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映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を観て

昨日、公開初日に『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を観に映画館へ。3 時間26分の長さを感じさせない勢いのある展開に、最後の最後まで楽しめました。

空からのカメラワークも、オセージ族の衣装や調度品の色彩も素晴らしく、映画というエンターテイメントならではの醍醐味を存分に味わうことができました。

同時に、これまで埋もれてしまっていた米国の負の歴史が、原書に忠実に、先住民族の視点に寄り添って描かれていて、マーティン・スコセッシ監督の力量そして気迫がストーリー全体から伝わってきました。監督、御年80歳!

原作では犯人がギリギリまで明かされずに進むのに対し、映画の方は、おそらく尺の長さや見せ方の都合上、原作よりも早い段階で犯人が明かされるため、原作を読んでから映画を観るのが望ましいとは思いますが、あの壮大なスケールは映画館で体感してこそなので、まずは足を運び、あとで原作を読むことで、語られることのなかった史実をより深く理解できると思います。

また、原作との対比という点では、事件の真相を暴くことになるFBI捜査官トム・ホワイトの描かれ方の違いが、個人的には割と衝撃的でした。当初、トム・ホワイトはディカプリオが演じる予定だと報じられており、もしそうなっていたら、全体の演出もずいぶん違うものになっていたと思われますが、配役を変えたおかげで、映画の視点が「白人の物語」ではなく、「オセージ族の物語」になっており、あえて途中で変更したところにスコセッシ監督の采配が光ります。

ディカプリオについては、多くを語れるほど彼の作品を観ておらず、ジョニー・デップ目当てで観た『ギルバート・グレイプ』で、その強烈な存在感に圧倒されたものの、『タイタニック』のありがちなヒーロー像にがっかりしてその後は積極的に追っていませんでしたが、『レヴェナント: 蘇えりし者』の予告を観たときに、ああ、いい役者さんになったなぁ……と母親のような感慨を覚えたのを思い出しました(笑)。

今回久しぶりにじっくり彼の演技を観て、アーネストの弱さや狡猾さ、完全な悪人になりきれない小物感がよく出ていて、やはり彼はヒーロー然とした役ではないほうが、役者としての資質が最大限に発揮されると感じました。

そして、エンドロールが素晴らしいので、これから観る方はぜひ、最後の最後まで観てほしいです。これほど美しいエンドロールを聴いたのは(見たではなく)初めてかもしれません。興味のある方は劇場に足を運んでみてください!
(古森)

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