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2. 女風の世界はお花畑?

切れた私の糸は
風船のように
彷徨いだした。

時を同じくして

YouTubeで
見かけた女性に
興味を持った。

その女性のチャンネルに
登場していた

女風で働く
端正な顔立ちの男性。

無性にそこからは
彼のことが気になって
目が離せなくなった。

なぜなら
いやらしい話を
してはいるけれど、

話していることが
まともなのだ笑

彼は妙に真面目。

説明がわかりやすい。
語り口もとても穏やか。

私の風俗の概念が
ガラリと
塗り替えられた。

彼なら大丈夫かもって
直感的に思った。

風俗って
そんなに拓けてるの?

私が思っていたのとは
違うのかも。

前々から女風に興味は
あったけれども

気楽に利用できる
サービスではない。

不倫のドラマがヒットするのは
いけないことだからだ。

芸能人の不倫が異常までに
叩かれるのは
「私もしたいのに!」
の裏返し、

みんな羨ましくて
しょうがないのだ。

この世には男と女しかいない。

男は女を求め
女は男を求める。

それが刺激的で
禁断的で
あればあるほどほしくなる。

だがそれが叶わないから
著名人の推し活に熱中し、

トキメキの臨場感を味わって
生活を潤わすくらいが関の山だ。

なら
女風ってどんな立ち位置なのだろう?

ホストとも違う。
たぶん不倫とも違う。

例えるなら
世の中には便利屋って商売がある。

誰でもいいから
人手が欲しいとき。

女世帯だから
庭の剪定をしてほしいなど。

そんな人のために
便利屋がある。

そう考えると
女風のニーズってのは
今の閉鎖的な
日本の文化にとっては

痒いところに手が届く
便利屋みたいな
ものかもしれない。

「奥さん
セックス足りてますか?」

「お願いできますか」

いやっ、妄想がすぎる・・・

そう考えると
男性用風俗とは
似て非なるものなのかもしれない。

女性向けだけあって
プロセスを大切にしている
気がする。

今までは性欲を発散したい
女性のニーズを叶える場所が
公にはなかった。

そう考えると
不倫ってリスキーすぎる。

現実問題
リスクをとってまで
不倫したい相手もいない。

ましてやアイドルや俳優のような
かっこいい男性は皆無。

女風には
ジャニーズや韓流スターなどの
イケメンが多数。

おい、これは
夢のお花畑かよ!

さらに
便利屋みたいだと思ってから
ホームページを見ると

あら、不思議
罪悪感が薄れていく。

ただ、
私としては
イケメンであることは
重要ではない。

話し方や話す内容が
職業柄とても気になる。

むしろ一番大事。

魂は言葉に宿る。

大概人柄は声に出る。
声を聞けばどんな
人かは大抵わかる。

人の声を聞くと
その人の思想が掴めてしまう。

長年の経験から
特殊能力を熟達してしまった弊害。

要するに
誰でもいいってわけには
いかない。

顔だけ人間には
一気に萎えてしまう。

多少ブサイクでも
人間的魅力があれば
かっこよく見えてきてしまうのも
また私の特殊能力。

母から
「あなたはいつも
そんな感じの人を好きになるねぇ」

と面食いの母に
歴代の彼の顔を
褒められたことは一度もない。

父は娘の私がいうのもなんだが
禿げる前はイケメンだ。

そんな父を魅力に感じる
女性も多少なりにいたのも頷ける。

イケメン男子には
泣かされるという
思い込みが
入ってしまったのかもしれない。

なので私は男は顔より声だ。

昔のトラウマから
声にウエイトを置き
男を選んできた。

彼の声を聞いた瞬間
衝撃が走った。

何十年かぶりの感覚。

動画を見終わるころには
突き動かされて
気づくとXにDMを送っていた。

今思うと全く、
今もだが
女風のルールなんてものは
何一つ知らない。

普通はこんなことないのかも
しれないけれど

「はじめまして、
◯日空いてますか?」と、

やり取りもせず1通目から
予約のメッセージをした。

今思うと彼も
ビックリしたかもしれない。

一度も
やり取りをしたことのない人からの、
予約メッセージは
どう思ったのだろう。

今でも
最初のアクションが
どれが正しい予約方法かなんて
わからないけれど、

やり取りなんて
どうでもいいくらい

彼には絶対会うような気がしていた。

DMの返信はすぐにきた。
ふんだんに絵文字を使う男性は
私の周りにはいない。

さすが丁寧だと思った。

コースは?
と聞かれて焦る。

考えてもいなかった。
はじめはどれにするのが
正解なのか。

ただ、
私は話を多めにしたいと
思っていた。

当然、施術もだ。

と、なったら
何を選べばいい?

時間は何時からにしよう。

この春娘の進学に合わせて
私と娘との
二人暮らしをはじめたばかり。

昼は仕事だし
時間がとれるのは夕方から。

あまり遅くに帰ると
疑われてしまいそう。

地方で暮らす夫に
娘は間違いなく報告する。

これはスタッフの
家に泊まることにしよう。

そうなるとはじめから
お泊まりコース。

初回からハードル高め。

だが、
動画から彼は信頼できそうだったし、
私の勘は外さない自信がある。

こうなったら
人生で1度きりだろうから
覚悟を決めよう。

初回からお泊まりコースで
予約を入れた。

あっ、
下着どうしよう。

私以上に勘の鋭い娘は
下着を変えると
間違いなく疑われる。

仕事柄ウェアに合わせた
下着しかつけていない。

不本意だが
これは勝負下着なんてものは

封印しよう。

予約メッセージを
始めたあたりから

私のマインドは
都合よく女風は便利屋に
すり替わっていた。

便利屋だから
そんなに緊張することもない。

庭の剪定できます。
剪定してください。

に、対し

セックス売ります。
セックス買います。

その違いに大差はない。

・・・

いやいや、大差は
めっちゃあるけれど

ただ便利屋を呼ぶだけだ。

呼ぶだけだ。女風という便利屋を。

どうせ

一度きりだ。

一度きり、

一度きりの

声がこだましていた。

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