”コロナ後の社会の展望 - 分散型システムへの移行と”生命”の時代 (こころの未来研究センター、広井良典・京都大学教授、オンライン公開授業)

YouTube: https://youtu.be/rpXKp3lx5VE
> コロナ前の社会は”アブノーマル” だったとの切り口。
> 現在生きている社会:都市への人口集中、格差の拡大、際限のないグローバル化、スーパー情報化の幻想
> 大きく分けて4つの論点:①都市集中型から分散型システムへの移行、②格差の是正と持続可能な福祉社会のビジョン、③ポスト・グローバル化の世界構想、④科学の基本コンセプトは”情報”から”生命”へ
①都市集中型から分散型システムへの移行
:これまでの社会は極度の密だった。これはアブノーマルな社会で、コロナを機にノーマルな社会に戻すべき。
:コロナ・パンデミックはニューヨーク・ロンドン・パリ・東京など超過密都市を中心にまず拡大した。
:日立・京大の分岐シミュレーション共同研究。人口・財政/社会保障・地域・環境/資源に注目し日本が持続可能であるための条件。分析結果は地方分散型への移行提言。
:参考としてドイツ・人口約10万人エアランゲンでは中心部から自動車排除・歩いて楽しめる街。ザールブリュッケン(18万人)も同じ。

②格差の是正と持続可能な福祉社会のビジョン
:所得格差(ジニ係数)の大きな国と新型コロナ死者数に関係ある。格差・貧困や医療保険・社会保障制度関連。
:アングロサクソン国家(アメリカ・イギリス)は小さな政府、またイタリヤ・スペインは南ヨーロッパ型福祉国家⇒ 社会保障が不十分

持続可能な福祉社会指標と国際比較

(出典:https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/sciencewindow/20201026_w01/)

③ポスト・グローバル化の世界構想
:パンデミックの歴史。14世紀ペスト、16世紀梅毒、16~17世紀天然痘(アステカ文明滅亡)、19世紀インドからコレラ流行、20世紀スペイン・インフルエンザ
:ポスト・グローバル化⇒ アメリカ(トランプ)のようなナショナリズム、ドイツ・北欧の様な持続可能な福祉国家
:一定のグローバリゼーションと一定のローカライゼーションが必要
:岐阜県の石徹白地区で小型水力発電所で分散電源。”おだやかな革命”ドキュメンタリーあり。
:経済の空間的ユニットの進化 - 農業(ローカル)⇒ 工業化(ナショナル)⇒ 情報化(グローバル)⇒ ポスト情報化(ローカル)

経済システムの進化と生命の時代

(出典:https://www.jacom.or.jp/noukyo/tokusyu/2020/06/200624-44958.php)

④科学の基本コンセプトは”情報”から”生命”へ
:科学の基本コンセプトの進化 - 物質(17世紀・科学革命)⇒エネルギー(19世紀)⇒ 情報(20世紀)⇒ 生命(今後)
:消費の構造は、物質の消費⇒エネルギーの消費⇒情報の消費⇒時間の消費(現在充足性)
:現在は”情報”が成熟期にある。つまり”生命”は”情報”ですべてコントロールできるか?(Ray KurzweilのSingularity)今を見ると答えは”No”である。
:生命関連産業は、健康/医療、環境(自然エネルギー)、生活/福祉、農業、文化(メルケル首相のスピーチ:生命維持に不可欠)

<質疑応答>
:日立と広井教授の研究はどこで観れる?
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/1709hiroi_hitachi/
:分散社会になりすぎるとインフラ設備投資が必要なのでないか?
集中と分散の適切なバランスが必要。多極集中がベスト。
:なぜドイツが多極分散型になった背景は?
歴史的に分権的。政策的にも分権・集約的。地域の多様性がある。イタリアや日本もドイツに近いのでは?
:中国はジニ係数大きいが死者数が少なかった。例外?
中国のみならず日本でもジニ係数は大きい。アジアで死者が少ない生物学的要因も起因するとの見解もある。日本は衛生面が高いので死者が少ない原因かも。
:経済成長の指標でGDPがあるが、地方分散になるとGDPが減るのでは?
集中から分散に移るとGDPがどうなるかは直ちに回答できない。とは言え、経済のみならず、福祉、環境へのインパクトも含めて総合的に考えるべき。

(以上)


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