『Renaissance: A Film by Beyonce』(東和ピクチャーズ)。コンサートフィルムの冒頭、自身を支えてきた忠実なファンたちへの想いをラブレターを読みあげるように二曲続けて歌ったあとの記憶が正直言ってぼんやりしている。それは、ビヨンセによるメタリックなメタモルフォーゼの夢の記録であり、生命の再生の祝祭であり、自作自演による世界改変の試みである。とうの昔に神が殺された現代に神になることを決して恐れない彼女が不当にも楽園を追放された持たざる者たちを祝福すると
なにやら話題になっているらしいとの噂を聞きつけてぎりぎり劇場に駆けつけた、佐近圭太郎監督『わたしの見ている世界が全て』(Tokyo New Cinema)。郊外でうどん屋を営んできた一家の兄妹たちが母親の死後、なにやら長年関係に凝りの残ったままの次女の突然の帰宅によって、結婚の仲介やら自立の支援やらを巡って好き放題に振り回されるというという筋立て。とにかく、次女を演じる森田想が素晴らしいとしかいいようがない。まず何より、彼女はある種の正しさにおいて圧倒的な存在感を示している
『キラー・ビー(英題:Swarm)』(Amzon Prime Video)。以前からドナルド・グローヴァーがビヨンセに題材を求めた作品を製作しているらしいとハリウッド界隈で噂になっていたらしく、ついにリリースされたといった次第の本作。全7話からなるリミテッド・シリーズであるこの意欲作は所謂トキシック・ファンダムから這いずり出てきた孤独な黒人女性シリアルキラーの誕生とその顛末を描いている。プロデューサーのインタビューを読むと、これまで白人男性のみに与えられていた破壊衝動(『ブ
ルカ・グァダニーノ『ボーンズ アンド オール』(Warner Bros)。事前情報を考慮すると、グァダニーノの最新作であり現時点で最高傑作である『僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE』(HBO)を超えることはおそらくないだろうと予想していたが、少女が抱える自身のカニバリズムへの逡巡を扱った本作は主題において『僕らのままで』との共通点も多く、形式においてもほぼ同じ手法を踏襲しており、たいへん興味深く観ることができた。アドレッセンスにおける少年少女たちの不安や葛藤を