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【第2回JWCSラジオ リンク記事】 地元の自然を守るには

 インターネットラジオのPodcastにて、9月28日に配信したJWCSラジオ《生きもの地球ツアー》の第二回『地元の自然を守るにはどうしたらいい?』はいかがでしたか。

 この記事では、第二回の内容を掘り下げてお知らせします。まだお聞きになられていない方は、ぜひお聞きください。


 第二回のナビゲーターはJWCS事務局長の鈴木希理恵、ガイドはJWCS会長・東京学芸大学名誉教授の小川潔さんでした。

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 今回は「宮城県のランツ先生」からのメールがきっかけでした。南三陸にはイヌワシが生息しています。その自然を守りたいけれど、どうしたらよいかという問い合わせでした。

目標とする自然の姿によって、人の手をどのように加えるかは異なる

 環境省・農林水産省は1996年に「イヌワシ保護増殖事業計画」を策定し、事業を行ってきました。しかし生息状況が悪化しているため、2021年に「イヌワシ生息地拡大・改善に向けた全体目標」を策定しました。絶滅危惧種のイヌワシが増えるには、ウサギやヘビなどの餌動物が豊富で、狩場となる開けた場所もある生態系が必要です。
 南三陸の場合は林野庁が、シカを呼び込まずにイヌワシの狩り場を創出することと、森林資源の循環利用を推進することを目標にした森林施業を行っています(林野庁)。ちなみに木のない開けた場所は草地となってシカの餌場になり、増えたシカが植林した木の皮を食べたり、森の下草を食べつくして土砂崩れの原因になったりするおそれがあります。


 さらに官民協働の「南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会」が2021年5月に発足しました。林業だけでなく、かやぶき屋根に使う茅の生産や共有林でのヒツジの放牧など地元の産業と結びついた管理が行われます(日本自然保護協会ウェブサイト )。

 南三陸の場合は、イヌワシが繁殖できる生態系を目標に、かつてイヌワシが繁殖していた農村環境を経済的に利用することで維持しようとする取り組みといえるでしょう。
 一方、東日本大震災の津波被災地で、湿地生態系が復元し絶滅危惧種のミズアオイが花を咲かせたり、湧水池ができてイトヨが生息していたりと、自然災害によるかく乱の後、人間の影響がなくなって甦った生態系もあります。このような人の影響がないことで存在している生態系を目標にした場合は、人の影響をなくす取り組みが維持のために必要になるでしょう。たとえて言うなら「引き算」の取り組みです。
 つまり目標とする自然の姿によって、人の手をどのように加えるかは変わります。

 「うーん、腑に落ちないな」と思われた方は、今回のラジオのゲスト、小川潔さんが執筆した「2050 年自然の回復・復元に至る過程私論」(2021年『JWCS通信』No.93)を読んでみてください。高度経済成長期以降に行われた、自然回復・復元の取り組みの数々とその結果が述べられています。


「自然を守りたい」気持ちを成果に結び付けるために

 保全活動の成果を上げるには「生きもの目線」で地域を見直し、そして地域の人たちが納得して進めることが大事だと考えます。
 JWCSでは「生きもの目線で活動チェック―生きものの側に立って生物多様性保全活動を考える」という小冊子を作成しました。

生きもの目線表紙


 今回お問い合わせいただいた「ランツ先生」は、自然の豊かな地域にお住まいでしたが、都市にお住まいの方でも、今に残る自然を手掛かりに自然を守る活動に広げていくことができます。その手始めに生きもの地図を作ったり、明治時代の地図とGoogleの地図データを見比べたりするなどの方法があります。
 そして地域の人たちが、まちづくりの中に自然を守る活動を含めていくことが大事であることは、どの地域も共通でしょう。

間接的な応援も

 地域の自然保護に取り組む企業を、消費者として応援する方法もあります。JWCSがメンバーになっている「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク」では、「企業のエシカル通信簿」という名で、影響力の大きい大手企業の環境や人権、社会貢献などへの取り組みをチェックし、結果を公開していますので、買い物するときに参考にしてみてください。

 また規模が小さくても地域に根差して、環境に配慮した活動をしている企業や、農産物・水産物の産直をしている人たちもいます。それらを消費者として応援することができるでしょう。

 地域の自然を守る活動が「意識の高い一部の人たちがやっている」と見られるのではなく、「ここに住み続けたいなあ」という気持ちでつながって、広がってほしいと願っています。

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鈴木希理恵(JWCSスタッフ)



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