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アイデアが必要な時に、アイデアが浮かばない問題を解消する方法

昨日、生放送コミュニティ「schoo」に出ておりました!

くっそほど緊張したぞ。

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クノールのコーンスープを粉から食べるのがバレましたね。あれ、美味しいんだ。マジで。皆さまも、ぜひやってみて下さい。

さて、このnoteでは昨日お話した内容を文字でお届けします。動画でも合わせてお楽しみいただければと思います。

会員登録すれば、1回は見れるはず。

ちなみに、画面の中央に据えている書籍は「アイデア量産の思考法」と言いまして、僕が最近書いた書籍です。


どんな時にアイデアが生まれますか?

皆さんは、何をしている時にアイデアを思い付きますか?

「良いアイデアが生まれた!」

それって、お風呂に入っている時、トイレをしている時、どこかリラックスモードにある時間を過ごしている瞬間に、ハッと思い付きませんか。

でも、良いアイデアが思い浮かぶよう真剣に考えている時には、なぜかアイデアは浮かびません。

「脳がリラックスしているから」「アイデアは降って湧いてくるから」など様々な理由はあるかもしれません。それはそうだとして、アイデアが必要な時に何も浮かばないというのは非常に困ります。

「アイデア考えなきゃ!」というシーンで、アイデアを生み出せる思考法・フレームワークを1つ知っておくと、けっこう便利です。少なくともアイデアが必要なたびに風呂に入って、皮膚がフヤフヤにならずに済みます。

そのための思考法・フレームワークを「アイデア量産の思考法」と私は呼んでいます。

人数は限りなく少ないけれど、ちょっと変わった行動をする消費者を観察して、得た気付きをアイデアに転用する思考法です。

・普通の人が行っている、ちょっと変わった行動。
・最近のお気に入り、マイブーム、こだわり、工夫。
・提供している企業から見ると間違った使い方や想定していなかった使い方
・使い方は普通だけど、その目的が変わっている

こうした行動に、アイデアのヒントが隠されています。


消費者行動はアイデアの宝庫

身の回りにある、少人数の消費者がやっている変わった行動。いったい、どんなものが思い浮かぶでしょうか。

既に市民権を得ている、ちょっとベタな行動をあえて集めてみました。

例えば、夏なら4~6℃、冬なら6~8℃がおすすめのビールをあえて冷凍庫で冷やす人たち。冷やしすぎるとビールの泡立ちは悪くなり、原料の麦の成分が凝固して濁りが発生するので、おいしさが半減します。それなのに、知ってか知らずか冷凍庫で冷やす。

そして破裂させる。


例えば、大学受験の会場にキットカットを持参する人たち。語呂合わせでゲン担ぎとはいえ単に「お菓子」ですよ。最近では大学受験に限らず、様々な受験の場に持ち込む人がいるそうです。

それも、九州地方で「ゴロが良いからキットカットをお守りにしている」という消費者行動があったからだと言われています。

今ではゲン担ぎスナックが定番となりました。「You can」で羊羹、「受かる」でカールなど。


例えば、サイゼリヤなどのファミレス、カラオケなんかによくあるドリンクバーで、飲み物を混ぜて遊ぶ人たち。ハム速にこんなのありました。飲み物で遊んでんじゃねーよ。金払ったら何やってもいいのかよ。

でも、ついついやってしまう。色合いもキレイだし、カルピス混ぜたらだいたい美味しいし、何なら味の新発見もある。


これらの行動を、メーカーはどのような目で見ているのでしょうか。

「ビールの風味が失われてしまう!」
「ゲン担ぎにしては変わってるなぁ!」
「飲み物で遊ばないで!」

このような否定的なコメントが出てくるのではないか、と考えています。

しかし、それは「行動」に目を取られ過ぎです。データ分析の観点で考えると、何事にも「原因」と「結果」があります。行動という結果があるなら、それをする理由(原因)があるはずです。なぜなら、何らかの価値を感じたり欲求を抱いたからこそ、行動に移したのですから。

行動に目を奪われず、理由・価値という本質に目を向けるべきではないでしょうか? 行動の背景に隠されている価値を読み取るべきなのです。

図1

私なりに考えてみると、少人数の消費者がやっている変わった行動には、それぞれ以下のような価値が隠されているのではないでしょうか。

〇【行動】ビールを冷凍庫でキンキンに冷やす⇒【価値】痺れるぐらい冷たい喉越しでリフレッシュしたい
〇【行動】受験会場にキットカットを持参する⇒【価値】勝負の日を前にゲン担ぎをしたい
〇【行動】ドリンクバーで飲み物を混ぜる⇒【価値】自分だけの味を発見する楽しみを感じたい

では、ここで1つの疑問を投げ掛けたいと思います。

「勝負の日を前にゲン担ぎをしたい」という欲求は、たった1人しか抱かないのでしょうか?

いや、そんなはずありません。誰もが最後は藁にも縋りたいはずです。私の知り合いは「四葉のクローバーを財布に入れる」という変わった行動をしていました。あんまり関係無いような…とも思ったのですが。

大切なことは、この変わった行動を移す原因になった「消費者の欲求」を、自社ブランドで充たせないか?と考えることです。

本のサブタイトルにもなっていますが「市場や商品ではなく、人間を見に行く」。これはアイデアを考える上で、とても大切なことです。

少人数の消費者がやっている変わった行動は、その後、各メーカーの手によって商品化、或いはコミュニケーションに繋がっています。

〇【行動】ビールを冷凍庫でキンキンに冷やす⇒【商品】氷点下のスーパードライ(アサヒビール)、一番搾りフローズン(キリンビール)
〇【行動】受験会場にキットカットを持参する⇒【商品】「キット、サクラサクよ。」キャンペーン
〇【行動】ドリンクバーで飲み物を混ぜる⇒【商品】「モクテル、シッテル?」キャンペーン(コカ・コーラボトラーズジャパン)

ちなみに、キットカットの「キット、サクラサクよ。」キャンペーンは爆発的に成功していますが、それ以外のブランドの「ゲン担ぎお菓子」がそこまでヒットしていないのは、単なる偶然ではありません。

1つは、高校生を巡る環境の変化、特にストレス度合いの高まりが挙げられます。そんな彼らにとって、キットカットを2つにポキッと割る瞬間、ふわぁ~…とストレスが昇華するような感覚があるようです。

もう1つは、まさに高校生らのキットカットに対する心理的な距離感が挙げられます。決して敵ではなく、むしろ仲間に近い。親しみを抱いている。言い換えると、ネスレ高岡さんは「だったらキットカット=きっと勝っとぉでキャンペーンをしても高校生は受け入れてくれる」と判断したはずです。

キャンペーンは一貫して「売る」が最終的な目的でありながら、「距離感を縮める」が短期的な目的ではなかろうかと感じています。


人間を見に行く視点を持とう

「人間を見に行く」のは分かった。では、どうやって見に行けば良いんだ?

そういう疑問はもっともです。そこで私の勤めるデコムでは、人間が時間とお金を費やすカテゴリを以下のように分類しました。いったんは、これらのカテゴリに絞って、人間を見に行く訓練をしましょう。

図2

ちなみに、私の勤めるデコムでは、この14カテゴリに区切った「少人数の消費者がやっている変わった行動」を集めたサービスをやっています。

TrendbanK」と言います。アイコンがかわいい。

図3

例えば、以下のような行動を、「遊び・エンターテインメント」カテゴリで配信しました。

へぇ~、って感じですよね。

図4

Youtubeを使った実況配信がメジャーになってから、「ゲームの進め方にも人それぞれの個性が現れる」と知れ渡るようになりました。他人を理解するのに、以前は本棚が良いなんて言われていましたが、今ではゲームも含まれるようです。

その行動の源泉は、他人の琴線に触れてみたい、他人が手製で作り上げた世界に触れたい、クラフト感を求めるという、デジタルな世界ならではの欲求ではないでしょうか。

そう考えると、中古ゲーム=既に使われたゲームではなく、=他人の貴重な記録が残されたゲームとして価値が現れてきそうです。誰の中古かで値段は変わるんでしょうね。

ちなみにTrendbanKが1冊の書籍になっています。「アイデア量産の思考法」と言います。(しつこい?)


アイデア量産のフレームワーク

せっかくアイデアを生み出しても「二番煎じ」「新しくない」と言われる。だから、どうせ「少人数の消費者がやっている変わった行動」を見ても一緒だ、何も変わらない。

そう思われる方もおられるかもしれません。

でも、それは違います。フレームワークで解決する問題です。

「少人数の消費者がやっている変わった行動」を見てアイデアを考える際、そのアイデアのカテゴリ(市場、商品)で何が古いかをまず考えましょう。

「新しさ」とは「古さ」が決めます。すなわち「古くなければ新しい」のですから、まずは「今までは何をしてきたか」を知るべきなのです。

図5

このように、「充たしていない価値は何か?」を考えるために、あえて「今まで何を充たしてきたか?」を考えれば良いでしょう。言い換えれば何を充たしてきたからこそ、何を充たせていないか=これがアイデアなのです。


「Calbeeかっぱえびせん」が、さらに売れるアイデア

みなさん、「かっぱえびせん」好きですか? 私は大好きです。

最後に、そんな「かっぱえびせん」を、もっと売るためのアイデアを考えてみましょう。

ちなみにIR資料室によると、19年3月期の会社全体の売上は約2500憶円、うち国内が約2000憶円、国内スナック系が1800憶円、その中でも「かっぱえびせん」が97億円だそうです(ポテト系スナック(ポテトチップス、じゃがりこ等)が1330憶円)。

「かっぱえびせん」が巨大なメガブランドに変わりませんが、もっともっと売れて欲しいものです。そこで「かっぱえびせん」をより多くの人が買ってくれるようなアイデアを、「少人数の消費者がやっている変わった行動」を眺めて考えたいと思います。

TrendbanK」から以下3つの行動を用意しました。

図6

図7

図8

このnoteを読まれている皆さんも色んな気付きがあったと思います。私からは2つの気付きを紹介したいと思います。

■既製品に新たな味を見つける喜び
「カップ麺の水を牛乳やチューハイに変える」「納豆に砂糖をいれて食べる」など、新たな味の発見を求めている。裏返せば、メーカーや世間が定める「正しい食べ方」に対する疑問が持たれているとも言える。
■ポテチは主食か?それとも、おやつか?
「手抜きの極致」「バランスの良い食事に全面戦争」と表現されているように、ポテチ=じゃがいもがジャンクな主食と考えている。ジャンクは怠惰にして甘美な響き。ちなみに私も、味噌汁にコンソメパンチを入れていただきます。

少し前ですが「10分どん兵衛」ってありましたよね。マキタスポーツさんが「どん兵衛は10分が美味しい」と言い出して、みんなが明石家さんまになって「そんなわけないやろ~…ホンマや!」とフリに応えたはずです。

メーカーの主張する「5分」に対し「10分が美味しい」という声を真摯に拾い、かつ販促に活かした事例として有名です。

メーカーの推薦する食べ方が美味しいのはもちろんなんですが、美味しさの正しさなんて人それぞれで、むしろ色んな食べ方を推奨した方が良いのかもしれません。

例えば、それこそポテトチップス(コンソメ)に味噌汁。これは、我が家の定番でした。20年前くらいから楽しんできたのですが、ようやく時代が追い付いたのか、富士そばさんがポテトチップス蕎麦を始めました。

美味しそう~!って実際、美味しいんですよ。今まで食べ続けている私が言うんだから間違いないです。出汁と油もん、炭水化物は合うんです。

出汁と油もん、炭水化物と言えば「悪魔のおにぎり」。

避・炭水化物の時代に「美味し過ぎてついつい食べ過ぎる」と一躍売れ筋商品。白米+天かすというジャンクさも魅力です。

新たな「かっぱえびせん」の売り方は、この界隈にあるのではないでしょうか。つまり、以下のような新たな欲求を充たしに行くべきです。

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これまでは、単品で、おやつの時間に食べるものでした。

これからは、食卓のおかずに入れて、主食の時間に食べるのです。

例えば海老の風味を活かした「ずぼら飯」シリーズを開始するのはどうでしょうか。どん兵衛に入れる、お茶漬けのお供にする、おにぎりに混ぜて新たな悪魔飯とする…など考えられます。

例えば他にも、かっぱえびせんを細かく刻んだ「天かす」ならぬ「かっぱえびかす」として発売するのはどうでしょうか。天かす、揚げ玉業界で、いちやくもっとも知名度があるブランドになるはずです。

「どん兵衛に、かっぱえびせん…ジャンクじゃないですか?」

おっしゃる通り、ジャンクです。でも皆さん普段、うどんや蕎麦に天かすかけて召し上がっていますよね? あれと一緒です。うどん、温玉、ねぎ、かっぱえびせん…絶対美味しいです。

せっかくだから年末・年始の販促として、どん兵衛とコラボしても良いはずです。だって、大晦日に欠かせない蕎麦に正月に欠かせない海老ですよ。最高の組み合わせです。

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「天かす」ならぬ「かっぱえびかす」も、意外と良い線行くのではないかと思っています。実は「かっぱえびせん」自体が油で揚げているのではなく、小麦を煎って作っているそうです(最後に油を吹きかけている)。

ということは、油で揚げるよりヘルシーなはず。食感がほぼ同じなら、揚げるより煎る方が良いのではないかと思うのです。

ちなみに近所のスーパーを探索して見ると、「天かす」市場のブランドトップはオタフクソースの「特製いか天入り天かす天華」でした。市場の2割を獲得しているそうです。

でも、スーパーの棚には商品が2つ並んであるかどうか。プライベートブランドも多く、安かろうと選ばれている印象がありました。ちなみに皆さんはオタフクソースの「特製いか天入り天かす天華」って、どんな商品デザインだったか思い浮かびますか?

…浮かばないですよね。

これはチャンスではないでしょうか。うどん、お好み焼き、たこ焼き、焼きそば、蕎麦と粉もん炭水化物に欠かせない食材でありながら、ほぼノーブランドなのです。

「どれでもいいから、これにしよう」市場なら、知名度を考えれば、選んでもらえる機会は多いはず。(もちろん消費者から選んで頂けるようなプロモーション施策は必須ですが)

重要なことは、お菓子だからおやつだから、というフレームから1度抜け出す、取っ払うということです。結局戻ってくるのはかっぱえびせんではあるんですけど。

というわけで、番組の最後は、どん兵衛にかっぱえびせんを入れて、食べてもらいました。

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もちろん、最後はスタッフの皆さんと美味しくいただきました。

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ごちそうさまでした。


授業のコメントについて

授業中、本当はコメントをもっと拾う予定だったのですが、思いのほか言いたいことをしゃべってしまったので、レスできませんでした。

こちらにて返信しますので、ご確認いただければ幸いです。


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