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問い合わせがくる多言語サイトの作り方

多言語サイト制作の問い合わせが格段に増えた。「英語サイトを戦力化したい」「中国語サイトを新設したい」という要望で、コロナ前よりも需要が格段に伸びている。コロナというウィルスは、世界をより狭くしたのかもしれない。
世界をデジタルの力で、シームレスにつなぎたい我々コスパ・テクノロジーズとして多言語サイトの取り組みにもより力を入れたく、ここで「問い合わせがくる多言語サイトの作り方」をまとめてみよう。

1.多言語サイトとは何か
2.多言語サイトでの正しいコミュニケーション
3.多言語サイトの設計
4.多言語サイトの内容(コンテンツ)
5.多言語サイトの表現(デザイン)

1.多言語サイトとは何か
多言語サイトとは、日本語以外のひとつ、もしくは複数の言語に対応しているWebサイトのことで、日本企業の場合は日本語、英語、中国語で閲覧できるホームページを指すことが多い。
日本の生活水準、購買力が下げ止まらない現状において英語圏、中国語圏に活路を見出すのはビジネスを営む上で必然のことだ。そのため多くの企業では日本語サイトと共に多言語サイトを用意している。ただ、正直「とりあえず」で作ったレベルのものが大半だ。とりあえずのレベルとは、日本語版のミラーサイト。構成も訴求要素もビジュアルも同じ。テキストも単なる機械的な翻訳。この「とりあえず作ろう」精神、「ないとカッコつかない」程度の動機で作ったサイトは当然大した働きをしない。
そのため閑古鳥が鳴きまくり、「まだ時期尚早」「大して需要がない」という間違った結論を導き、担当者は「今やる必要は無いな」と安心する。そして日本企業が安心している間に正しくコミュニケーションする新興国企業に市場が席巻され、日本企業の国際的地位が低下、今ココ、という状態だ。

2.多言語サイトでの正しいコミュニケーション
では多言語サイトでの正しいコミュニケーションとは何なのか。それは
・相手の興味のあることを
・相手に理解される表現で
・双方向コミュニケーションしやすい形を考えながら
・自身の意見を主張して
・そして問いかける(相手のコミュニケーションを促す)
という至極当たり前のことなのだ。そしてその前提には「この人とは話ができそうだ」という信頼が必要だということも当然。多言語サイトに限った話でもない。
よって今の日本企業に多いミラーサイト的多言語サイトはネイティブには以下のように思われている可能性が高い。
-不自然な表現でスムーズに理解できない。私のことを考えていない。
-私の興味のあることにピンポイントで応えてない。応える準備がない。
-会話できるのか。ビジネスパートナーとしてコミュニケーション面で相当不安になる。
-問い合わせなどのコミュニケーションを欲しているとは全く思えない。

ミラーサイト的な多言語サイトはネガティブキャンペーンになっている可能性すらある。「とりあえず」感満載で、相手に向き合う姿勢が全くないのだと思われても仕方がない。それは誤解というならば、多言語サイトを「取りあえずサイト」から脱却させなければならない。では脱却させるためにはどうしたら良いか。

3.多言語サイトの設計
日本語と英語では文法構造が全く違う様に、日本と海外、例えば英語圏では思考法が異なっている。当然サイトの作り方も違う。英語サイトと日本語サイトの構造を比較すると以下の通り。

◆英語サイトの構造
・最初に自分が何者か、オリジナルの表現でカミングアウトする
・次に何が目的で会社が、そしてこのサイトがあり、なぜコミュニケーションしたいのかを伝える
・全てにおいて結論や主張を先に述べ、それを証明する形で言いたいことを伝える
↓↑
◆日本語サイトの構造
・製品や商品、実績などのスペックを前面に掲げて訴求する
・主張はソフトに謙虚に。「皆様のおかげです」調で展開される。
・結論、主張がさりげない。控えめ。ページ下位や第二階層以降にあるケースも。

上記の通り英語サイトは「我々」で始まるコンテンツありきのため、最も力を入れるのが「ミッション」の部分。そこには日本語サイトとは異なる強さがある。この会社は何のためにある会社なのか、どう世界を変えていきたいかが先にあり、その下にサイトのコンセプトやコンテンツを配して、デザインを整えていく。つまり英語圏のホームページにおいては、ミッションがまずこないと違和感や何かが足りない感がある。
日本企業はとかく製品や実績ありき、スペックで価値を語りたがる傾向にある。主張も「これも皆様のお陰です」的なご挨拶レベルの謙虚さ、真摯さを表明する程度のものが多く、英語圏の人から見たら「だから何だ」「何を考えているかよくわからない」という印象を受ける。問い合わせして欲しいのになかなかそう言わないというのも英語圏から見ると意味が分からない。何を考えているのか分からず問い合わせできない。つまり構成から設計し直さないと多言語サイトを作る意味がないのだ。

4.多言語サイトの内容(コンテンツ)を整える
多言語サイトはミッションありきというのは前述の通り。次は内容、コンテンツだ。以下は日本語サイト内で自社を語る際によく使われる表現例。

・あらゆるニーズに応えます
・高品質を追求
・トータルなソリューションを提供します
・豊かな暮らしを実現
・持続可能な未来を創造

見慣れ過ぎて我々日本人はスルーするレベルの表現だが、英語圏からすると奇異以外の何物でもない。「あらゆるニーズに応える」のなんて奴隷のようだし、「高品質を追求」するは企業なんだから当たり前、「トータルなソリューション」「豊かな暮らし」「持続可能な未来」ってどのレベルがゴールなのか不明、お題が大きすぎて本気で追求するなんて1企業には無理、「テキトーなこと言いやがって」である。
とはいえ耳障りがよい表現だし超抽象的なので反論もし辛い。でも「テキトーなこと」なので誰も真剣に捉えずファンもできない。
では英語圏のサイトのミッションの内容を見てみよう。

Google:
To organize the world’s information and make it universally accessible and useful.
世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすること

Tesla:
To accelerate the world’s transition to sustainable energy.
世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速させること

Starbucks:
To inspire and nurture the human spirit
– one person, one cup and one neighborhood at a time
1人のお客様、1杯のコーヒー、1つのコミュニティごとに人々の心を育むこと

初めてGoogleのミッションに触れた時「超具体的だな」と思ったことを覚えている。テスラやスターバックスも同じ。具体的でメッセージ性が強いので彼らが目指す世界に是か非か、立場が分かれると思う。共感する人も多いし、半面「私とは異なる価値観を持つ企業だ」と思う人もいるはず。本気で世界を変えようと思ったら志を共にする強い味方が必要で、これらのメッセージは味方を見つけるためのものなのだ。

高品質低価格の時代は終わり、今や生き方を提示し賛同を得るという時代。多言語サイトを作ろうという企業は、反論を恐れることなくミッションをより具体化し強く語ることを一意に考えるべきだろう。

5.表現を整える

構成と内容が決まったら最後にその表現を考える。近年の機械翻訳ツールの精度向上は目覚ましく、実際にビジネス上の強力なツールとなっている。
ただ、ホームページ内のテキストに使用するのは止めた方が良い。自動翻訳したものを日本語に訳すと駄目ぶりがよくわかる。以下、最近最も精度が高いと言われるChatCPTで英訳した文章を日本語訳に戻したもの。

原文(日本語)
山田さんの、10代のようなハツラツさ

英訳(ChatGPT)
The lively and energetic spirit reminiscent of Yamada’s younger days.

日本語訳(ChatGPT)
山田さんの若い頃のようなハツラツでエネルギッシュなスピリット

「ハツラツさ」という状態を表す言葉が「スピリット」という名詞に変わってしまった。もちろんChatGPTも細かなニュアンスのブレに多少は目をつぶれるものーコラムを読んだり友人とチャットする場合は問題無いので充分使えるが、このように意味が変わってしまうとなると精緻に伝える必要があるものであるビジネス、それもホームページ上に載せる文章には使えない。

「海水浴」という言葉ひとつとっても日本人の海水浴とアメリカ人の海水浴では位置づけが異なる。日本では夏休み恒例の行楽だが、アメリカの特に内陸部の人にとっては一世一代のイベントだ。「夏の海水浴のついでにお立ち寄りください」という誘い文句はアメリカだとありえない。習慣や文化背景を念頭に置きながら言葉と文脈を選びなおす作業を「ローカライズ」と読んでいるが、残念ながらこのローカライズはAIにはできず、人間にしかできない仕事の筆頭。多言語サイトを戦力化する上で、ローカライズは必須なプロセスのひとつだと断言する。

問い合わせがくる多言語サイトの作り方として、2記事にわたり上記5点で説明した。こういってはなんだが、現存するWEBサイトで日本語のものなんて75億分の1億でしかない。こんな狭い日本であーだこーだ言っていること自体ナンセンスだと思う。多言語サイトももちろん請け負うが、我々コスパ・テクノロジーズは日本語サイトの提案であってもこれら多言語サイトの作り方に則り「グローバルサイト」として提案している。グローバルサイトとは、世界展開を視野に入れ設計と内容に関して世界基準に則って作る日本語サイト。こちらも興味がある人は問い合わせてほしい。

コスパ・テクノロジーズCEO / BtoB企業のブランディングと海外向け施策が得意なWeb制作会社 / SNS総フォロワー5万 / HP→ https://cospa-tech.com/