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すべてのマーケターが持つべき4つの姿勢 「マーケティングはアートとサイエンスだけではない」

こんにちは、鴻上です。

普段は株式会社Icraという会社で主にスタートアップ企業の成長に向けてマーケティングのサポートをしています。

先日Xで「マーケターが持つべき4つの姿勢」についてポストしたんですが、結構反響が多かったので今の自分の考えを整理するためにnoteにまとめてみたいと思います。


マーケティングはアートかサイエンスか?


「マーケティングはアートか?サイエンスか?」「そんなのどっちもでしょ」というやりとりはこれまで多くのマーケターがしたことあるし見たことがあるんじゃないかなと思います。

これについてもう一歩深掘って考えてみると、「あれ?アートとサイエンスだけじゃなくない?」という疑問が出てきたんです。

まず、そもそも「アート」と「サイエンス」ってつまりどういうことか。

これは
・アート:主体(マーケター)としての主観を大切にしようという姿勢
・サイエンス:客体(顧客)を客観的に分析しようという姿勢

と定義できるんじゃないかなと思います。

ここで、だとすると
 アート←→サイエンス
の二項対立ではなくて、
 主体ー主観 | 客体ー客観 | 主体ー客観 | 客体ー主観
の4象限マトリクスになるんじゃない?と気づくわけです。

主体-客体 / 主観-客観 のマトリクス

で、よくよく考えると「客体から主観的に物事を見る姿勢」「主体であるマーケターを客観的に考える姿勢」も、たしかにマーケターとして大事にしてるなと思ったんです。

この4象限マトリクスを
アートの姿勢 :主体ー主観
サイエンスの姿勢 :客体ー客観
憑依の姿勢 :客体ー主観
メタ認知の姿勢 :主体ー客観

と表現してみます。

「憑依」「メタ認知」の姿勢を発見

するとなんだかこれまでマーケターとしていつも大事にしてきた姿勢・スタンスだなと思うわけです。
それぞれについて考えてみます。


1. サイエンス(客体ー客観)の姿勢


これはもう言わなくても当たり前の姿勢かもしれないですね。
むしろこのサイエンスの姿勢が強すぎて他の姿勢を持てていないことが問題、となることが多そうです。

サイエンスの姿勢とは、客体となる顧客を客観的に見る姿勢のことです。

例えばあるプロダクトのマーケティング戦略としてターゲットを考えるとき。

・年齢 ・性別 ・所得 ・学歴 ・家族構成 などのデモグラフィック変数
・使用状況 ・製品に対する知識量 などのビヘイビアル変数
など、誰が見ても同じ認識になる客観的指標を用いて客体をセグメンテーションし、それぞれの変数ごとの売上の推移を見てイシューを特定しようと考えると思います。

これがマーケティングにおいて客体を客観的に分析しようとするサイエンスの姿勢です。

最近の本だと「ブランディングの科学」とか「戦略ごっこ」とかを読むと、ファクトとエビデンスに基づいてマーケティングを考えていこうというサイエンスの姿勢が鍛えられると思います。

この「サイエンスの姿勢」を持っておくことで、
・課題を構造的に捉えられるようになる
・ステークホルダーとの意思疎通が取りやすくなる

などたくさんのメリットがあります。

しかし、サイエンスだけでは「人がなぜものを買ったのか?」の説明は難しいし、「成果を出す企画アイデア」を生み出すのも限界があります。


2. アート(主体ー主観)の姿勢


アートの姿勢とは、主体であるマーケターの主観を大切にする姿勢のことです。

先ほども書きましたが、どれだけ客観的な分析をしても「どんな表現を作ればいいか?」の答えは生まれてきません。(方針は見えますが)

どんな価値を認知してもらい、どんな表現を生み出すか。
最後はマーケターの主観が大事になってきます。

実際にマーケティング戦略を決めていくプロセスの中で、これまでの自分の人生を通してみてきたことや感じてきたことを総動員して、マーケターとしての「意志」が問われる感覚の時があります。

ボタン式の携帯が当たり前の時代にiPhoneを開発するなんて、アート以外の何者でもないと思いませんか?

マーケターはアーティストでもある

この「アートの姿勢」を持っておくことで
・新しい発想が生まれる
・非連続的な成果が生まれる可能性がある

などのメリットがあると思います。


3. 憑依(客体ー主観)の姿勢


憑依の姿勢とは、客体である顧客の主観で考える姿勢のことです。

セグメンテーションにおいて客観的に判断可能な切り口だけでなく、「どんな欲求を持っているのか?」「どんな価値観を持っているのか?」「どんなインサイトを持っているのか?」というサイコグラフィックな切り口を考える時には、まさにこの憑依の姿勢が必要です。

それらの答えはそのまま言葉として表現されるものではないからです。

よく言われる話ですが、マクドナルドに来るお客さんが「もっとヘルシーなモノを食べたい」と言っていたとしても、それは表面的です。
これに対してサイエンスの姿勢で「こういう発言があった」という事実を正として戦略を立ててもうまくいかないわけです。

また、具体的なマーケティング施策を決定する上でも常に「この表現を見て、顧客であればどう感じるか?どう考えるか?」という姿勢で見ることで成功確率をグッと上げられるのではないかと思います。

敬愛する村上春樹さんは、文章を書く極意として「親切心」を挙げていました。
身の回りの成功しているマーケターは、常に顧客に対する「思いやり」を持っているように感じます。

自分視点ではなく、「顧客視点で考える」ことの大事さは西口さんの本が出て以降いろんなところで言われていますが、まだ「客観的な視点」に止まっている人も多いのではないでしょうか?
実際に「顧客に憑依して、顧客の主観になって判断する」ということができている人はどれくらいいるでしょうか?

最近見た動画だと、ハルメクの編集チームはまさに憑依に対する熱量がめちゃくちゃ高いと感じました。

自分が「伝えたい」ことも大事だけど、それが相手にとって興味あるものになっているか?常に視点を切り替えて問う癖をつけたいですね。

この「憑依の姿勢」を持っておくことのメリットは
・判断の指針が明確になる
・施策のヒット率が高くなる

などがあると思います。


4. メタ認知(主体ー客観)の姿勢


メタ認知の姿勢とは、主体であるマーケター自身の思考や行動を客観的に見る姿勢のことです。

この記事で書いてある「マーケターの姿勢」も一つなんですが、マーケティングの成果のほとんどは「マーケターのマインド」によって規定されている、と感じることがあります。

例えば
「今月残り1週間。目標の達成率がまだ30%しかない。」
という状況の時に、
あるマーケターは「これはもう達成は無理だな。」と考える。
別のマーケターは「どのようにすれば残り1週間で達成できるか?」と考える。
この時点でかなり結果が左右されると思いませんか?

前職であるARETECO HOLDINGSでは「思考のクセを再構築する」というValueがあったし、
最近だと北の達人木下社長が「思考アルゴリズム」についての本を出しています。
できるマーケターは「思考のクセ」を重要視しているようです。

ARETECO HOLDINGSのValue

確かに経験を振り返ると、マーケターの能力の差は経験者であれば5倍くらいしかつかないけど、マインドの差は100倍以上になるイメージがあります。

ただこの「思考の癖」を書き換えようと思った時に、一番難しいのが何かというと、自分の思考の癖に「気づく」ことなんですよね。当たり前ですけど気づかないと変えられないわけです。

だから、常に自分の思考・行動をメタ認知して、悪い思考の癖に気づいて、いい思考の癖に書き換えようとする。これがマーケターにとって重要な姿勢の1つです。

メタ認知の姿勢のメリットとしては、
・自身の成長角度を上げられる
・思考・行動を目的に最適化できる

などの点があると思います。


結論:4つの姿勢を往復してバランスを取ろう


全部大切

ということで、マーケターが持つべき4つの姿勢について書いてみました。

「自分はサイエンスの姿勢に偏りすぎていたかもな。」
「自分はアート的な傾向が強すぎたかも。」
「憑依の姿勢になりきれていなかったかも。」
「メタ認知で思考の癖を書き換える、は考えたことがなかった。」
など、読んでくださった方それぞれに気づきがあったなら嬉しいです。

これらの4つの姿勢はすべて重要なので、1つのマーケティング目標に向かう時にすべての視点・姿勢を往復しながら考えまくるのが大切かなと思います。

現在自社で行っているマーケティングOSブートキャンプでは、今回提示した中の「憑依の姿勢」を土台として身につけながら、成果を出すマーケティング戦略の作り方を学べる内容になっています。
今回の記事を読んで興味を持ってくださった方はぜひご連絡ください。

ぜひお気軽にお問合せください!

おまけ:4つの姿勢について考える上で参考になった本


・サイエンスの姿勢:本 「ブランディングの科学」

・サイエンスの姿勢:本 「戦略ごっこ」

・アートの姿勢:本 「直感と論理をつなぐ思考法」

・アートの姿勢:本 「クリエイティブマインドセット」

・憑依の姿勢:本 「生物から見た世界」

・憑依の姿勢:本 「マーケティングの技法ーパーセプションフローモデル全解説」

・メタ認知の姿勢:本 「アファメーション」

・メタ認知の姿勢:本 「時間最短化、成果最大化の法則」


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