもしれませんが、ファンドレイザーの価値はここにもあるのではないかと思っています。


参考
『NONPROFIT FINANCIAL REPORTING』
https://www.nonprofitaccountingbasics.org/sites/default/files/Special_Issues_in_Nonprofit_Financial_Reporting.pdf

『FUNDRAISING STAFF SURVEY』
http://piercefamilyfoundation.org/sites/default/files/site/default/files/PFF_fundraising%20staff%20survey_spring%202018.pdf

『Fundraising Expense Myth: What Is the “Correct” Fundraising Expense Ratio for Your Organization?』
https://afpglobal.org/news/fundraising-expense-myth-what-correct-fundraising-expense-ratio-your-organization

『How Many Fundraising Staff Does It Take to Raise $1 Million?』
https://www.frontrangesource.com/many-fundraising-staff-take-raise-1-million/

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

2

Junya Aizawa

コンサルタント/クライアントはソーシャルを大切にしたい営利・非営利組織/専門は経営戦略及びファンドレイジング戦略の策定とその実行支援など/最近広めたいワードは「カッコいい社会貢献」/長野県好き
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。