株主資本主義を改めよ

現今の資本主義は「株主資本主義」ともいうべきで、すべてにおいて株主ファーストの姿勢が貫かれてきた。これによって、企業収益が上がっても、配当にばかりまわって賃金にまわらない状態となっているのが、いまの日本の現状である。株主は短期目線で利益を出し配当を高めることばかりを求め、長期的目線、社会への目線がない場合が多い。特にハゲタカファンドはその傾向が強い。

わたしは日本経済の回復のためには積極財政が必要だと考えているが、仮に積極財政を行ったとしても、そのうまみが株主に流れていくようであれば、永遠に国民は豊かになれない。

アベノミクスにおいて「史上最大の企業収益」ということが喧伝されたが、それでも個人消費は増えなかった。個人消費を押し下げたものの一つに消費税がある。消費税もぜひ廃止されるべきだ。消費税を下げると社会保障が不安定になるということが必ず言われるが、実は消費税は法人税を下げるために導入されたものであり、法人税から消費税に税収が移行していることもまた、株主資本主義を助長したのである。法人税は利益にかかる税金なので、極論従業員にボーナスとして配ってしまえば合法的に節税が出来る税金である。これを増税することは従業員への給料増につながる可能性がある。

話を戻して、「企業収益が上がってもそれが従業員の給料増に結び付かない」ということ、これが「トリクルダウンが否定された」ということなのである。すなわち企業優遇の政策を取ってもそれは真の意味での国民が豊かになる政策には結びつかないということである。このことをよくよく自覚しなければならない。積極財政はすべきだが、それだけではダメで、上記のトリクルダウンが機能しない構造を少しでも改善するような株主資本主義の見直しは必須なのだ。

日本はこの四半世紀(1997年比)で企業の売上高は微増しかしていないが、経常利益は三倍に増え、配当金は六倍に増えた。代わりに減ったのが人件費と設備投資だ。いまの日本は四半世紀前よりも人件費が少なくなってしまっているのである。

なぜこのような構造になってしまったのか。これは小泉カイカクなどを代表として株主優遇政策を取ってきたからである。これによって将来投資は軽んじられ、短期収益ばかりが重視され、日本は衰退への道を転がり落ちていったのである。

日本はアメリカの真似をして、グローバル化と称してアメリカの顔ばかりを見てきた。日本人がグローバルスタンダードだと思っているものは実はアメリカンスタンダードでしかなかったりする。このような衰退への道はアメリカの真似事ばかりをしてきた経済政策に起因している。例えば企業決算を四半期でやっているのは所謂先進国では日本とアメリカのみである。短期主義の弊害があるということでヨーロッパはやめたということである。株主資本主義をグローバルスタンダードだと思っているのは日本だけなのである。

広く歴史を見ると、株式会社は民間から投資を受けるという目的で発達してきたわけだが、いつの間にか投資によって収益を得る手段と化しており、カネ持ちが自らのカネを増幅するための装置と化している。短期株の売り買いではなく株の長期保有者を優遇する等、何らかの社会的措置は必要であるし、短期収益を求めるような会社法の問題はぜひ政策的に改善されるべきであろう。

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