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合気系武術が育まれた文化的背景について私論(下)

我々は、子どものときから、回りの状況を察する・相手のことを思いやる・言外の意図を汲み取るといったスキルを家庭・学校・社会で磨いてきました。つまり、常に相手との関係性を意識し自分を処する訓練をしてきたということでしょう。これこそが、「合気」を発見できた文化的背景であると思います。

「合気」は陰の合気にせよ・陽の合気にせよ、相手の力感や緊張状態を感じとって、それに自分を合わせていくことが必要です。そのためには、相手の体の状態を感じとる・読み取る訓練が必要です。この感覚を得るには、日本型の日本人でも適切な指導者の下で少し時間がかかります。ところが、自己主張中心型の人には中々理解し難い感覚なのです。

ところで、筆者は合気・柔術を次のように整理しています。

 合気=相手との関係性で成立=協調的技法
 柔術=柔術テクニック=自分の問題=自己主張的技法

「合気」かかったとは、相手と一体化しただけの状態ですから、これだけでは何も起きません。続け柔術テクニックを用いて制御動作に入る、だから合気柔術なのです。相手と協調しながらも自己主張を通す、なので相手もいやな気分が起きない(えっ?あれっ?と笑って倒される)ということです。
デメリットは曖昧模糊としているから返技が掛かる余地があるということです。なぜならば、「合気」は相互のバランスを共有している状態ですから、早い者勝ち・上手い者勝ちなのです。一方、大東流柔術(第1・2か条)は、相手のことなど気にしませんから、受手はひたすら痛いのです。したがって上記の返技はないのです。(完)
 
参考文献:榎本博明著『「忖度」の構造』2017年イースト新書

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