現役で合格するのは、浪人で友人から置いて行かれたように思うこともあるので、できればそうしたいことです。お金を払う側にすれば、一年でも早く社会人になってほしいでしょう。払う側にもなったので、その気持ちがよくわかります。

しかし、予備校はなかなか価値があるんです。高校の補習程度の通学では学べない1年です。１年だけ駿台予備校の理科系に在学したときの経験は新鮮で素晴らしかったです。

予備校の講師は質が違う

担任や事務職員がいくら言っても人気講師に人が集まり、教室は立見で満杯です。その時間の同じ科目の講師の教室はガラガラです。
これに耐えられない人もいるようです。人気講師はカリスマで、発言の一言一言を生徒が教祖様のご託宣のようにメモしています。

また教えるのが上手いんですね。

私は駿台予備校在学中、国文学者の田中重太郎先生の授業を受けるという幸せに恵まれました。お話も大変面白かったです。さすがだと思ったのは、九月になった一回目の講義で、まず黒板に

あかあかと　日はつれなくも　秋の風

という芭蕉の句を書かれました。
そもそもつかみから違うんです。

これほど自分の授業が生徒の数という形で返ってくる職場はまずないと思います。あの現場にいたら、学校にはまずつとめられないでしょう。

更にすごい話

獣医師として、ニーズがあれば技術系の翻訳なども受けてきました。ほとんどの方は、英文から和文は得意でも、和文から英文は苦手とおっしゃいます。私は実は反対で、いわゆる「英作文」が得意です。英語の入試問題を上からやっていき、文法や単語である程度点数を稼いだあとにある、ラスボス的な問題が英作文です。これで点を稼げたのです。

それは、春台予備校で英作文を担当された、倉谷直臣先生のおかげです。会話上達法（ (講談社現代新書 470) 新書）という本も出しておられます。さて、この先生にどうやって英作文を習うかというと、朝早くきて、授業の前に黒板に自分が作った英文を書くのです。先生はそれを添削されます。

宝塚の音楽学院で、自宅にピアノがない生徒が、練習のため朝早くに登校するという話をききましたが、それと全く同じです。。私と同じことをしていた男子が2名いましたが、どちらも京都大学に入学しました。先生の英語は、とても英語的センスがあって、それを学べたのは一生の財産です。やる気がある人はどこまでも面倒を見てくれるのが予備校です。

苦手科目の克服も

さて、古文と英語で苦労話を紹介しましたが、理系科目で最後まで苦しんだのは化学でした。私の言っていた高校は、理科系に進む人が少なく、受験用の指導がなかったのです。化学を担当しておられた先生に相談しました。かなり高齢の方で、どこかの高校を対処k後、予備校に勤務されたようでした。
「化学がまったくできないのですが」とううと、その先生は、
「まず教科書をかってきなさい。参考書でなくて」とおっしゃいました。
買ってきて参考書を見せると、各章の最後にある問題を示して、「教科書を読んで、この問題をやりなさい」
と言われました。
その効果ですか？ちゃんと大阪府立大学に合格して獣医師になり（学内でも化学や生物のハードルがあります）、DNA抽出もやれているので、効果があったということです。

思うに、ストらイヤーやコーンスタンプの生化学の教科書には、必ず巻末に問題が載っています。これを解かないのは損ですよ！理系大学の方は指導の教員の方に考え方を教えてもらうといいです。授業に必死でついていっている方は余裕ができます。だって試験にはこういう問題が出るからです。

予備校から得るもの

まとめです。お話しししたように、模試の結果に一喜一憂するだけでなく、考え方を学ぶのが予備校です。素晴らしい先生がいるので、授業料以上に利用して、成績を上げてください。大学に進学してからの姿勢にもつながります。これを読んでくださっている予備校生の方、合格をお祈りします。

似内惠子（獣医師・似内産業動物診療所院長））
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オールアバウト「動物病院」コラム
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