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【作家論】上手い小説を書けるのはモテ男?モテない男?どっち?

ひと昔前。
「モテないから作家になる」、
というのはあやまりで、
作家たるもの、女性をうまく 
口説けるような技術がない人に、
よい小説など書けないものだ。 

そう言った作家がいました。
丸谷才一という作家です。

文学青年なんて、たいていは、
現実ではモテないからこそ、
そんな浮世のコンプレックスを
晴らすためにも、
小説を読んだり書いたりするのでは
なかろうか?と、私はそれまで
かたく思い込んでました。

浮世ではモテなくても、
まあそれは諦めるとしよう。
その代わりに、
ああ、あの子には、
こんな言葉をかけたかったんだ!
別の子には、
ああ、本当はこんなふうに
さっそうと振る舞いたかった!

そんなふうに、
実際にはできなかった
発言や振る舞いが
毎日毎日、心の底にたまっていく。
青春期、恋だけは人並みにして、
現実的にはただただ失恋するから、
もう底無し沼のように、
成仏できない言葉や行為が
たまっていく。
それを成仏させたくて、
私も若い時代には小説を書いてました。
そのほとんどが恋愛小説でした。

小説といっても、
大げさなものではなく、
原始は、きっとそんな、
果たせなかった感情の成仏から
始まったんじゃないかしら?

つまり、私みたいな
モテない文学青年にとって、
小説の世界がよい棲み家だったのです。
モテない男の隠れ家でした。

それがですよ、
丸谷才一氏によれば、
ろくに女性心理にも通じていない
口説き落とす技術もない
モテない男が書く小説なんて
たかが知れているというのです。
私は、冷や水をぶっかけられた
ような大ショックを受けました。

たしかに、
モテない男に、女性は
うまく書けないかも知れません。
私の小説も、女性に見せたら、
クスクス笑われるばかりでした。
ダメだったんでしょう。
それにしても、笑うだけって?(笑)

でも、そういえば、
無頼派・坂口安吾は、
童貞だった時に
エッチな小説を書いて
周りを驚かせたという伝説がある。
まるで性愛に詳しい人が書いたと
しか思えないほど、
その作品は官能的だったそう。

そうです。
そうなんです。
たとえ、童貞であろうと、
たとえ、女性心理に疎かろうと、
人間には想像力があります。
想像力さえあれば、
小説の中では、
モテない男も、モテ男に
変身できるんですよね。

それができるから、
小説は昔から様々な人に
愛されてきたのでしょう。

だから私は
丸谷大兄に言ってやりたい。
「女性を口説けなくても、
うまい小説を書けるぞ、
よく小説を読解できているぞ」と。

まあ、うまい小説が書けて、
女性にもモテるなら、
それにこしたことないけれど(笑)。

でも、作家の世界でも、
マンガ家の世界でも、
美男美女はある一定数はいますね。
彼、彼女らは、
異性を口説き落とせて、
しかも見事な作品を書けている。
神は時折りニモツを与えるらしい。

私はやはりコンプレックスをバネに
逞しく生きてくしかないらしい。
(笑)。

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