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2021.10.30.會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 「夢幻泡影」を聴く

  今日はかなっくホールにやってきた!

  會田さんのソロリサイタル、前回行ったのは一昨年6月の「打楽器百花繚乱 VI」だったな。当時はあんまり會田さんのこと知らなくて、同級生の梅本くんの新作初演があるから聴きに行ったって感じだった(笑)。小さいサロンの中で、前に座ったせいか、音圧がすごくて...なによりも難曲奇曲ばかりのプログラム、會田さんの超絶技巧と相まって、すっかり圧倒された記憶がある。
  會田さんが企画するコンサートのプログラム、いつも魅力的だなって思ってる。今回もなんと、前半から三名の作曲家の新作初演をし、バッハを経て、後半も過去の依嘱作品(!)などの数々、それらを武満徹の曲でサンドイッチするような美味しいプログラム。これは聴きに行くしかない!!

この記事では3つの世界初演の感想を中心に進んでいくよ〜

 通称「初演魔」の指揮者、岩城宏之が武満徹に依嘱した「クロスハッチ」。これまで三百作品以上の初演を手掛けてきた會田さんのリサイタルの幕開けにはぴったりだ。錯覚を促してしまうような反復音形の渦巻に、ちょっと気を抜けば吸い込まれそうになる、そんな一分も満たない不思議な小品だった。

  それでは、早速「初演魔」の本領発揮タイム(笑)。

  今堀拓也さん作曲「Bruckneriana for vibraphone solo」

 プログラムによると、なんといきなり第3主題まで持つソナタ形式!機能和声を使っていないのにも関わらず、不思議にも後期ロマン派音楽にのみ感じられるような多幸感をもたらした。
    それはもちろん高度な構成力などといった作曲技術から来ているとも言えるが、やはり作曲者の心の奥底に秘められた、言語化できないような、ある種のパッションのようなものから来るものだと信じている。

  辻田彩菜さん作曲「Collectionism XV/Undine」

 辻田さんの「蒐集癖」と題するこのシリーズは、以前から気になっていました!ソロ曲からオケ曲まで、今回のような架空上の生物から、サブカルやネット文化による産物まで、数々の強キャラを網羅している...。まるで「デュエル・マスターズ」や「遊戯王」に代表されるカードゲームのような純粋な遊び心を感じた。
   今度の「Undine」は「水の妖精」というモチーフからカラフルな音風景を引き出し、フレッシュで明快なリズムや響きの中で展開されていった。作曲者の可愛くて瑞々しい感性を垣間見ることができる作品!

  鈴木純明先生作曲「1Q22」

 いよいよ、私の先生である鈴木純明による作品!先生が舞台に上がり、曲について説明し出した、どうやらこの曲はジャズとヒンデミットの「1922」という作品へのオマージュだ。純明先生はレッスンの際にソロ曲書く際に、その楽器の歴史を調べるがいいと仰っていたので、「ジャズ」を題材にしたのはなるほど〜と思った。さて、どんな曲になるのか…。
 とにかく音圧が半端なかった、至る所に早い連符、広い重音が散りばめられて、甲高い金属音が過剰なペダルと相まってまるで洪水のように会場中に溢れかえっていた。ワンワンと鳴るモーターとそれに応えるかのように止まらない耳鳴りは、まるで引き伸ばされた定旋律のように四曲の間の境界線をもぼかした。
 人生初めてジャズを聴いた時を思い出した、確か上原ひろみの演奏だったと思うけど、小学生の僕にとっては理解不能で、まるで無調音楽を聴いているかのような感覚になり、すぐ画面を閉じてしまった。きっと初めて「ジャズ」を耳をしたヨーロッパの人々はこのように聞こえたのに違いない!

  
 その他、初演ではないのですが、関東初演の坂田直樹さん作曲「Leptohirix」もすごく面白かった。電気モーターがついていなくても、ヴィブラフォンは私にとってすごく電気ぽくて好き。音板にアルミホイルとコインを設置して演奏すると、電子的なノイズ音が鳴る、それを聴いて、新ためて、この楽器にやっぱ電気が走っているのだなぁ、と改めて感動してしまう。
 同じく関東初演の會田瑞樹さん作曲「雨の降る前に…」に出てきたボトルで振動している音板にかざして「キュイン」ってエレキのような音を鳴らすの最高にかっこよかった!この曲はプログラムの最後の武満徹作曲「雨の樹」のために作曲されたプレリュードだそう。全体的に瞑想的な雰囲気に包まれ中、時々「雨の樹」へのオマージュのようなミニマルなパッセージも見え隠れしていた。

他にも面白いこといっぱいあった!

 演奏家、表現者、コンサート企画者としてだけでなく、作曲者としても申し分なく才能が発揮される會田氏!今後どんなコンサートを行うか楽しみ!!私も頑張らないとなぁ!

2021.10.30 記

    

  


  


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