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ずっと恋をしている

恋をしていた。
そしてずっと恋をしている。

芽吹くことがなくても、それはわたしの中で褪せることなく根付いている。
土の中で根を伸ばし、水分を取り込み、枯れることなくそこにある。

もう15年以上前にわたしのもとにやってきて根を張ったそれについて、うまく形容することは難しい。

近づきすぎれば棘はお互いを傷つけ
距離を置けば過去の美しい情景として切なく輝く。
そんなようなもの。
人生でたった一つ、恋だった。と確信をもって言い表せるもの。

けれどそれは恋であって、わたしが大切な人に思うあいとは別物で。
生活とは切り離した、物語の中の登場人物のような存在で。

それを生活に紐づけることをわたしは望まない。
家族を持ち、別の世界で生きるだれかをこちらに引き込もうとは思わない。
わたしはきっと、あのひと個人を想ってはいないのだ。ただ、内側にうまれたあの日の気持ちを後生大事に宝箱にいれている。
ただそれだけなのだろう。

けれども、それにふれるとき
確かにそこにあった美しい景色を何度でも思い出す。
自分の中にあたたかい火が灯る。

今日もわたしは芽吹くことのない種に水をまく。
誰にとっても意味がなくても、あのときわたしが生きていくにはこの種子が必要だったから。





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