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【元気をくれる小説】『有頂天家族』森見登美彦/著(幻冬舎)

世間にうんざりしたら読みたい本。
楽しいことをしたらいい。
何なら、何だって楽しくなる。
何でも気楽に考えられる小説。

おもしろきことは良きことなり!

おすすめ度・読者対象・要点

おすすめ度:★★★★★
読みやすさ:★★★★★
・メインは大学生以上〜
・読み手は選ばず 中学生〜読める

我らがよく知る京都は、なんと、狸と天狗と人間の三つ巴で回っている。
そのうちの狸は、天狗に教えを乞い、人間に化け、人間の暮らしを真似て生活している。
彼らにとって怖いものはほとんどないーー金曜倶楽部と、彼らが囲む狸鍋以外は。

お気楽破天荒な化け狸・矢三郎を含む4兄弟と、偉大な母、その家族が織りなす、少し摩訶不思議で楽しい一年間。

狸の頭領をかけた偽右衛門選挙を目前にした長兄の日々は目まぐるしい。
そんな中、彼らは父の死の真相を知ることになる。

好きなポイントと注意点

とにかく何でも楽しい。
京都を彩る四季も、
しょうがない師匠も、
憧れの美女も、
兄の七転八倒も、
わけのわからん従兄弟たちも、
ひっくるめてみんな楽しい。

トラブルだって、鬱陶しいけど面白がれる。
そんな矢三郎と狸たちに、憧れさえ抱いてしまう。

読んだあとは、どうしようもないことでさえも、ちょっと面白がれるかもしれない。
些細なことも、心を躍らせるかもしれない。
そんな可能性を秘めている。

注意点は、ひたすら主人公が喋り続けているという点。
心理描写 風景描写 そういうのはあまり求めてはいけない。
あくまでセリフを楽しもう!と思えると、本当に楽しめると思う。

それから、京都の地理感はあるとラクに読める。
私が初めて読んだ時は、京都はほとんど知らない土地だったのだが、難なく読めた。
知ってから読むと尚楽しい。
土地勘がなければアニメを見てみる、京都のガイドを見てみる、のもお勧めだ。

ここまできていうのもあれだが、あくまでファンタジーである。
現実にかなり近づけた作品なので、そこまで異色ではないが、苦手な人はそのぐらいの気持ちで読むといい。
ファンタジーにチャレンジしてみたい人にはおすすめだ。


余談

「森見登美彦と作品が読んでみたいの」

と言われたら真っ先に、これと、『ペンギンハイウェイ』と、『恋文の技術』を列挙する。

なんならあまりに好きすぎて、本人の公演に行ったことがあるレベルである。
色眼鏡がかかっているかもしれないことは、ご承知頂きたい。

とにかく、森見登美彦作品で、面白く明るく読みやすい作品の一つ。
仕事や生活が嫌になると、とりあえず読むか!という気にさえなるお気に入り。

暮らしで暗い気持ちになったら、ぜひ手に取って欲しい。

本作は三部作うち二作が刊行され、両方アニメ化もしている。
今回はその一作目をピックアップした。
引き続き二作目も取り上げていくので、心して待て!しばし。