「秒速5センチメートル」

しばらくご無沙汰していました。統一感が皆無に等しくなりそうですが、ひとりごとのようなものなのでお許し下さい。

この作品に初めて出会ったのは、中学二年生のときでした。美術の授業の中で、二話の途中あたりまでを観たのだと思います。アニメや映画に特段思い入れもなかった私ですが、その時ものすごく衝撃を覚えたことを鮮明に覚えています。

小学生の頃から心に通じ合うものを感じて、一緒にいる時間が楽しくて、ずっとこのまま一緒にいられると信じていた二人に訪れた、転校という名の絶望。小学生の彼らには大きすぎる越えられない壁。
そして無情にも別れの時はすぐにやってきて、心残りを抱えながらも、お互いにそれぞれの道を歩んでいきます。
二人が再び会うのは一年後。再会の喜びを感じると共に、彼らはもう会えないことを悟るのでした。
大人になるにつれて、社会に揉まれ、いろんな人と出会い、いつしか純粋さを失った人生に飲み込まれていく。それでも、心のどこかで、昔の記憶を必死に守っている。1%の可能性にかけて、また会えることを祈っている。こんなところにいるはずもないのに、探してしまう。彼らはきっと最後まで、忘れられずにいるのでしょう。

見終わった瞬間の気持ちは、世界にありふれている言葉ではうまく表現できません。心の深いところをぎゅっと掴まれるような、どうしようもなく切ない思いに駆られるのです。後味のすっきりした作品とは言えません。理由もなく苦しい思いで、呆然とすることしかできなくなります。でも、それがこの作品の良さであり、わたしが心を突き動かされた理由でもあります。

幸せに終わることもできたと思います。でも、私たちの理想とするハッピーエンドは、必ずしも彼らにとってのハッピーエンドではなかったのではないでしょうか。理屈で説明できるようなことではなくて、彼らの心が、そうさせなかったと思うのです。

二話に登場する彼女も、あえて自分の気持ちは伝えなかった、いや、伝えられなかったのだと思います。私たちはきっと、「感じる」心を持っているからこそ、説明できない何かに左右されてしまうことだってあるのです。

人生は楽しいことばかりじゃない。絶望することだってたくさんある。失うものもたくさんある。けれど、それで初めて、かけがえのないものの存在に気付くことかできる。そんなメッセージを私は勝手ながら受けとりました。

こんな風に言葉にしてしまえるほど簡単な作品ではないと思っていますが、久しぶりに観終わった後の想いを、どこかにぶつけたくて仕方がなかったのです。いつか、こんな素敵な作品に携われるような人になりたいです。

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